↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
57/814

第五十六話 マッチポンプ

朝はこれだけです

「あ……」


 僕は眩暈がして空を見上げる。

 蒼天に流れる白い雲が僕達の生きるこの世界を美しく彩っているのが実感出来た。

 そして現実問題に向き合う覚悟を決め、僕はララにミリアとシシルを見つめる。

 僕を見つめ返す三人。

 ララにミリアとシシルのこの三人はまだ良い。

 何故ならこの街でシスター達から切り離す事が目的だったので、違約金自体を少なく設定してるから。

 え?

 身内びいき?

 なんの事です?

 今はまだ僕達はただの知り合い同士にしか過ぎませんよ?

 赤子の僕を拾ってくれた彼女達だが、今はまだその事を知られていないし。(言い訳)

 だからまだ身内じゃないのさ。(凄い言い訳)


 とはいえ、他の冒険者達は違う。

 通常の依頼としてでククル商会からこの仕事を受けた人達だ。

 だからあの三人と違い違約金は通常設定だ。

 ゆえに商会はその違約金を受け取る立場なのでさほど損害は受けない。

 しかし任務に失敗した彼らの立場になれば。

 報酬もなく正当な違約金だけを払う結果になってしまったのだ。


 しかもその任務失敗の原因は僕達(・・)の過去の仕込み?にある。

 なんたるマッチポンプ。

 傍で見たら僕達は詐欺師同然の悪党だよなあ~~。(視線を逸らす)

 どうすればいんだよ……此の後処理は……。

 僕は溜息を付きつつ残りの雑穀粥を啜る。



 

 カン、カン、カン。


 そんな時だった。

 それを(・・・)見たのは。

 大きさは掌に収まるぐらい。

 白く球体で見た目があれ(・・)に似ていた。

 そう『ピンポン玉』に。

 もう一度言う。

 卓球に使うピンポン玉に似ていたのだ。

 最初に地面の硬い石に当たった跳ね具合。

 その後失速した跳ね具合。

 あまりにも似ていた。

 それがララの懐から落ちてバウンドしたのだ。


「此れは?」

「あちゃあ~」


 僕の言葉に顔を歪ませるララ。


「それはロックリザートの卵なの」

「卵?」


 僕の質問に答えたのはミリアだった。


「なんだ旦那~~見た事無いのか? と言ってもそいつは無精卵だがな」

「無精卵?」

「ああ、無精卵は何らかの原因で中身の無い殻だけの卵になるんだよ」

「そうそう」

「跳ねるだけで食えないしなあ」

「何の足しにもならないぜ」

「冒険者ギルドでも買取を拒否してるぜ」

 

 冒険者達の説明を聞きながら僕はその卵を拾い投げる。


 カン、カン、カン。


「……」

「何だ旦那。気に入ったのか?」


 シシルが僕に話しかける。


 

「なあシシル。ロックリザードの無精卵を今から取りに行ったとして、どれぐらいの数が揃う?」

「まあ其れなりの数だな~~なんだ? どうした?」


 シシルが何か言ってたが僕の耳には既に聞こえてなかった。

 あれほど試行錯誤して研究していた卓球の球が、まんま目の前に出現したからだ。

 

「貴方達。今は暇なんだよな?」 


 僕の言葉に目を丸くするララにミリアとシシルとその他の冒険者達。


「あ~俺達はな~~今英気を養ってる最中なんだ」

「そうそう」

「そ~~だな」

「うん」

「あ~~飯が旨い」

「酒がうめ~」

「うい~~~~」

「ああ焼肉が旨いねえええええ~」

「いやいや、この雑穀粥が旨いって!」

「ふ~~ふ~~ふ~~」

「お茶が旨いな」


 などと口々に誤魔化した返事をする。


「つまり暫くは暇なんですね?」

「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」


 その場に居た全員が僕の言葉に露骨に目を逸らす。

 冷汗を流しながら。

 まあ分かります。

 大の大人が昼間から飲んでるからね。

 典型的な駄目人間だ。

 

 ジト――……。


 ダラダラダラ。


 そんな視線を向けてたら皆の汗の量が増えだした。

 まあいいや。


「仕事です」

「仕事?」


 僕の言葉を聞き返すシシル。


「この無精卵をなるべく沢山確保してくれ」

「それは良いが……旦那」


 僕の言葉に眉を顰める冒険者の一人。


「詳しい条件は僕が商会の経理と詰めるか。そうだなあ~~二時間後にこの依頼を冒険者ギルドに依頼する」

 

 首を捻っていた全員の視線が僕に一斉に集まる。


「つまりこれは仕事なの?」

「そうだね」


 ミリアの言葉に答える僕。


「具体的な話は~~取り敢えず今回は数量限定の依頼だ。あんたら今回は赤字だったんだろ」

「つまり……その卵を拾ってくればそれなりの値段を付けてくれるって言う話か?」


 シシルが僕に質問をしてくる。


「君たちの赤字の帳尻が合うかの保障までは出来ないから不満なら断っても良い」

「う~~ん」


 ララは考え込む。


「どうせここで暇を潰してると言うことは他に仕事が無いんだろう?」


 ちょっと言い方が悪かったかなと思ったが球は消耗品だ。

 下手に仕入れとして高い条件を付ければ、価格に影響して肝心の球が売れなくなる可能性がある。

 なのでこのような言い方になりました。


「「「「「「「「「「「「「やるっ!」」」」」」」」」」」」


 断るかな~~と、思ったがよっぽどお金が無かったらしい。

 全員この依頼を受けることになった。

 

 余談です。


 

 依頼した数量を超える無精卵が冒険者の手で集められました。

 その結果ですが依頼書を掲示板に出して僅か数分で依頼は完了する事になりました。


 持ち込んだ冒険者は支払われた報酬を受け取り大変に喜んだみたいです。

 なお……その報酬は一人小銀貨五枚だったらしい……。


 僕が言うのも何だが子供の小遣いレベルなんだが……。(困惑)


 どんだけ金が無かったのだろうか……。


 

評価をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。