第五十一話。 対価
一話目です
「本当は貴方達には恨み骨髄なんですがね」
僕は溜息を付きつつ再び天井を見る。
あ~本当に綺麗な木目だな。
「それにしては、よくあんな甘い条件で我々を許すものだな……」
そのまま視線をゆっくりと豚王子に元に戻す。
その過程で、机の上に僕が食べかけの菓子が目に入る。
ゆっくりと後で食べよう。
「ふえ?」
僕は足元に転がしている豚王子の解釈に目を丸くする。
「別にあっさり許した訳では無いですよ。楽に殺すより長く苦しめる方を選んだだけですから?」
『「は?」』
僕の言葉の真意が分からず、同時に戸惑う二人。
ここら辺の反応は親子同時な当たり似てますね。
『それはどういう意味かね?』
「僕が指定した料理は野菜や魚介類が少なく、油脂成分の多い高カロリーで塩分の多い食事なんですよ」
『それが?』
戸惑う声が聞こえる。
「何も考えず食べ続ければ間違いなく、肥満になり高血圧やら何やらで倒れますね。多分死にます」
『「まてええええええええええええええええええええええっ!」』
僕の回答に親子二人口を揃えて突っ込む。
「どうしました?」
『という事は何か? 君は我が妻と息子を時間を掛け、じわりと殺す気だと?』
何をそんな当たり前の事を今更。
僕はそう思いながら肩を竦める。
「大丈夫です。死にたくなければ運動すれば良いだけです」
『我が王妃もそれぐらいなら……』
「俺様もそれぐらいなら……」
僕の言葉に安堵し納得する二人。
「一応話しておきますが、もし幽閉中に吐き気、若しくは慢性的な頭痛があったら……」
「あ~~俺様すでに今そうなってるんだが……」
僕の説明に答える豚王子。
「ご愁傷様です。幽閉前からすでに高血圧ですね~~。死にたくないないなら、一日六グラムしか塩分は取れません。頑張ってみてください」
「行き成りかああああああああああああああああっ!!」
『……』
悲鳴を上げる豚王子。
父親の方は沈黙してる。
何でだろう?
「後は臍の横の腹の中が、激痛で苦しむ時があったら注意してください」
「俺様、もうすでに時々その地獄の苦しみを味わっているんだが……」
「それは油脂類の取りすぎによる腎臓結石ですね。幽閉先でもその痛みと付き合って頑張って生きて下さい」
腎臓結石の詳しい詳細は覚えてないけど、油分を多めに取る事だけは確かなんですよね。
前世での一人暮らしの時、お惣菜には決まって揚げ物を買った結果、腎臓結石になったんだよね。
『「まてえええええええええええっ!」』
「はい?」
僕は首を捻る。
『まさか腎臓結石をすでに患った息子に、更に君が指定した食事を取れと言うのか。君は』
「そうだっ!」
「当然ですが何か?」
僕はさも当然とばかりに言う。
『「鬼かああああああああっ!」』
「当たり前でしょう。罰なんだから」
『「……」』
僕の言葉に沈黙する二人。
「安心してください。腎臓結石は初期ならカルシウムを多めに取れば良いだけですから」
「具体的には何を食べれば良いのだ!」
「チーズなんかの乳製品ですね」
実は他にも有るがそれは教えない。
此れは罰ですから。
因みに高血圧と腎臓結石は【快癒】では治せません。
一応腎臓結石は外科手術で取り出せるけど、この世界の外科手術の技術は低い。
具体的には麻酔無しで開腹して石を取り出しているレベルです。
僧侶の治癒魔術は使えない。
あれは傷口をあるていど消毒し痛みを麻痺させ傷の再生を促進させる物。
【快癒】だけは別ものだけど。
手術で必要なのは患者の痛覚を麻痺させるスキル。
僕の駄目神から貰った特典を使えば魔改造できるが他の者では使えないだろう。
まあ……麻薬は有るので麻酔の代わりになるが……。
この世界の住人にその発想が無い。
この世界では貴族間で麻薬パーティーがあるので、もしかしたら将来誰かが気付くかも知れんが。
此方はいい。
問題はだ。
細菌という概念が無いので、消毒せずの外科手術が主流で、高確率で患者は死亡しています。
僕が教えてあげてもいいが、流石に誰も目に見えないので分からないでしょう。こんな細菌の知識。
だからそんな知識持っている事自体を、不信に思われたら嫌なので誰にも教えていません。
流石にサキ姉さんも、細菌学なんて知らないしね。
僕が知ってたらおかしいと思われるだけだし。
細菌の概念は、いつかこの世界の住人に伝えようとは試行錯誤中。
まあ、この世界の学者や医者でも発見さえ出来れば分かる事だろう。
何ならレンズはすでにあるんだし、後は顕微鏡を僕が作れば良いだけだろう。
それで目視で細菌が発見出来れば、いかにそれが危険か分かるだろう。
望遠鏡もついでに作るか。
新しい商売のネタが出来た。
『以前聞いた事が有る』
「言いましたね」
あったな~~。
なんかの雑談で。
『確かそれは君に高カロリー食品だと聞いたが?』
「そうですよ~~♪ 頑張って運動しないと別の病気にもなりますね」
僕はケタケタと笑いながら答えた。
『「……」』
あ――二人共引いてる。
「それに未遂に終ったとはいえ。王子は昔僕のクリスを押し倒したんです」
『なに?』
アガス王にはこの息子の痴態は初耳みたいだ。
あんた為政者なのにマジですか……。
まあいいけど。
どうせこの豚王子にはその罪は償ってもらうつもりだし。
「でね~~その償いも重ねてしてもらわないと」
『この馬鹿息子があああああああああっ!』
絶叫が凄い。
通信機越しなのに僕の耳が痛い。
「むっ……昔の事だっ! 親父! もう時効だあああああっ!」
『時効は二十年経たねば成立せん! 貴様、王族の癖にそんな事も知らんのかああああっ!』
豚王子の言い訳を一刀両断。
ご愁傷様です。
「そんなああああああああっ!」
『その腐りきった性根を王妃共々儂が叩き直してくれるっ!』
「ぎゃあああああああああああっ!」
「頑張れ~♪」
僕は面白がって声援で豚王子を応援する。
「鬼か貴様ああああああっ!」
「いやあ~♪」
照れる僕。
「ほめてねえええええええっ!」
「分かってます~♪」
「最悪だああああああああっ!」
「あははは~♪」
僕のいい笑顔に絶叫する豚王子だった。
この程度で許して上げるんだ。逆に感謝して欲しいですね。
PS なお後日談だが王妃と豚王子は死にたくなるような地獄の運動を幽閉先で毎日やる羽目になったとさ。
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