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第三十一話 新しい商売のネタ。 

二話目

 女子社員寮に入ろうとしていたミリアやシシルとセリスを僕は止めた。

 女子社員寮から非番で休んでいる人達の視線が僕達に突き刺さる。


「君らは此方」

「「「……」」」


 僕が指で示した方向を彼女達は見る。

 その庭には小さな建物がある。

 それは新築同然で未だに新木の香りが漂う小屋だった。

 最高級の建材を贅沢に使ったドア。

 ……ではなく廃材を利用して作りました。

 壁は有名なドワーフ職人の作った煉瓦。

 ……ではなくその弟子が練習用に製作した物です。

 硝子窓は帝都で活躍されてる新鋭の職人さんが製作された物。

 ……ではなく廃棄前の失敗品を応相談で貰ってきたものです。

 

 まさしく至高の建物というべきだろう。


 嘘です。


 すみません。

 唯の物置小屋でした。

 というか隙間風こそ入らないけど外観が質素なただの小屋です。

 

 思わず僕は視線を逸らし地面を見ました。

 あ~砂利がいっぱいあるな。


「え~~物置小屋なんだ」

「こらセリスっ!」

「そうだよ~~無料で泊めてくれると言ってるんだし」

「ふふ~~構いませんよ」

 

 セリスの不満にシシルとミリアは叱る。

 僕は顔を上げた僕は、クリスに服のすそを引っ張られる。


「おい、カイル」

「なに、クリス?」


 クリスの言葉に僕は振り向く。


「幾らなんでもあれは無のではないがな?」

「仕方ないですよ~~宿泊施設は前金という保証金の問題がありますし……」


 はあ~~。

 溜息を付く僕。


「社員寮では駄目なのかがな?」

「身元の分からない冒険者を社員寮に泊めろと?」

「悪かったがな……」


 僕とクリスは小声で三人に聞こえないように話す。


「どうしたの?」

「いえ」


 セリスが声を掛けてきたので返事をする僕。

 さて気を取り直してと……。


「まあ、貴方達には新しい商売のテスターになってもらいます」

「「「はあ?」」」


 僕の言葉に唖然とするミリアやシシルとセリス。

 意味が分からないという顔をする。

 

「まあ説明するとですね、本来ならこの物置は精々泊まれて三人位の広さです」

「それは見れば分かるけど……」


 僕の言葉に頷くセリス。


「そこでベットを増やし十人位まで泊まれるようにしようと考えてます」

「「「「はあっ?」」」」


 僕の言葉にセリスやミリアとシシル、クリスが唖然とした。


「いやいや、狭すぎるがな」

「そうそう」

「頭が悪いの君?」

「うえ~~」


 あんたら……。

 失敬な。

 クリスにセリスやミリアとシシルが文句を言う。


「まあ狭いのは十分承知で分かっています」

「じゃあ何で?」


 僕の言葉に頭を掻きながら質問するシシル。


「今の時期ですが、帝都で宿を取りそこねた人達が多いのは気がついていますよね」

「「「「うん」」」」


 僕の言葉に頷く。


「そこで此れです。此れなら泊まれる人数を増やしても維持費を抑えられます」

「でも狭いがな」


 僕の言葉に反論するクリス。

 まあそういう事は分かってました。


「狭い分、宿泊費を三分の一に設定すれば良いんですよ」

「へえ」


 シシルは感心した声を上げる。


「でも嵩張る荷物なんかどうすれば良いの?」

「それは受付時に貴重品以外を預かってもらえば良いのですよ」


 セリスの質問に答える僕。


「御飯は?」

「希望者には事前に宿の主人に言えば作ってもらえます。まあ、今回は娯楽施設に食事所があるから良いでしょう」


 ミリアの質問に答える僕。


「でも別料金でしょう」

「今回は特別に……」


 シシルの言葉に僕は人差し指を立て自分の口に当てる。


「無料っ!」

「いえ特別に二割引です」

「「「ええええっ!」」」


 いや。

 あんたら宿泊費無料なんだからこれくらい良いだろう。


「なるほどがな……」

 

 クリスは感心したように頷いていた。


「寝泊りする所を詰めて維持費をそのまま収入を増やすという訳か」

「そうです。宿泊者は安い値段で泊まれる上に、宿も利益が上がるという訳です」


 クリスの言葉を頷いて肯定する僕。


「なるほどがな」

「またこの方法は宣伝しなくても自然に広まり、商売敵も採用するので恨まれずに済みます」


 言わば前の世界で言うカプセルホテルだ。

 手間は少なく収入は増える。

 しかも方法はいたって簡単だ。

 宿屋にも宿泊客にもお得な話だ。

 

「凄い」

「おお~~」

「頭良いね」


 シシルやミリアにセリスは口々に僕を褒めてくれる。


「だがな。食事はどうする?」

「う~~ん」


 確かに宿泊者が増えれば食事の確保と用意も大変だ。


「こんな宿泊施設を作れば利用者は増えるが、使える食材は限られてくるぞ」

「確かに」


 クリスの言葉に僕は頭を捻る。

 そうだ。

 

「簡単です」

「ほうがな」

「此処に来る前に寄ったココロ村のような過疎化した村があるじゃないですか」

「うんがな」

「あそこは住人の頭数の割りには充分な食糧があったでしょう?」


 それは山賊若しくは村に害を及ぼす者に襲われた時の事を想定した時の事前策だ。

 平時でも食糧を奪われたり燃やされたりもする。

 そのリスクを分散する為に隠されている食料が村には常にある。

 その非常用の食材の事を僕は言ってるのだ。

 ココロ村ではそれは結構な量でした。

 それを後で再び分散し保管。

 若しくは保存してもらいました。


「法王国に拉致されて帰ってきていない人も居るから余るな。保存の利く物も多いらしいが」

「それを提供してもらうんです。無論ですが現金は払うので」

「だがそれだと村人の分の食糧が減るがな」

「それでもかまいません」

「カイル……村人を非常時に飢え死にさせる気か?」


 ビクッ!


 目付きがきつくなるクリスに怯える僕。

 まあ幾ら村に現金収入が増えるといえど物価は常に変動する。

 下手すれば需要が大きすぎて、村人の備蓄分も無くなるかもしれない。

 その結果、当面お金だけが残るという危機的な状況に可能性がある。


「やだな~僕がそんな事をするとでも」

「じ~がな」

「大丈夫。考えがあります」

「……」


 なんだろう。

 凄く信用されてない目なんだが……。

 ま……まあ……。

 お金儲けと女の子関係では僕は暴走するから信用ないのかな?

 

 いかん。

 泣きたくなってきた。







 

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