砂
モーターの唸る音がした。かすかにプッシューという音がたちまち高まり、耳をつんざく音とともに中の空気が抜けてい行く。ハッチが開き未知なる惑星に降り立った。
「まだ生きてる……のか?」
平治は顔をしかめてアクタガワを見た。あたり一面砂だらけの地表に、不貞腐れた表情で腰を下ろしている。
アクタガワはポッド越しに反射する平治の顔を凝視して、「死んだほうがましやった」
「そんなことないだろう、息もできる」
「息ができるのは、お前が進化したからや」
「……?」
「まぁええわ」
深い憂慮と同情が混ざり合ったような表情を浮かべる。
「とりあえずどこかに歩かないか」
あまりに能天気な発言にアクタガワはむっとして視線を返す。無慈悲な太陽がこの地を睨みつけるように。
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「ようこそ、お二人様」
その声は妙に優しくて含みのある声だったが、機械じみていた。そう耳に聞こえてのは乾ききった地表に足を踏み出そうとした時だった。
平治は面食らってアクタガワを再び見合わせる。
「この宇宙船が喋ったのか?」
「そうみたいやな」
アクタガワが同調する。
「本日はお日柄もよく、お二人のおめでたいご入社を歓迎するに値する良き日ですね」
ポッドは弾むように言った。
「ここから北東に歩くと街が見えます。途中で砂嵐に襲われないようにお気をつけてくださいね」
アクタガワはいらいらしてハッチを蹴り壊した。
メインシステムを損傷したポッドはガビガビと不穏な音を上げた後すぐに動かなくなる。
「機械は好かへん」
肌を焼きつくような熱風が吹き込んできた。平治はスーツを脱ぎ小脇に抱えると手首で額の汗をぬぐった。
二つの人影が、灼熱の大地を彷徨っていた。目の前の大地は面白みのない黄土色で、そのほかはもっとつまらない黄土色の風景が広がっていた。
すべての植物は枯れはて、生命の息吹を微塵も感じさせない。おまけにひどく暑い。
アクタガワはこの眺めに見るからにやる気をなくしていた。一言も発することはなくどんどん歩いていく。
から風に吹かれ砂ぼこりが平治の目と耳を制す。
「なんだか、すごいな」
「こんなクソみたいな星のなにが?」
アクタガワは苛立ちを募らせていた。彼からすれば当たり前のことだ。広い銀河系には様々な星系や惑星がある。そしてそのほとんどが刺激的な進化を遂げ魅力的な生命体に溢れているのにどうしてよりによってこんな終わった星で散歩しなくてはならない。陽気なゼータ星人の酒場も妖艶な踊り子も見当たらないではないか。しゃがみこんで砂の粒を拾い上げてみたが当然その下にはなにもない。何千年と生きてきて、こんなところで立ち往生するのはいささか不満であった




