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異世界転移者はお尋ね者  作者: ひとつめ帽子
第三章 迷宮を超えて
48/55

リーファ・コリンウッド ①

 お腹が減った……。

今日は受付嬢のメアリーが余ったパンを少し分けてくれたのを食べただけで、後はひたすら水だけしか飲んでいない。


 “アイドリー”。

誰が言い始めたのか知らないが、いつの間にかあたしはそう呼ばれるようになった。

それからあたしをパーティに誘うと人などいなくなった。

それもそのはずだ。

魔法使いはコストがかかる。

魔法を乱発すればその分マナポーションも必要になる。

私の場合、たった一発の魔法でマナが底を尽く事もあるのだ。

マナポーションばかり消費し、その割に威力もてんでバラバラ。

魔法が不発の時すらある。

最後に組んだパーティの前衛の戦士からは殴られて罵られた。

お前なんか誘うんじゃなかった、と。

きっと、あたしは冒険者には向いてない。

でも、他に何ができるわけでも無い。

こんな幼い容姿では娼館ですら働けない。

奴隷に落とされたくないから、せめて冒険者としてこのギルドに居座っている。

もはや寝泊まりするお金もない。

今日もまた、この硬いテーブルで夜を過ごそうかと思っていた。


 そんなあたしの肩を叩く人がいた。


「あのー、ちょっといいかな?」


 誰だろう。

誰かが他の人と勘違いしてる可能性もある。

とりあえず寝たふりだ。


「あれ、寝てんのか?

おーい。朝だぞ」


 コンコンとテーブルを叩き始めた。

あれ、もう朝なの?

あたしはムクリと頭を起こす。

ふと窓を見てみると真っ暗だった。


「嘘つきですっ!」


 あたしは思わず声を上げる。

目の前には驚いた顔をしているハーフエルフの少年がいた。


「メッチャ元気だな、おい」


 そう言って一歩後ずさるハーフエルフ君。


「あ、すみません。大声上げちゃいました……」


 あたしは恥ずかしそうに顔を伏せる。


「いや、別に気にしてはいないから。

それより、君一人?

良かったら俺達と飯でも食って話さないか?」


 ハーフエルフ君はそう言って親指を後ろに向ける。

そこにはとても美しいエルフの女性が二人いた。


「え、えぇ!?あ、あの……あたしを誘っているんですか?」


 信じられなくて思わず自分を指差したが、頷く目の前の三人。

それはもう天使に見えた。

いや、むしろ神様だ。

急激にお腹が鳴り出す。


「ん?アー……シーか?」


「違うわよっ!私のお腹じゃないから!」


 しかし、すぐにそのエルフのお腹も鳴る。

そのエルフさんの顔が真っ赤に染まる。


「あ、あはは……あたしのお腹が鳴ったんです。

最近、ロクなもの食べてなくて」


 あたしがそう言うと、アーシーと呼ばわれたエルフさんはあたしの手を握って、それは大変だわ!すぐに何か食べなきゃ!と言い出した。

困惑するあたしだったが、とうやらこの人達は悪い人達ではなさそうだった。


 その三人はあたしのいたテーブルに座ると注文を始める。

一応このギルドでもご飯は出る。

出てきたのはパンと野菜のスープ、鳥の丸焼きに、蒸した芋を潰したサラダが出てきた。

まさしくご馳走である。

それが四人分出てきたのだ。


「遠慮なく食べてくれ。

アーシーの奢りだ」


「結局私なのよね。

まぁ別に良いんだけど」


 すると、三人が手を合わせた。

うん?何だろう?


「いただきます」


 ハーフエルフ君とエルフさん二人は声を揃えてそう言った。

私も何故か真似して、イタダキマフ、と言った。

三人が食べ始めたのを見て、ゆっくり手を食事に伸ばす。

た、食べて良いんだよね?

そして一口鶏肉を食べる。

滅茶苦茶美味いっ!

美味いぃ!




 私はもうガツガツ食べた。

それはもう貪るように食べた。

巨乳のエルフさんが若干引いていたが、構わず食べた。

だってもう一人のエルフさんもガツガツ食べてたもん。

ハーフエルフ君は「アーシーが増えた……」と何か言っていた。

気にしない。

食べれる時に食べなければっ!





「げふ……ご馳走になりました。

ホント、死ぬかと思いました。

ここ数日パンの耳と水しか口にしてなかったもので」


 あたしがそう言うとアーシーさんが目を潤ませていた。


「可哀相に……。

お腹が空くのはつらいよねっ!」


 そう言って手を握ってくれた。


「とりあえず、食うだけ食ったからな。

少し話をしようか?」


 ハーフエルフ君が若干悪どい顔になる。

あ、これ食べた事の代償に何か要求されるパターン?


「あ、あたしみたいな貧相な身体を求められても、こ、困ります……」


 あたしはそう言って目を伏せる。


「ちげーよっ!何盛大な勘違いかましてんだっ!

誤解が生まれるだろうがっ!」


 声を荒げるハーフエルフ君。

あれ、違ったのかな。


「なるほど、実は幼女に興味あり、と」


「え、流石に私、ちょっと引いちゃうな」


「ほら見ろっ!俺が何をしたっ!変態扱いされてんじゃねぇか!俺は至って普通だよっ」


 どうやらあたしの早とちりで皆さんに迷惑をかけたようだ。


「あ、あの、すみません。

てっきり身体を要求されるかと勘違いしました」


「どんな思考回路してんだよ……」


 ハーフエルフ君が一気に疲れた顔をする。


「実はね、私達迷宮に挑みたいの。

でも、迷宮には四人いないと入れないでしょう?

だからあなたに協力して欲しいの」


 アーシーさんがあたしにそう言った。

それって……。

それってつまり……。


「パーティを……組んでくれるんですか?」


 あたしは涙目になりながら確認する。

すると、三人は頷いた。


「ただ、ちっと条件があるんだ。

俺達の戦闘スタイルはかなり独特だから、迷宮で見たものは他言無用で頼みたい」


 戦闘スタイル?

そんなのは全然気にしない。

むしろ、あたしは確認しなければいけない事があるのだ。


「あ、あの……あたし、魔法使いなんですけど、あまり魔法が上手く扱えなくて……。

で、でも、精一杯頑張りますっ!

必ずお役に立ちますから!」


 あたしは何とか自己アピールをする。

ここまできてお誘いを無しにしたくなんかない。


「あなたの気持ちは伝わりました。

けれど、私達の提示した条件がとても大事なのです。

絶対に守ってもらえますか?

迷宮で見たものを、誰にも言わないと」


 若干気迫を込めて巨乳エルフさんが私に言う。

その気迫に押されるが、そんな条件なら何も問題ない。


「あたし、自分で言うのも何ですけど、ボッチなんです。

だから誰にも話しませんよ。

聞いてくれる人もいませんし」


 あたしは苦笑いしながらそう言った。


「それじゃ、その条件を守ってくれるのね?」


 アーシーさんが再度確認してくる。

どれだけ秘密にしたいんだろうか?

逆にあたしが一緒でいいのかな?


「はい、約束します。

それより、あたしはとてま足手まといになるかもしれませんが、大丈夫でしょうか?

その、非常に申し上げにくいのですが、マナポーションを買うお金も無くて」


 情けない話だが、事実なので先に宣告しておく。

すると、ハーフエルフ君が満面の笑みで答える。


「問題無い。戦闘は任せておけ」


 あたしは、その時はその言葉の意味を理解していなかった。

後にあたしは知ることになる。

この三人、アキトさんと、アリシエさん、シェリーさんの本当の姿を。

そしてその驚異的な力を、目の当たりにする事になる。


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