表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移者はお尋ね者  作者: ひとつめ帽子
第二章 聖都の闇
26/55

魔弾

 目の前のメイド少女は俺の言葉に言葉を無くす。

なぜ、この娘を助けたい、と思う自分がいるのかも少し不思議ではある。

そこまで関わりがあった訳でもないし、むしろこの娘の言動は酷く冷たいものだった。

けれど、同じ転移者だからだろうか。

放っておいてはいけない気がするのだ。

ましてや、俺と同じような境遇で、あの場所に囚われていた上に、服従を強いられている。

どうにかしてやりたい、と俺は素直に思った。

自分の事をまずどうにかしろ、とも思うが、こんな泣き顔を見せられちゃそうも言ってられない。


 とは言え、良い啖呵を切ったのだが、ノープランである。

しかし、手はきっとある。

その情報を持っている奴も、傍にいる。


 知覚速度を最速まで引き上げ、時の流れを超越し、思考する。

 メーティス、あの首輪について教えてくれ。


『あれは‟服従の首輪”です。

主従関係を築いた者同士が誓約によってその主が従の言動を縛る事が出来ます。

その誓約を破る事は自身の命と引き換えになる程重いものです』


 あの首輪を破壊するとどうなる?


『その場合、従者も誓約の放棄とみなされ死亡します』


 その主…多分大司教だと思うが、あいつをぶっ殺すと解放されるか?


『それもまた誓約の放棄とみなされ、やはり従者は死亡します』


 壊しても、あの大司教を殺してもダメか。

ならば、あのメイドっ娘を開放させるにゃどうすりゃいい?


『すでにあの首輪の解析は行っています。

完了すれば、あの首輪の効力そのものを分解する事が可能になるかと。

問題は、その解析結果をどのような形にして首輪にもたらすか、という事です。

マスターが首輪に触れるか、何かしらの方法で分解の力をあの首輪に当てなければなりません』


 とりあえず、あの首輪の効力を無くす事は出来るんだな。

それなら、どうにかなるかもしれない。


『マスター、そろそろ最速に限界がきています』


 了解。

メーティス、解析は頼んだ。

それまで、どうにか時間を作る。


『畏まりました。マスター、ご武運を』


 俺の意識が一気に引き戻される。

さて、状況はわかった。

ならば、メーティスが解析を終えるまでの時間稼ぎと、その分解とやらをどうやって首輪にぶち当てるか、考えないとな。


「シェリーッ!とっととそいつの動きを止めて縛り上げろ!

今、すぐにだっ!!

それが出来ないのなら、殺せっ!!」


 大司教がヒステリックに喚き散らす。

本当に、こいつを殺せば一件落着ってのだと楽だったんだが。


 大司教の言葉にシェリーの身体が反応し首輪の深紅の宝石が輝く。

どうやらあんな出鱈目なモノでも命令としてみなされるらしい。


「あなたに…何ができるのですか…」


 シェリーはそう言って、両手を広げ、それぞれの掌に水の渦を作り出す。


「あなたにっ!!何を助けられるというのですかっ!!!」


 怒声を上げると、その両手を前に突き出してくる。

そして、まるで伸び上がる竜巻のように水の渦が俺に迫ってくる。

地面を駆け、それを躱すがその渦は執拗に俺を追い回す。

それはもはや一匹の水の大蛇となっていた。

その大蛇が通る道は何もかもが抉り取られ、迸る水滴もまた地面に穴をあけていく。


「‟ハイドロス・サーペント”!!」


 シェリーが詠唱すると、その大蛇が加速し牙をむく。

大口をあけて襲いかかる大蛇を回避し、その詠唱者であるシェリーへとアキトは走るが、大蛇がそれを阻む。


「邪魔だな、この蛇。

‟ダイテイト・アイギス”!」


 俺はもう一度漆黒の大盾を手にする。

その蛇の突進を受けようとするが、


『マスター!この複合魔術の威力はダイテイト・アイギスを上回りますっ!

防ぎきれません!』


 メーティスからの注意喚起。

慌ててその場を跳躍し離れ、残された大盾は跡形もなく呑み込まれた。

さっきまでの威力とは段違いって訳か。


「いつまで避け続けられますか?」


 シェリーが挑戦的に言うと、両手を上に掲げ、巨大な水球を作ると、それを勢いよく地面に叩きつける。

飛び散る水滴が形を成し、アキトへと遅いかかる。


「‟ハイドロ・ドルフィン”!」


 シェリーが詠唱すると、その水滴が集まりだし、イルカの群れとなって地面を潜りながら襲い掛かってくる。

蛇にイルカとか、ここは水族館か動物園かよっ!

こいつらに体当たりされればその時点で俺は消し飛ぶだろう。

ひたすら俺はそのイルカの群れと大蛇の突進を避ける。


 このまま逃げ続けても、また水の生き物を呼び出してきてじり貧になる。

なら、攻めるしかないか。

しかし、俺には今のところ近距離戦でしか戦っていない。

だが、その近距離に持ち込めない。

なら遠距離武器を召喚するしかないが、俺にも使える遠距離武器っていうと…。


『マスターの元いた世界で最も一般的な武器があるではないですか』


 メーティスが助言してくる。

最も一般的?

それって…。

銃か!?

出来るのか?


『召喚魔法はイメージが大事です。

構造や形状、その威力まで、具体的にイメージすればより優れた武器が召喚可能です』


 イメージ…。

俺は回避行動を続けながら、頭の中では銃のイメージに頭を回転させる。

 FPSゲームの知識を振り絞り、銃のフォルムを想像する。


『細かな構造は私が補完します。

引き金を引き、銃弾を飛ばす。

その程度のイメージで構いません。

あとはマスターのセンスです』


 センスとか。

こんな戦闘真っ只中でセンスも何もあるかっ!


 だが、頭の中に一つ、銃のイメージがクッキリと浮かぶ。


『それでいきましょう。詠唱を』


 目の前から大蛇が迫る。

それを紙一重で躱すも、飛沫が腕に当たり穴が複数あいていく。

そこから血が吹き出して、すぐに止まる。

痛みを感じつつも、詠唱する。

今し方血まみれになった右手を掲げて。


「幻具召喚‟カラドリウス”」


 その手の中から光が形を成していき、翡翠色に輝いていく。

輝きが収まり始めると召喚されたソレが姿を現す。

バレルは長く、40cmもあり、銃口は二つある。

シリンダーには8発の銃弾が込められ、グリップは手になじむ。

全体の色は漆黒だが、炎のようなトライバルデザインが側面に施され、オレンジ色に輝いている。


 狙いを定めるのは迫る水の大蛇。

その大口めがけて引き金を引く。

撃鉄が銃弾を叩いた瞬間、迸るのは火薬ではなく蒼い魔力の欠片。

「スギャンッ!」と銃声がつんざき、放たれたのは魔弾。

大蛇に魔弾が触れた瞬間、魔力の閃光が煌めき大蛇が跡形もなく掻き消される。


 シェリーはその光景を見て驚愕する。

最上級の水魔法に魔眼による複合術式によって放った神代魔法が掻き消されたのだ。

あの少年が何を手にしたのか、それもわからない。

一体、あれは何だ?


 続いてアキトは第二射、三射と続けてイルカを打ち抜く。

悉くその姿を掻き消される事にシェリーは焦る。

何をしているんだ?

あの手にもっている武器は何だ?

真っ直ぐに何かが高速で射出され、それが当たったモノは消えて無くなるとは…。

シェリーは残る六匹のイルカを一斉にアキトへと差し向ける。


 全方位をイルカに囲まれたアキトだったが、生体感知ならぬ、魔力感知にてその姿を見なくても位置を補足し、銃口を向けて引き金を引く。

回転式拳銃ではあるが、構造は地球のそれとはまったく違い、魔力によってその力が発揮されている。

本来連射という機能はないはずなのだが、アキトの超人的な反射神経にカラドリウスも応えてくれる。

同時に襲ってくるイルカの群れを全て魔弾で捉え、消し飛ばす。

残るのは魔力の欠片だけ。

キラキラと周辺に舞い散っていく。


『解析が完了しました』


 メーティスからの報告が届く。

俺はシリンダーをフレームから外し排莢させ、再度戻してシリンダーに触れ、魔力を込める。

召喚するのは一発の弾丸。

排莢された薬莢は地面に落ちると掻き消えのと同時に、俺は再度狙いを定める。

狙いは一つ。


「そんな…ありえない…」


 シェリーは驚愕に目を見開いている。

だが、すぐに両手を前に掲げ、詠唱する。


「これで、終わりです!‟ハイドロス・アクイラ”!!」


 まるで鎌鼬の刃のように放たれたのは水の鷲。

鷲は回転しながら真っ直ぐこちらに突っ込んでくる。


「その首輪、そろそろ外していい時間だろ?メイドっ娘!」


 引き金をためらわず引き、魔弾は放たれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ