12話 学歴だけが全てではない
気づいたら10000PV突破してました。
初投稿から約半年でこんなに(感涙)。
ありがとうございます!
王城の工事が終わった翌日、今日はディランたちの実力テストだ。
早朝、食堂へ降りてきたディランとダリエラは昨晩緊張してよく眠れなかったようで薄っすらと目を充血させていたので顔を洗いに行かせた。
こんな時疲れを癒す魔法があればよいのだが、光魔法にそんな魔法があるらしいので今は我慢してもらおう。
朝食は軽めに取らせて予約していた馬車を借りに行ったが、そこにはこの間の大食い馬が牧場の入口で待っていた。
おかしいな、馬主には別の馬を用意してくれと頼んでおいたのにすでに準備万端で待機している。
変えてもらおうとしたがどうやら用意していた馬を彼女たち(・・・・)は蹴り飛ばし、急いで変わりを連れてこようとしたが他の馬たちは怯えて近寄ろうとせず、蹴り飛ばした方も馬車から動こうとしないので彼女たちを使うしかないのだそうだ。
今の説明の通り大食い馬たちはメスなのだが、言語理解のスキルは動物にも適用されるようでなんとも姦しい。
馬(姉)
『まったく!あのアバズレども、さんざんあの人族と一緒に行くんだ~なんて自慢して!今日一日はあのハゲ(馬主)と一緒にいればいいわ!』
馬(妹)
『まったくですわお姉さま。あの人族にはこのわたくしたちがふさわしいというのに、困った方たちですわね。』
馬(姉)
『そうなのよ!しかもあの人族、おいしいご飯をたくさんくれるしね!いつも草ばかりのあのハゲとは大違いよ!』
聞きたくなかったよ、馬たちのガールズトーク。
リンは急いで馬たちの食糧を買いに行き、馬(姉)はディランが近寄ると『汗臭い身体で近寄らないで』と威嚇、馬(妹)とオンブルは互いに見つめ合い「「なにか通じるものを感じます」」と同時に呟き互いに友情(?)を深めていた。
なんだこの混沌とした状況は・・・・。
穏やかに出発しようとしていたんだが、もう諦めるしかないようなのでダリエラ(干し肉装備)と一緒に馬車の点検をしてリンを待つのであった。
今回向かう先は火山、森、湖の3つで最初はそれぞれ3人ともソロで戦ってもらおうと思う。
相性の悪い相手を選んだつもりなのでどこまでやれるか見させてもらおう。
そんな考えを感じたのか3人は突然の悪寒にブルリと体を震わせた(オンブルはなぜか頬を赤らめていた)
――――アルバ帝国 帝都――――
喧騒をわずかに残した夜の街を俺はディランを背負い歩いていた。
隣にはダリエラを背負うリンと右の頬を腫らしたオンブルが会話を弾ませている。
実力テストを終えて冒険者ギルドへたどり着くと二人とも疲れ果てたようなのでこんな格好での帰宅となった。
とりあえずテスト結果は以上のとおりだ。
●ディランVS不落岩人形〇
苛烈な猛攻空しく相手の防御を突破することができずに体力切れで敗北
●ダリエラVS毒竜〇
魔法攻撃のほとんどを躱され吐き出された毒から逃げ惑ううちに空腹&体力切れで敗北
〇オンブルVS悪食海狸●
水中からの攻撃をものともせず物質化させた自らの影で串刺しにして勝利
どさくさに紛れて抱き着こうとしてきたので右頬を殴り重症
オンブル以外は最終的に俺が倒したが、二人とも1時間近く粘っていたので十分合格点だ。
今後の課題も見えてきたのでこれからどう成長していくのか楽しみだ。
予定では夕方には屋敷に戻るつもりだったが、今日明日は休めと帰りの馬車で伝えると二人とも安堵して眠りにつき、ゆっくり帰ってきたので遅くなってしまった。
ラミス達心配してるかもしれん。
しかもオンブルが冒険者ギルドで騒いでさらに時間をロスしてしまった。
あの時一度殴ったところと寸分変わぬ場所を再び殴り止めなければもっと遅くなっただろう。
一見ひどい扱いに聞こえるかもしれないが、こうでもしないと収拾がつきそうになかったので勘弁してほしい。
彼女が騒いだ理由はSランクを単独撃破したのに赤ランクまでしか上がらなかったことについて異議を申し立てたからだ。
本来冒険者としてのランク昇格には実績を積み試験を受ける必要がある。
低ランク試験では試験官との模擬戦を行い、中・高ランクではランクに応じた魔物の単独撃破が条件となる(配布冊子 【冒険の手引き】より抜粋)。
今回のSランク単独撃破は水晶ランクの昇格条件なのだがオンブルはこの一体しか倒しておらず実績が少ないことからギルド長権限の限界である白ランクの一つ下となった。
じゃぁ俺は?と思うかもしれないが白ランク昇格時は
・レベルが5000であったこと(隠ぺい状態)
・クエストは数回しか受けなかったが撃破数の多さ・高ランクの魔物の撃破・複数の希少素材の入手
・死の大行進戦最前線に参加させるための体裁作り
この通りその場の状況による影響も大きかったが条件を満たしていたので一気にあがり、水晶ランク昇格時は
・一万を超える撃破数
・Sランク5体の単独撃破
・魔忠副官の撃破
という成果を成しており、十分水晶としてありとみなされた。
細かい手続きも必要であり、通常1・2ヵ月はかかるはずがやはり魔忠副官の撃破による影響は大きかったようで過程をすっ飛ばし、たった数日で冒険者ギルド本部から許可が下りた。
そんな裏事情を知らないオンブルは納得できないとカウンターを叩き、バリスを振り回したあげく、最終的に泣きながら3時間も受付嬢に縋りついたのでさすがに見過ごせずに物理的鎮圧を試みた結果、現在隣で頬を腫らして談笑しているオンブルができあがった。
ギルドから落ち込んででてきた彼女に赤ランクなら一緒に迷宮に入る権利があるからいいじゃないかと元気づけここまで回復したが今夜は荒れそうだな。
屋敷に帰ると背負っていた二人を部屋へ戻し、ラミスに後で食事を持って行って行くように頼むと一人執務室へと籠り、今回のメンバー&リンの鍛錬メニューを考えた。
いつのまにかディランたちを泊まらせていた部屋には私物が持ち込まれており、ここに住む気満々のようだ。
「さて、どの方向性で鍛え上げるか」
手っ取り早く強くするには俺の力をフルに使う方法もあるが、その場合実行できるのは俺しかいなく後世に残したり誰もが試せない。
誰でも実行でき、わかりやすい解説付きの鍛錬を一つ考案するのには多大な苦労と時間が必要なのだが手元にはすでに企画書が1つ出来上がり、2つ目にとりかかろうとしていた。
『レイヌ様、やりました!わたしがんばりましたよ!褒めてください!』
「・・・・・ルルか。いきなり念話で騒ぎだすのは止めてくれ」
書き損じたメモを脇に置いて背もたれによりかかりながら薬煙に火をつけた。
「で?一体なにをやらかした」
『ち、違いますよぉ。昨日イビルアル王国に〝原初の世界″から5名招待したんですよぉ』
「意外と早かったな。ちゃんと召喚に関する法は守ったよな?」
『大丈夫ですよ~。しっかり【生命保障法】も【自由選択権保守法】も守りましたよ~』
「ならいい。おまえのことだから報酬を最初に伝え忘れて無駄に相手を不安にさせなかったか心配になったが、その様子だと安心した」
『だ、だいひょうぶですょ・・・・。万事おまかせでしゅ』
噛み噛みな喋り方に一抹の不安は残ったがここで追及してもどうしようもないので今は流しておこう。
『そ、それでですね!お渡しする報酬の件ですが事件解決後に【なんでも一つだけ願いを叶える】ことを約束させていただきました』
「まさかとは思うが、おまえ神気を出しながら約束してないよな?その場合約束ではなく正式な契約になるんだろ」
『!?』
「『・・・・・・・・・・』」
神としての力を介した生物との約束は神をも縛る契約として発動する。
それは神界にある【世界管理専門学校】の1年生が学ぶ常識なんだが。
『・・・・・・てへ☆』
「おまえ馬鹿だろ!?相手がもし世界滅亡とか願ったらそれも叶えなければならないんだぞ!」
人選には十分気を付けるように言っておいたからそんな輩が召喚候補として選ぶはずがないが、ここでことの重大性をわからせるために念話だけでなく声に出して注意した。
『ひゃぁぁぁぁ!!どうしましょう!?わたしとんでもないことをぉぉぉぉ!!』
「人選は徹底したんだろ?そうなる可能性は低いがおまえは創造神としての自覚を持て」
少しだけフォローはしたが当事者は話を聞いておらず「どうしましょう、どうしましょう」と慌てるばかりだったのでルルの監視役が近くにいるだろうと思い「誰かさっきの言葉伝えておいてくれ」と一言残して念話を切った。
「我が主様、召喚者の人柄を調査いたしますか?」
「お前一人で平気か?」
机の視角からにゅっとでてきたオンブルをついいつもの癖で首から下を氷漬けにしながら問いかける。
というか《完全防御壁》かけておいたんだが・・・・。
「御心配には及びません。すでにこの街の住人ならびに滞在している冒険者たちのなかに多くの同志がおりますので時間はかかりますが情報はそろいます」
同志か。
まさか神界みたいにファンクラブ(非公認)とか作ってないよな。
この世界の専属神たちに調べさせてもいいがルルの顔を立てるため内密にしておく。
ルル自身をこれ以上追い詰めたら更にミスが続くと思いオンブルに一任した。
既に気疲れしてとっとと就寝するため就寝前の日課(オンブルの封印)をした後寝室へといき、すぐに眠りについた。
帝都警備隊から各ギルドへ通達
[IRF(偉大なるレイヌ様ファンクラブ)は現在会員数500人突破!]
老若男女入会は問いません!
さぁ、一緒にレイヌ様を愛でましょう!
以上、冒険者・職人・薬師ギルドに張られた謎の紙より一部抜粋。
なお何度剥がしてもいつのまにかまた張られているので放置するよう他の職員に通達するように。




