2話 迷宮での授業
一時間遅れでごめん!
「「「VUMOOOOOOOOOO!!!」」」
3つの頭が上へ向かって吠え6つの赤い目がこちらを値踏みするかのように見据える。
まるで自分と闘うに値するか観察しているようだ。
「れ、レイヌ様・・・・。あれはいったい何なのでしょう。あんな魔物見たことがありません。」
「情報では2つ頭の牛《双頭の暴れ牛》の赤と黄の色持ちだったんだがな。」
【双方の暴れ牛(異形種)】ランクA
う~ん。種族自体は当ってるんだが、異形種か。
今回はたまたまこうなっただけなのか、はたまた毎回こうなるのか。
階層主は一定周期で生まれるから毎回だとするとますます攻略する確率が下がるぞ。
「情報は当っているみたいだが異形種になってるみたいだ。」
「異業種ですか・・・・。たしか10万匹に一匹の確率で現れるだったと思いますが。まさか!私の不幸がまた!」
「大丈夫だ、もう呪いはないんだからそれはない。」
ガーンという音が聞こえそうなほどのリンを軽く宥めてからいつもの調子で牛へと歩を進める。
「いけませんレイヌ様!3色の色付きはランクS並みに危険です!」
「大丈夫大丈夫。」
俺は牛の前まで移動し大太刀を構えた。
しかしなんでこいつはさっきまで襲ってこなかったんだ?
まるで俺を待っていたような‥‥‥気のせいか。
魔物には知識はなく本能しかないからそんな理性的なことはしない。
牛それぞれの頭は口を開けると魔力を溜めだしたが多分息吹が来るな。
片を付けるのは一瞬だがそれだとリンの参考にならない。
「今から《ドキドキ!レイヌの実践授業!》を始める。」
「なんですかそれは?」
「いいから聞け。いいかリン、やつは息吹を吐こうとしている。普通は出される前に攻撃をしかけ中断させるのが好ましいが溜めが短いやつもいる。そのときの対処を今からやるから見ておけ。」
言い終わると同時に三色の息吹が襲い掛かる。
俺はなるべくスピードをおさえて一直線に前へ走って避けるとそのまま頭の下まで移動し3つの頭の付け根を狙い掌打をおみまいした。
牛はあまりの痛みに後ずさり悶えた。
「今やったように自分より大きい相手の場合相手に飛び込め。左右に避けると息吹が続く限りずっと狙われるぞ。特に上空はダメだ。移動できないから逃げ場がない。」
牛の狙いが俺に戻ると今度は全身にオーラを纏い突進してきた。
それを横に避けるとそのまま壁に激突したがその隙に火球を10個ほどぶつけた。
「このように色付きは同じ魔力の魔法を与えてもたいしてダメージがない。」
「あの、かなり苦しそうですが・・・・。」
「しかしよく見てみろ。攻撃したところのオーラが少しだけ薄くなっただろう。決定打な魔法がない場合は一ヵ所を狙って攻撃しろ。少しづつだが攻撃は通じるはずだ。」
リンの言葉は無視してなおも授業を続けた。
牛はもはや息も絶え絶えといった状態だがまだオーラは健在だ。
そこで試したかった技を使うべく右手に力を集める。
「ふぅぅぅぅ・・・・・覇っ!!」
手から離れたなにかは牛へと当たるがダメージがなさそうにみえる。
だが目的は果たされた。
「あ!色が消えてる!」
そう、相手の魔力オーラを吹き飛ばすというはなれ技は見事に成功した。
何が起きたのかわからず混乱する牛の背中に飛び乗ると頭を全て斬り飛ばし《ドキドキ!レイヌの実践授業!》は幕を閉じた。
「どうだった?」
「とても参考になりました!‥…一部以外は。」
まぁ一見そうだろうな。
俺は素材を剝ぎ取るとどれほど理解したのかを聞いたがなかなかに優秀な生徒だ。
「あれは何だったと思う?」
「おそらくですが《双頭の暴れ牛》の魔力と反対の属性の魔力を集めたように見えました。しかし‥‥なにか別の力もあったような気がします。」
「よく見ていたな。確かにあれは魔力と別の力を集めたものだ。その力とは‥‥これだ。」
俺が右手を出すと淡い光の球体が出てきた。
「これは魔力?でもそんな感じはしない。もっとこう‥…温かみがあるような。」
リンは球体を眺めたり突いたりしながら答えたがやはりわからないようだ。
「これは気だ。」
「気、ですか?」
「そうだ。人にはまだ未知数の力が宿っている。そのうちの一つが気だ。」
他の世界でも無意識に使ったり自在に使えたりと差はあるが一般的に知られている気もここでは存在すら知られていない。
ここの歴史を見ると武術で名を馳せた者の多くは気を使えるたようだが単に力が付いたというあいまいな認識で理解していない。
これを使うと肉体強化や魔法の威力上昇、相手の防御を無視した攻撃など様々なことができる。
「すごいです!ぜひ私にも教えてください!」
「もちろんだ。だが欠点が2つほどある。一つは人によって習得に時間がかかる。数時間でできるものもいれば数十年かけた修行の末にできるようになるものもいる。もう一つは気を限界まで使うと死ぬことだ。」
「死ぬんですか!?レイヌ様死なないで!」
「落ち着け。気というのは言わば身体を構成するものの一部なんだ。それがすべてなくなるとバランスが崩れ身体を保つことができなくなる。これも人によってどれほど使えるかは違うから習得したら一度見してみろ。ちなみに時間が経てば回復するのは魔力と同じだからな。」
死なないことを理解したリンはすぐに自分には使えるかと力を入れたり抜いたりとしていたがそう簡単にできるならすでに世界に広まっているだろうに。
これ以上次の階層に進むにはリンは限界なのでとりあえず地上へと戻ることにした。
本人はまだいけると腕を振り回していたが帰りのことも考えろと鉄拳を振り下ろすと大人しくなった。
「おかえりなさいませ、レイヌ様!リングラット様!」
階段を上がると数人の騎士がこちらへ敬礼してきた。
それ以外のものも敬礼こそしないがどこか期待のこもった目でこちらを見つめていた。
「おつかれさまです!本日はどのような成果でしたか?」
「来た時も言った通り今回は下見だからそこまで潜ってないよ。とりあえず10層は突破してきたから。」
「そうで‥‥10層!?迷宮に入ってから1日しか経っていませんよ!?しかも階層主を倒したのですか!?」
「あぁ、そのことで話がある。ここの責任者を呼んでくれるか?」
騎士はあわてて詰所へと向かった。
その間他の騎士たちが椅子やら食事やら用意すると言ってきたがやんわりと断り世間話をしていた。
話が盛り上がってきたところでここの責任者がやってきた。
「おまたせして申し訳ございません。わたしがここの責任者のライズと申します。お話があるとのことで。こちらへどうぞ。」
「すまないな。じゃぁな、さっき言ったことをすれば彼女は必ずお前を意識しだすから試してみろ。」
「ありがとうございます!」
彼はだいたい40代ほどであろうか、鍛えられた大柄な身体のわりに人の好さそうな顔をしていた。
若い騎士との話を切り上げてライズに付いていくと木造の小屋へと通され、そこには数名の騎士が壁に背を向けて直立不動の恰好をしていた。
「このようなところで申し訳ございません。何ぶん貴族を招くという状況は想定せずにいたもので。」
「かまわないさ。あたたかい雰囲気があって俺は好きだぞ?それに騎士たちもなかなかに鍛えられているな。」
「はははは。それはそれは、ありがとうございます。」
「だがそれだけに残念だ。」
俺が手を払う仕草をするとパキャンっという音が部屋に響いた。
「‥‥‥いまのは?」
「この部屋は盗聴されていたようだ。今魔力を過剰供給して破壊した。」
「なんと!?重ね重ね申し訳ございません!すぐに別の場所へ。」
「このままでいい。他の場所にもあったが全て破壊した。」
「他の場所にも‥…一体だれがこのようなことを‥‥。」
ライズは怒りに震えていたが周りの騎士が怯えているから止めてほしいな。
アクシデントはあったがライズを宥めてようやく本題を話し始めた。
俺のまわりって感情表現が激しい奴多くないか?
レイヌ「授業はどうだった?(臨場感があって)ドキドキだったろ。」
リン 「はい!(かっこよくて)ドキドキしました!」
嚙み合わない会話はしばらく続きました




