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創造主長様のお仕事  作者: 己龍
第5章 月日+戦争+魔王=???
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24話 内に秘める者

 眠い・・・・。

 ひたすら眠い・・・・。


 神としての俺は、人間の体に馴染むために睡眠がどうしても必要だ。

 どれくらい必要かというと、強制的に体が眠らされるくらいだ。


 だというのに周りが騒がしくて起きてしまった。

 今何時・・・・まだ3時じゃねぇか。

 いったい何を騒いでるんだよ。



「レイヌ!レイヌは起きてる?」

「ふぁぁ~・・・なんだよセーラ、何の騒ぎだ?」



 俺用のテント内に転がるように飛び込んできたセーラ。

 彼女も寝起きなのか、仕立ての良いシルクのパジャマを着ていた。

 う~ん、なかなか寝やすそうな恰好だな。



「どうしたもこうしたもないですわ!緊急事態ですわよ!」

「緊急事態?フムアンドが攻めてきたか?そんなもん冒険者と傭兵たちで対処可能だろう」



 魔物が来ようが向こうの兵士が来ようが、返り討ちにできるだけの戦力はあったはずだ。

 いまさら何を慌てているんだよ・・・。



「そんなことではないですわ!コアークが、コアーク侯爵が消えましたわ!」

「逃げたのか。それじゃぁ新しい指揮官を指名しないとな。まったく、今日は作戦実行日だってのに迷惑な話だ」

「ち・が・い・ますわ!コアーク侯爵と一緒に、一個師団の兵士たちも消えたのですわ!」

「そっか、兵士たちもか・・・・・・・はぁ?」



 ちょっと待て、一個師団っていえばかなりの人数になるだろうが!

 コアークが消えて、兵士たちも消えたってことは・・・・まさか!?



「セーラ、馬と物資はどうなってる!」

「両方とも人数分なくなっていますわ。修理に出していたはずの装備もいつの間にかなくなっていて」



 おいおい嘘だろう!?

 作戦の実行日だぞ!

 こいつは間違いなく・・・。



「レイヌ、間違いありませんわ。コアーク侯爵たちは先にフムアンドへと出立したのですわ!おそらくこの戦いの戦果を独占するために」



 コアァァァァク!!!





 ◇ ◇ ◇





 朝、まだ日も登らぬうちに俺たちは馬に乗り走っていた。

 進軍時は歩きが原則だったはずの兵士たちも小走りで進んでいく。

 それもこれもコアークのせいだ。

 よりによってこんな大事な時に勝手な進軍なんかしやがって!



「セーラ、作戦への影響は?」

「もし先にコアーク侯爵たちがフムアンドを攻めていたのだとしたら、相手に防衛を固められてしまいますわ。その間にも対策など考えられようものなら、フムアンドの王都内での大規模戦闘に入ってしまいますわ」



 そうなったら敵味方入り乱れる混戦になっちまう。

 しかも場所は王都、地の利は完全に向こう側だ。

 犠牲も多く出るだろうな。



「セーラ、作戦は前倒しでいいんだよな」

「えぇ、とにかく今はスピード勝負ですわ。レイヌたちは一刻も早く西門へと向かってください」

「わかった。いくぞお前たち」

『了解!』



 追随するディーたちと共に、馬のスピードを上げていく。

 俺の後ろにはディーたちパーティーメンバーとリーシアが並んでいる。

 リーシアの向かう南門へのルートと、俺たちの向かう西門のルートが重なっているからだ。



「まったく、ナンセンス(迷惑)な展開になってきたねレイヌ君」

「同感だ。こんな状況でもそんなに名誉が欲しいのかよ」

「・・・朝ご飯食べる暇もなかった」

「ダリエラさん、パンでしたら余分に持ってきていますのでよかったら」



 こんな事態だというのにいつも通りのうちのパーティーときたら。

 いや、考えようによっては大物なのかもしれない。

 ダリエラとリンが馬上でパンの受け渡しをしている様子を見ていると、その後ろで奇妙な行動をとっているディーとオンブルが目に入った。

 二人ともやたらと後方を見ているが、何かあったか?



「どうした二人とも」

「レイヌさん、なんか俺たちを追っかけてくる奴がいるぜ」

「見たところ一騎のみですが。我が主様、いかがなさいますか」



 《脳内地図》で探ると、確かにこちらを追ってくる魔力反応がある。

 この反応は。



「!?我が主様、どうやらあれはコルア・テオ・フムアンドのようです」

「何やってんだあの元国王は。全員一旦停止だ、周囲の警戒を始めろ!」



 馬から降りてしばらくすると、やってきたのはやはりフムアンド王国元国王、コルア・テオ・フムアンドだった。

 乗ってきた馬は適当に見繕ったのかあまり速い品種ではなく、合流した時にはすでに疲労困憊していた。



「コルアさん、あんた何しに来たんだ。今は一秒でも時間が惜しい状況なのは周囲から聞いただろう」

「す、すまない。だがレイヌ殿たちにどうしても伝えなければならないことがあったのだ。これを見てくれ」



 コルアが懐から取り出したのは、俺とセーラがさんざん見ていたフムアンド王国王都の地図だ。

 これを持っているということは、セーラはコルアがここに来ることを承認していたってことだ。

 直接肌に触れていたからところどころふやけているが、これがどうしたんだ?



「作戦のことは近くにいた傭兵から聞いた。だがこの地図には間違いがあるんだ」

「間違い?多少の違いなら問題ないんだが」

「いいや、大きな問題がある。レイヌ殿たちが向かうのはこの西門なのだろう?だがこの門は最近閉鎖されたんだ」

「そんなもの飛び越えるなり多少壊すなりすればいいだけの話だが」



 幸いうちのパーティーは空を移動できる手段がある。

 ディーは足元を《纏い》を発動した状態で爆破させれば飛び上がれるし、ダリエラは最近風魔法の《飛行(フライ)》を覚えた。

 リンは《精霊魔法》で精霊に運んでもらえるし、オンブルは影を伝って移動できる。

 そのことはセーラに伝えたはずだが。



「普通に閉鎖されたのならここまで止めない。西門はただ閉鎖したのではなく、大量の魔法兵器によって固められたんだ」



 魔法兵器、か。



「なぁ、その魔法兵器ってなんだ?」

「ごくたまに遺跡や迷宮などで見つかる古代の兵器のことですよ。ただ、そのほとんどが国で管理、封印されているのでディランさんが知らなくても無理はありません」

「・・・じゃぁなんでリンちゃんは知ってるの?」

「昔たまたま発見したことがありまして。その際にお城のほうから買い取らせてほしいと頼まれたんです。その時魔法兵器の存在と危険性を説明されました」



 リンが言った通り、魔法兵器の威力は高い。

 どの兵器も一度使ったら再使用までに長い時間が必要だったはずだが、それでもキューテが使っていた《魔術》並みの威力はあった。

 だが現代では製造の技術は失われているはず。

 見つかることもめったにないと聞いたが、それが大量に?



「どこからそんなに魔法兵器を手に入れたんだ」

「来訪者からだ。彼らは魔物を召喚する魔道具とは別に、複数の魔法兵器も持ち込んだ。当時は森に隣接する西門の守りを固めたくて取り付けたんだが」



 まいったな、そんなものがあったらとてもじゃないがディーたちは無事ではすまないぞ。

 それに例え上手く攻撃をかいくぐったとしても、音で俺たちがいるとバレる。

 そうなったらこっそり潜入なんてできない。



「そんなやべぇのがあるのかよ!どうするよレイヌさん、今更止めましたなんてできないぜ」

「コルアさん、解決する術があるんだろう?だから俺たちを追ってきた」

「その通りだ。南門から一番近い森に一軒の小屋が建っている。その小屋は巡回する兵士たちの休憩所なんだが、王城からの逃げる際の隠し通路の出口でもあるんだ」



 なるほど、そこを通れば誰にも気づかれずに王城へと侵入できる。

 問題は、彼がなぜここまで国を攻めることに意欲的なのかだ。

 元は自身が国王をしていた国だぞ?

 いったい何を企んでいるんだか。

 

 俺はみんなと視線を交えて確認を取る。

 やはり全員コルアの意図が読めないことに警戒していたが、結果的に俺がいれば罠があっても意味がないだろうという結論が出た。

 意味がないってどういうことだよ。



「コルアさん、あんたの案に乗った。案内してくれ」

「よかった、では私についてきてくれ」

「いや、あんたの馬はもう限界だ。ディー、お前の馬を貸してやれ。それで俺の後ろに乗ってくれ」



 少しばかり時間をとったが、最初から早めに行動していたからまだ猶予はあるか。

 今度はコルアを先頭に隊列を組みなおし、再び馬を走らせた。


 しばらくすると見えてきたのは真っ赤な門だ。

 控えめな色で高い外壁の中で、その門は異様なほど目立っている。

 あれがリーシアの担当である南門だ。



「ではレイヌ君、私はここで失礼するよ。君たちもドゥー・マイ・ベスト(頑張って)してくれ」

「そっちもな。思いっきり暴れて敵を引き付けてくれ。それじゃ「おっと、待ってくれないか」・・・どうした?」



 リーシアは馬から降りて俺の元まで近寄ってきた。

 俺も馬から降りてリーシアに合わせる。



「コルア君のこと、気を付けたまえ。彼は何かを隠している」

「そんなことわかってるよ。もしかして何か気づいたか?」

「前にも言ったけど、私の目は人の内面が見える。彼の内側にはドロドロとしたものがはっきり見えるよ」



 ドロドロか。

 聞いた感じではあまり良さそうな内面ではなさそうだな。



「どんな感情だ?」

「あれはレイジ(怒り)・・・いや、もっと深く暗いものだ。そうだな、さしずめヘイト(憎しみ)かな」



 憎しみか、できればこっちに向いてほしくないんだが。



「レイヌ殿、急がねばならないのだろう?いつまでここにいるのだ」

「コルア君がお呼びだ。さぁ、行ってくるがいい」

「不吉な情報をどうもありがとう。お互い無事でいよう」



 リーシアと別れて歩き出す俺たち。

 まったく、先行きが不安すぎる。

 俺は目の前を走るコルアを見ながら、盛大にため息を吐き出した。

レイヌ 「いきなり男のテントに乗り込んでくるなよ」

セーラ 「貴方はまだましですわ!私など、剥げたおじさんに叩き起こされたのですわ!」

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