十三
管理事務室のポストにマスターキーを投函する。これで退去手続き完了だ。余程損害が酷い例外を除いて原則として顔を合わせない。従業員用という用途が結果的に抑止力となっているから皮肉なものだ。
部屋を出たその足で冴と頬月にも餞別の挨拶をしたかったがオフの一時を押し掛ける気もない。そもそも風俗仕事での非常時の為の個人情報だ。
再度ゴミ収集所に行き、捨てて来たゴミ袋を開ける。持ってきた返歌が書かれたトイレの紙も一緒に放り込んだ。私に届いた今、用は果たされた。お札になってはいけない。
無心に風俗街を抜けるまでの間で急いで総括することにした。
図らずも今は「枯野」の季節だ。単位取りの日々は終わった消化試合な期間とはいえ、学生生活自体は桜咲く季節まで続く。奨学金返済はまだ続いている。新居は決まり、これから先の移動先とはいえ、早く次の仕事を決めなければ、また身売り風俗漬けの日々だ。岩田の高笑いが留置所から聞こえてくるような気がした。
(……)
これから先、長くはないのかもしれない。長期潜伏のHIV診断の日程も新居先での病院決まらず未確定だ。それもよい。大学生活を ネカフェの梯子で凌いだ日々から岩田との軟禁生活の中、決死の「研修」「合宿」の日々を選んだ瞬間、私は一度死んだのだ。立ちんぼでも、清掃員でも何でもやって、残る人生、精一杯生きてやる。
足早に、かつて自宅庭にもなる風俗街のアーチを抜けると視界が広げてきた。
お腹が空いてきた。温かい白ご飯とカツ、味噌汁の定食が食べたいな。
定食屋を目指した。
お読みいただきまして、誠にありがとうございました。貴重なお時間を割いてくださったこと、感謝申し上げます。
機械分類上、文字数的には2万も届かぬ「短編」にあたる話ですが「区切り」の概念を持つ話なので、作者意図として当該箇所で区切らせたく連載モノとしました。
参考文献は、ありませんが『殺戮にいたる病』や『19歳 一家四人惨殺犯の告白』が特に琴線に触れた当該作品であること、人物モデルや舞台が出身地等、皆、必ず何処かに、これまでの経験が反映/インスパイアされた「元ネタ」がある「二次創作」で、完全な「一次オリジナル」など存在しない創作ポリシーに則り、感謝の意としてここに二作品明記にて感謝の気持ちと代えさせていただきます。感謝申し上げます。
AIは、誤字・脱字、AI的事前感想(作品のシナリオ調整)として補助的に使用しました。アイディア出し、本文は、私自身の「オリジナル」です。
AI感想(準自己採点)は
ジャンル
・ゴシックミステリー(ボロ部屋なだけで?)
・社会派ミステリー
・ノワール
・アンチミステリー
・イヤミス
・ビルドゥングスロマン
・探偵の推理過程を追い読者と共に解決する様式美に反しているので本格ミステリーではない
・日常の謎は、初期段階の時点で最後は犯人が逮捕される展開なのできつい
・繭美の独立譚
作品精度
・記述に法的、医学的に誤りがある(素人妄想なので当然)
でした。
それでは。




