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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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009 オーレリアとの面会

 警備の面からか、ジャックとバーグの面会は許されないらしい。


「ジゼルといったか? くれぐれも失礼のないようにな?」

「うん」


 どうやらフェイディもここに残るようだ。


「ジゼル、自分のボスになるかもしんねえ奴だ。よく見極めることだなあ」

「がんばってね」

「うん!」


 ジャックとバーグの言葉に頷くと、僕は男に連れられて部屋を出た。そのままお屋敷の奥へと歩いていく。


 すると、そこには恰幅のいい女のニンゲンがいた。


「ありがとうございます。ここからは私が」

「よろしくお願いいたします」


 ここから男ではなく、この女が案内してくれるらしい。


「こちらです」

「うん」


 恰幅のいい女に付いて行くと、一つのドアの前で足を止めた。


 そして、ドアを手の甲で三回叩く女。


 すると、ドアが少しだけ開いて、隙間からこちらを覗く目が見えた。


「お客様をお連れしました」

「ありがとうございます。オーレリア様に確認いたします」


 それに何の役割があるのか、いったん閉じられるドア。


 そしてしばらくすると、今度は大きくドアが開いた。


「許可が出ました。どうぞ」

「うん」


 その部屋は先ほどの部屋よりも豪華に見えた。とはいっても、絨毯や多少の家具がある程度だ。だけど、あるのとなしではだいぶ印象が違う。


 さっきの部屋が言い争いからケンカ、殺し合いになってもかまわない部屋だとするなら、こちらはちゃんとお客さんをもてなす用意がある部屋に見えた。


 部屋の中央に置かれたローテーブル。それを挟むように置かれたソファーも、見てわかるほど先ほど部屋のものよりも質が高い気がする。


 その奥のソファーに、顔の右半分をお面で隠した少女の姿があった。豊かで長い毛先にウェーブのかかった黒髪。見える左半分の顔は整っており、黒い瞳に強い意志が宿っているのが特徴的な少女だ。


「あなたが私に面会を求めたという少女ね。まずは座りなさい」

「はい」


 僕は少女の向かいのソファーに座る。座り心地が全然違うね。柔らかさの中に適度な硬さがあってちょうどいい。


「まずはその顔を見せてもらおうかしら?」


 ジャックたちには無暗に見せないようにって言われてるけど、今回はいいのかな?


 ちょっと迷ったけど、僕は最終的に見せることにした。


 森の中を通ったことで、少し汚れてしまった白い布の頭巾を取った。


「ッ⁉」


 その途端、誰かの息を呑むような音が聞こえてきた。


 そんなにおかしな顔をしていたかな? 崩れてはないはずだけど……?


「……フードを被っていた意味がわかったわ。その顔ではこれまでトラブルが絶えなかったでしょう?」

「え? あ、うん」

「でも、安心なさい。あなたが腐蝕銀鎖に入るのならば、私は全力であなたを守ってあげる」

「うん、ありがとう?」


 よくわからないけど、どうやら乗り切れたっぽい?


 少なくとも、ニンゲンと認識される顔はしていたみたいだ。


「名乗りがまだだったわね。私が腐蝕銀鎖の総長、オーレリアよ」

「ジゼルだよ」

「ジゼル、さっそくだけどあなたの目的は何なの? 地擦りのジャックと、破砕のバーグとの関係は?」

「僕の目的は……安全に、快適に生きること……になるのかな?」


 そう。僕は究極的に言えば、安全に、そして、快適に生きることを求めている。


 少なくとも、ハッテンバロー大要塞の時のような、狭い部屋に瓶詰にされて、治癒魔法だけ使い続けるゴーレムみたいになるのはもう嫌だ。


「些細といえば些細な願いね。でも、このスラムで快適に過ごすのは難しいわよ? ジゼル、あなたはそのために何を差し出せるの? 何ができるの?」


 僕にできること?


 そんなの決まってるよ。


「僕にできることは治癒魔法しかないよ」

「なるほど――――。だんだん話が読めてきたわ」

「すごいね」


 もうわかっちゃったんだ。すごいなぁ。


「たしかに、腐蝕銀鎖は壁の中との仲はよくないわ。いいえ、因縁があると言ってもいいでしょう。だから、腐蝕銀鎖の者が教会の治癒魔法使いを呼ぶことはできない。だからジゼルを、あなたを重宝しろと言っているのね? それで、ジゼル。あなたはどの程度の治癒魔法が使えるの? フェイディには会ったのよね? あなたがフェイディの火傷を治すのに、何年かかるかしら?」

「え? 今からでも治せるよ」

「え?」

「え?」


 たっぷり三回は深呼吸できそうなほどの長い沈黙が訪れた。


 その時だった。


 ガチャリとドアを開く音がやけに大きく響き渡り、時が動き出す。


「オーレリア様、お茶を――――」

「今からでも治せる⁉ そんなバカなことが――――」


 お茶を持ってきてくれたらしい恰幅のいい女のニンゲンの声を遮って、オーレリアが吠えるように叫んだ。


 そんなことをしても事実は変わらないのに。


「できるよ?」

「言ったわね? 嘘だったら覚えてなさいよ⁉」

「できるのに……」


 僕だって伊達に百年以上治癒魔法を使い続けていない。


 たぶん、死んでなければ、どんな怪我でも治せるんじゃないかな?

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