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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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006 所属選択

「たしかに、ジゼルの力はすっげーぜ? だけどよ、すごすぎんだよ。俺の怪我は、壁の中でふんぞり返ってる僧侶が治せなかった怪我だぜ? それをジゼルはいとも簡単に治しちまった。そんな力を教会の連中が欲しがらねえと思うかよお?」

「それは……そうかも」

「だろ? だから、敢えて腐蝕銀鎖だ。あそこはもともと壁の中の連中とは仲が悪いからな。他のマフィアは、壁の中に入り込もうと躍起になってやがる。そんなところにジゼルを連れて行けば、教会に恩を売るために売られるに決まってんだよお」


 壁の中の連中は、スラムの王というべき存在が誕生することを警戒している節がある。腐蝕銀鎖への襲撃作戦だって、壁の中の連中と交渉した帰りを狙われた。


 それに、これは未確認の情報だが、腐蝕銀鎖への襲撃には、壁の中の連中が加勢したって噂もある。


 だとすれば、他のマフィアたちはスラムでは威張り散らしているが、その首根っこは壁の中の連中に押さえられてるかもしれねえ。


「それによ? 腐蝕銀鎖の信条は信賞必罰だ。ジゼルなら、腐蝕銀鎖で活躍のするってのは決まったようなもんだぜ? それを腐蝕銀鎖の連中は無視できねえ」


 それに、腐蝕銀鎖はファミリーと認めた人間にはかなり融通を利かせてくれることでも有名だった。


 これは、腐蝕銀鎖の成り立ちがスラムで生き残るための互助組織だったことに起因する。だからこそ、襲撃事件前にこの南スラムをほぼ手中に収めるだけのデカさになり、他のスラムにも影響力を持っていた。


 襲撃事件の後も、これまでの恩義に報いるために当時まだ成人もしてねえ少女を当主と仰いで一つに固まり、このスラムでしぶとく生き残っている。その在り方に一本の線を感じる奴らだ。


「ジゼルを預けるなら、腐蝕銀鎖しか考えられねえ」


 俺がバーグを見上げると、バーグは俺を見極めようとするような鋭い顔をしていた。


「それはわかったよ。でも、ジャックまで腐蝕銀鎖に入るの? これまでマフィアの抗争には全然興味がなかった地擦りのジャックが?」

「もう地擦りじゃねえがなあ」


 右足で軽くステップを踏むと、バーグの目尻が吊り上がった。


「で、おめえはどうする? 破砕のバーグさんよお?」

「何がそこまでジャックを動かすのさ? 一目惚れって歳でもないでしょ?」

「ジゼルの名をやった。言わば、俺が名付け親なわけだ。俺が人間の親になるとはなあ。理由はこれだけで十分だろ?」


 そう言うと、今度はバーグの目尻が一気に下がって情けない顔になりやがった。


「ジゼルは、あの子はジャックの子じゃない。そのことはわかってるんだよね?」

「当たり前だろ。娘は娘だし、ジゼルはジゼルだ」

「本当に、そのことがわかってるならいいんだけど……」

「わあってるっての。でよお? バーグはどうすんだ? 俺はもう決めたぜ?」

「はあ……。付き合うよ、相棒。今までずっとそうだったろ?」

「感謝するぜ、相棒!」


 俺はジャンプしてバークの大きな肩を組むと、ジゼルに向かいあった。


 ジゼルはそんな俺たちを不思議そうな顔で見ていた。


「決まったぜ、ジゼル! 俺たちでジゼルの希望を叶えるために考えてみたんだが、それには後ろ盾が必要だ。っていうのもだなあ――――」



 ◇



「なるほどね……」


 意外にも饒舌なジャックの話を聞いて、僕はこの場所がけっこう危険な場所だということを初めて知った。


 ジャックの話を信じるなら、少女が一人で生きていくには厳しい場所のようだ。


 そして、安全を手に入れるために、どこかの組織に所属するというのが手っ取り早いらしい。


 ジャックのお勧めは、腐蝕銀鎖というマフィアの組織らしい。


 マフィアというのはよくわからないけど、もともと腐蝕銀鎖はこの南スラムという危険な場所で生き残るための互助組織だったらしい。今もその性質が残っているようだ。


 よくわからないことばかりだけど、ここは一度ジャックの言う通りにしてみようかな。


 僕はスライムだからね。このニンゲンの体も【擬態】というスキルで体を変化させているに過ぎない。顔や背格好を変えて、一からやり直すというのも簡単だ。


 しかし、ジャックの話を聞いて驚いたんだけど、ニンゲンというのは魔族と戦争しながら、同族で抗争するだけの余裕があるらしい。これはますます魔族側から逃げ出して正解だったかもしれない。


 まぁ、ここが前線から離れているのもあるだろうけどさ。


「じゃあ、ジャックの言う通りにしてみるよ」


 そう言うと、ジャックとバーグがなんとも言えないような顔でお互いの顔を見て、その後、僕の顔を見た。


 何だろう?


「……俺が言えたことじゃあねえんだが、本当にいいのか? もしかしたら、俺がジゼルを騙そうとしているのかもしれねえぜえ?」

「本当に騙そうとしている人は、そんなこと言わないんじゃない?」

「そいつはそうかもしれねえが……」


 そんなジャックの肩をポンポンと叩いて、バーグが口を開く。


「まあまあ、がんばってよパパ」

「パパじゃねえ!」

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