023 電撃発表
ウォークインクローゼットの中。
僕はクリーム色のドレスとつばの大きな帽子を被ってポーズを取っていた。
なんでこんなことに?
「まあ! まあ! 素晴らしいですよ、ジゼル様! 少し俯き気味に、こちらに上目遣いをください!」
「こうかな?」
「はうあ⁉ な、なんという破壊力! 神秘的な美しさの中にかわいらしさがプラスされて、もう控えめに言って最高です! ああ! 私はなんて罪深い生き物を作り出してしまったのでしょうか⁉ こ、これが圧倒的な素材の良さ⁉ もしや、オーレリア様すらも⁉」
なんというか、カンナって寡黙なタイプだと思ったら、かなりおしゃべりなタイプみたいだ。
まぁ、僕はあまりおしゃべりは得意な方ではないし、釣り合いが取れていると言えば、取れているのかな?
「そういえば、オーレリアたちはどこにいるの?」
「なんでも重要な会議中だそうですよ? なんでも、腐蝕銀鎖の幹部様たちが久々に勢揃いだとか。これもジゼル様のおかげですね」
「そうなんだ」
それは大事な会議っぽいね。
まぁ、いわば今の腐蝕銀鎖はたくさんの兵隊が復活した感じだし、他の勢力を殴るには絶好のタイミングだろう。
そして、他の勢力と抗争が起きたら、怪我人が出るだろう。
その怪我人を治して、ますます腐蝕銀鎖に恩を売る作戦だ。
抗争が終わる頃には、僕も腐蝕銀鎖の幹部になっていたりしてね。
そんなことを思っていたら、ドアを叩く音が三回飛び込んできた。
「はい!」
それに反応し、カンナが飛び出すようにドアを開けに行く。
そして、少しだけドアを開けると、何事かのやり取りの後、メイドとしての本分を思い出したのか、カンナがしずしず歩いてきた。
「ジゼル様、オーレリア様がお呼びのようです」
「そうなの? じゃあ、行くよ」
「あ! 私がドアを開けますよ!」
「おねがい」
「はうう⁉ な、なんたるかわいさ! こんなものがこの世に存在していいのか⁉ 私が許す! かわいいは正義! この世の中の唯一の正義はかわいいですからね!」
思想が強いなぁ。
そんなカンナにドアを開けてもらうと、ふっくらとした太めのメイドがいた。
「まあ! 見違えました、ジゼル様! もともとお美しい方だとは思っておりましたが、まさかこんなにも……! おっと、私としたことが……。ジゼル様、オーレリア様がお呼びです。こちらへどうぞ」
「うん」
そのふくよかなメイドの後に付いて行くと、今まで入ったことない部屋の前に案内された。
メイドが部屋のドアを三回叩くと、話が通っていたのか、すぐにドアが開かれた。
そこは大きな部屋だった。部屋の奥にはまるで玉座のような場所にオーレリアが座っている。
オーレリアの前には大きな丸いテーブルがあり、そこには八人の姿があった。ジャックとバーグの姿もある。
ジャックは目を見開いてまるで見惚れているような表情をして、バーグは驚きながらもこっちに小さく手を振ってきていた。
他の座っている人たちが、腐蝕銀鎖の幹部たちだろうか? フェイディの姿もあるし、たぶんそうなのだろう。その人たちも驚いたように目を丸くしている。
でも、そこにあるのは好意的な表情のように見えた気がした。少なくとも嫌悪されている様子はない。
ひとまずは安心かも?
「ジゼル!」
声のした方を見れば、オーレリアが椅子から立ち上がって近付いてきた。
「かわいらしいですわ。見違えましたね」
「そう?」
「ええ。ジゼルの魅力がぐーんと上がりましたわ」
「よかったよ」
「さあ、こっちに来て」
「え? うん」
案内されたのは、なんとオーレリアの膝の上だった。
オーレリアって、こんなでも腐蝕銀鎖の一番偉いニンゲンだよね? そんなニンゲンの膝の上にいてもいいのかなぁ?
そういえば、魔王様も膝の上によく子どもドラゴンを乗せてるって話もあったし、もしかしたら、偉い人物は膝の上に何か置くものなのかもしれない。
でも、子どもでもドラゴンを乗せてる魔王様はかっこいいけど、オーレリアはスライムを乗っけていると考えるとちょっと申し訳ないかな。
「みんなも知っているだろうけど、ここで改めて紹介するわ。凄腕の治癒魔法使いであるジゼルよ。私はジゼルの働きに報いるために、私の妹分の地位を与えることにするわ!」
「「「「「おお!」」」」」
僕がオーレリアの妹? どういうこと?
でも、その意味をみんなわかっているのか、オーレリアが宣言すると、まるで感嘆したような声を出していた。
というか、妹の地位って何? 妹って称号? 称号なのかはわからないけど、普通は年下の血縁者に与えられるものじゃないの?
当然だけど、スライムである僕とニンゲンであるオーレリアは、血縁関係にない。
それに、ハッテンバロー大要塞での瓶詰でだいぶ感覚がおかしくなってるけど、僕はたぶん百年以上生きてるスライムだ。オーレリアよりも年上なのである。
さすがに僕がオーレリアの妹になるのには無理があるような……。
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