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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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002 二人の男

「ふぅーん? ここが、ニンゲンの住処ね……」


 朝日が昇ってしばらくすると、僕はニンゲンの街にたどり着いた。


 たどり着いたんだけど……。


「ここのニンゲンは、なんで防壁の中に入らないんだろう?」


 僕の視線の向こうには、高く石が積まれた防壁がある。ニンゲンは魔族と戦争しているからね。防御施設なんていくらあってもいいだろう。


 しかし、現実というのは不思議に満ちている。


 なんと、敢えて壁の中には入らず、壁の外に家と呼ぶのも失礼なくらいの粗末なバラック小屋を造って、そこで生活しているニンゲンが数多くいるのだ。


 彼らはなぜ壁の中に入らないのだろう?


 あれかな? 魔族の夜襲を警戒しているとか?


 でも、そもそも壁の中にいれば、襲われることもないのだけど……。ニンゲンはそんなこともわからないくらいバカなのだろうか?


 なんだかニンゲンの体って思ったより不便だし、僕の中でニンゲンの評価がどんどん下がっていくよ……。


「まあいいや」


 この壁の外で寝ている人を無視して、僕は壁の中に入ろう。その方が安心だしね。


 そんなことを考えながら、僕はバラック小屋の間を歩いていく。バラック小屋の集落は、なんだか嫌な臭いが漂っていた。


 僕の間違いじゃなければ、それは糞尿の悪臭や、死臭と呼ばれるものだ。


 死臭。死体の腐敗臭というより、この場合は怪我を治療せずに放置した臭いだ。散々嗅いできた臭いである。


 魔族のある部族は、怪我を治療することを軟弱者の証として嫌っていたけど、もしかしたらニンゲンもそういう感じなんだろうか?


「うーん……」


 ひょっとしたら、僕の治癒魔法はニンゲンたちにとってはあまり価値がないかも?


 僕といえば、治癒魔法しか取り柄のないスライムだ。戦闘技術なんて持ってない。


 魔族では一部例外はあったけど、治癒魔法は必要とされていた。


 だから、ニンゲンも治癒魔法を必要するだろうと考えていたけど、このままだとその考えが根底から覆るかもしれない。


「どうしよう……?」


 まさか、ニンゲンが治癒魔法に価値を見出さない種族という可能性は、僕の頭の中になかった。


 どうしよう?


 でも、魔族でも治癒魔法を拒否したのは一部の部族だけだったし、もしかしたら、治癒魔法を必要としてくれるニンゲンもいるのかも?


 でも、そのニンゲン部族がどこにいるのかもわからないし、そもそもニンゲンが治癒魔法に重きを置いていないというのも僕の仮説でしかない。


「確かめる必要があるかな?」


 そう呟いた時のことだった。


「おやあ? てめえ、女かあ?」


 声に振り向くと、ニヤニヤと笑みを浮かべたニンゲンの二人組がいた。おそらく、間違いじゃなければ男の個体だ。ガリガリに痩せた個体と、ふっくらと太った大きな個体である。


 二人の男は、何が嬉しいのかニヤニヤしながら近づいてくる。


 この二人から情報を得ることは可能だろうか?


「ちょうどよかった。少し訊きたいことがあるのですが――――」

「おうおう、かわいい声じゃねえか。顔も見せてくれよお」

「お前も物好きだねえ。まだ毛も生揃ってねえような子どもじゃないか」

「バカ、そんなんじゃねえっての!」

「あの、質問が……」


 なんだか言い合いをしている二人に、もう一度質問があることを伝える。


「あん? 何でも答えてやるよ? だから、こっちに来い」

「はい!」


 僕が元気よく返事をすると、一人はさらに笑みを深め、もう一人がやれやれと言わんばかりに頭を振っていた。


 僕は運がいいなぁ。この二人は移動に付き合うだけで何でも教えてくれるらしい。


 情報とは、時に命に、軍の勝敗にも直結するほどの価値を持つ。


 しかも、情報の対価として要求されたことは付いて行くことのみ。


 こんな簡単なことで情報を何でも教えてくれるなんて。なんていい人たちなんだろう!


「あれ?」


 よく見たら、先頭を歩いているニンゲンは、右足を引きずるように歩いていた。とても歩きにくそうだ。


 だからだろう。僕は気が付けば口を開いていた。


「足、怪我してるんですか?」

「あん?」


 先を歩いていたニンゲンが不機嫌そうに振り向いた。


 殴られるかな?


「ああ、ちょっと昔な……」


 しかし、返ってきたのは不機嫌そうなその言葉のみ。殴られることはなかったことに僕は安堵する。今殴られたら、形を保てるか不安だからね。


「だったら僕が治してあげるよ」


 さすがに情報を貰うのに移動するだけでは釣り合わないと思っていたところだ。このくらいの怪我なら僕が治してあげよう。


「あん? この怪我は、この街の僧侶たちにも治せなかった怪我――――」

「治ったよ」


 僕はすぐに治癒魔法を使ったことを男に伝えると、男はまるで僕が悪い冗談を言っているような目で睨みつけてきた。


「だから! この怪我は街の僧侶たちでも……。治ってやがる……?」


 まるで右足の動きを確かめるようにぶんぶん右足を振る男。


 その男を見て、もう一人の男が驚いた。


「なっ⁉ おめえ、もう怪我は治らないって!」

「治ってやがる! それが治ってやがるんだよお!」


 足が治ったことが嬉しいのか、抱き合って喜ぶ二人の男。


 ところで、どこまで行けば情報を教えてくれるんだろう?

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