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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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011 僕の欲しいものと腕の見せどころ

「この腐蝕銀鎖を欲しがるんじゃないの……? 私はてっきり……」


 そう呟いたのはオーレリアだった。


 たしかに、普通のニンゲンだったら欲しがるかもね。


 でも、僕は腐蝕銀鎖の後ろ盾が欲しいだけで、腐蝕銀鎖のトップになるつもりはないんだ。


 トップになると、いろんな組織から狙われそうじゃん?


 実際に暗殺騒ぎもあったみたいだし、そんな危ないのは頼まれたってお断りである。


「ありがとう! 本当に、なんとお礼を言ったらいいのか。ジゼルだったな? 本当にありがとう! これでお嬢様のお役に立てる! ああ、奇跡だ! まさかこんなことが起こるんて!」


 今まで不自由な動きを強制されていたから、その開放感が堪らないのだろう。それとも、失った左腕と左目が復活して嬉しいのかも?


 とにかくフェイディはジャンプするようにソファーから立ち上がると、そのまま自分の体の動きを確かめるようにパンチを放っている。


「素晴らしい! まるで全盛期に戻ったようだ!」


 その顔は、まるで子どものように無垢な笑顔に溢れていた。


 しかし、次の瞬間には、その顔はピリリとした大人の顔になる。


 そして、僕に向かって歩いてきた。


「ジゼル、本当にありがとう。俺は口下手だから、これしか言えないが、本当にありがとう!」


 フェイディは僕の左手を優しく手に取ると、僕の左手の甲に額をくっ付ける。


 その行為にどんな意味があるのか、僕にはよくわからない。


 でも、フェイディが本当に感謝していることが伝わって気がする。


「私からも感謝するわ。フェイディを治してくれて、本当にありがとう。それと、あなたの腕を疑ってしまってごめんなさい」

「いいよ。約束さえ忘れなければね」

「うぐ……。いったい私に何をさせる気なのよ……」


 お礼から一転、がっくりした表情を見せるオーレリア。


 そうだ。


「オーレリアも治そうか? その火傷」

「そんなこともわかるのね……」


 オーレリアが驚いたように布で隠された自身の顔の右側を布の上から触る。


 僕には、その下に隠れている火傷の跡までわかる。


 せっかくだから、オーレリアの火傷も治してあげよう。たぶん、喜んでくれるはずだ。


「でも、少しだけ待ってくれないかしら?」

「え?」


 僕は本当に長い間、魔族の怪我や病気を治してきたけど、治そうとして待ってと言われたことはなかった。


「私は、この傷にかけて誓ったのよ、報復を。必ず、腐蝕銀鎖に牙を剥いたことを後悔させる。その復讐を遂げて、初めて私の傷は役目を終える。その時まで待ってくれないかしら?」


 オーレリアは本気のようだ。


 僕にはその効率的ではない感情はよくわからないけど、オーレリアが治療しないと言うのなら、それでもいいか。


 またオーレリアが治療を頼んできた時にでも治せばいいだろう。


 そう思って僕は頷いた。


「うん」

「ジゼルって意外と覚悟が決まっているのね? もっと驚くか、泣いてしまうかと思ったわ」

「そう?」


 そうした方がいいならそうするけど。


 でも、涙はどうやって作ろう? 今度から体内に水を蓄えておこうかな?


「さて、感動的なとこでわりいが、これでジゼルの必要性はわかってくれただろお? そして、ジゼルが狙われる可能性が非常に高いってことも、なあ。これで俺とバーグが腐蝕銀鎖に入りたいといった理由もわかんだろお? ジゼルを守るには、俺とバーグだけじゃ不足なんだわ。組織の力が必要だ。ま、そのために選ばれたのが、腐蝕銀鎖ってわけだなあ」

「そうね。売り込むなら、私たちのところという選択は正しいと思うわ。でも、まだわからないことがあるのよ」


 オーレリアはジロリとジャックとバーグを交互に見て口を開いた。


「どんな組織にも、もちろん私たち腐蝕銀鎖の勧誘すら断ってきた入らずの地擦りと破砕が、どうして心変わりをしたの? そんなにジゼルが大事なのかしら?」

「おん? 気付いてなかったのか?」


 そう言ってジャックは立ち上がり、そのまま数歩だけ歩いてみせた。


「何?」

「まさか、お前もか⁉」


 オーレリアはわからなかったようだけど、フェイディはわかったらしい。


「そういうこった。俺はもう地擦りじゃねえんだわ」

「え? あ! 足!」


 その言葉にようやくオーレリアも理解したようだ。


「そんなわけでよお、俺はジゼルに借りがあるんだわあ。それによお、ジゼルの名前を付けたのは俺だぜえ? だったらよお、少しはまともな生活をしてほしいってねがうのはそんなに変なことじゃねえだろうがよお? まあ、そういうわけだ。腐蝕銀鎖にジゼルを預けても、あんたらが下手打ったら仕方ねえだろうがよお。だから、ちいと力を貸してやろうってなあ」

「まあ、本人は長々と話してるけど、ジゼルが心配なだけだよ。パパだからね」

「ばっ! おめえ! そんなんじゃねえっての! 話聞いてたかよお?」


 焦ったようにバーグの頭を叩くジャックの顔は少しだけ赤くなっているような気がした。

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