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四話  ユタカと魔王の新たな助っ人

 


「魔王は私だが、倒される謂われはないと思うが」



 スッと前へ出るリズ様。カッコイイです。



「おやおや、これは僥倖。早く魔王を浄化して差し上げなければ」



 瞬間移動のようにリズ様の前に現れるマッシュルーム。

 小さい魔方陣が空中に無数に浮かび、近距離からレーザーが放たれる。

 浄化って言い方してるけど殺そうとしているのは明白だ。

 リズ様は上に避けながら発動源の魔方陣を爪で裂き破壊する。



「抵抗は醜いですよ。魔王に支配された魔界の救済……それが私達からの恵みなのですから受け入れてください」

「何を言っている?」



 魔王に支配された魔界なんて、リズ様が落下する前の話で、もう千年近く昔の情報だよな。

 マッシュルームの言葉にリズ様が怪訝な顔をするのも当然だ。



 魔界にばら撒かれたリズ様の神の力が六百年くらいかけて徐々に再生。

 そして今から三百五十年前に、魔物として作り変わったリズ様が生まれた。

 今住んでいる木の下で目覚めたのが魔物としての最初の記憶だとリズ様は言っていた。

 その時には既に平和で美しい魔界が常識になっていた。



 明らかに天使の情報が時代遅れなのだ。



「ファリーヌ、私は魔物を浄化してくるね!」



 パーマがかった短髪の陽気な男が弓を取り出しながらそう言った。

 見た目の印象はキューピッドに近いが、ギリシャ彫刻の様な肉体美を持っている。



「ええパノヴァ、行ってらっしゃい」



 ファリーヌが見送ると、パノヴァは上空へ向けて弓を構え、即座に矢を放つ。

 分裂して幾千もの矢が地上に降り注ぐ。

 魔物を皆殺しにする気らしい。させてたまるか。



「リズ様お願いします!」

「わかっている」



 俺はリズ様と入れ代わるようにファリーヌの前に出て魔剣を振り下ろす。

 見えない壁のようなもので阻まれたが、バリンと割れた音がしたから効かない訳ではないようで安心した。


 リズ様がその隙に種を取り出し、魔力をこめる。

 一度種に魔力でスイッチが入れば、後は植物自身が命令通り行動する。

 魔力をほとんど使わずに広範囲に対応できるのでリズ様がよく使う手段だ。

 地上に攻撃される前に全ての矢を植物で叩き潰すつもりなのが魔力の流れでわかった。


 しかし予想に反し、ドォンドォンという小さな爆発音が地上に響き渡る。

 何故なら、リズ様の植物に全く動きがなかったからだ。

 俺は驚きに声をあげた。



「なんで!?」

「ふむ。とても面倒だな……どうやら私の植物はこいつらに効かないようだ」



 焦りよりも、呆れを感じる声だった。

 リズ様の植物は基本的に“悪意”や“害意”に反応するようにインプットされている。

 どんな人間も魔物も、多かれ少なかれ悪意を持って攻撃をするので、今までそれを条件に発動しない事はなかった。

 しかし、この天使の攻撃には悪意というものが存在していないらしく、リズ様の対策が不発に終わってしまったのだ。



「悪意のない存在って有り得るんですか!?」

「宇宙人と思えと言っただろう。私も甘く見ていたようだ。見ろ、あれだけの爆発音なのに、木々にはなんのダメージもない」

「わあ、本当ですね」



 火の海を見なくて済んだのはありがたいが、あの派手さで何も起きていないのが逆に気味が悪い。



「当然だろう。魔界を救うのが私達の使命なんだからさ!」



 パノヴァは次々と矢を放っていく。

 どうやら爆発音は森に隠れている魔物に当たった時に起きているらしい。

 魔力探知が出来なくても、しらみ潰しに矢を降らせて無差別に魔物を攻撃しているのだ。


 さすがにあの数の攻撃を俺達で全てどうにかするのはキツイ。

 フランセーズの全範囲の守護は、フランセーズの強靭な精神力があって初めて発揮されるので、神でも易々出来るものではない。



「リズ様、魔物達は大丈夫なんですか!?」

「私の性質に塗り変わる程には神の加護があるのだ、あの程度の攻撃ならそう簡単にはやられまい」



 良かった。だからそんなに落ち着いていたんですね。



「だが、さすがにあぶり出された者を一体一体攻撃されれば無理だ」

「三人を無力化するしかないですね」

「どうにか興味を別に移せればいいのだがな」



 思い込みだろうが善意の行動で動く天使を止めるには、新しい目的を与えるのが最も早いらしい。



「ああ、そうだ。今のユタカなら強力な助っ人を呼べるのだった」



 リズ様が突然何か思い付いたように言う。

 そして急に俺の前に来たかと思うと、溝落ち辺りに手を突き刺した。



「ゲェッ、仲間割れ!?」

「魔王、噂に違わぬ外道のようだ」



 パノヴァがドン引きした声を上げる。

 ずっと腕組して静観していた、癖のあるロンゲの大柄な男も目を見開いている。

 お腹がめちゃくちゃ熱い。久し振りの感覚だ。



「リズ様……突然ですね」

「ふふ、ユタカは私と同じ魔力を共有したのだから、この穴は神界にも繋がっているはずだ」



 リズ様は楽しげに俺のお腹に肩まで入って奥をまさぐっている。

 さすがの天使も三人共動きを止めてこちらの様子を伺っていた。

 そりゃ気になるよな、何が起きるのか俺でもわかってないし。



「よし、捕まえた」



 リズ様がニヤリと悪い顔をした。

 そしてズルンと俺のお腹から何かを引っ張り出す。



「うおおおおおお!?」



 どうやって出てきたんだろうと思うほど、大柄な存在が目に映る。



「イーグル!?」



 リズ様に頭を片手で思いっきり捕まれてめちゃくちゃ痛そうなイーグルが空中に投げ出された。

 体にある目がいくつか涙目になっている。



「いってぇな! 一体何なんだよ!!」



 怒りに咆哮するイーグル。

 ごめん、俺もよくわかってないんだ。



「イーグル様、私の助けを求める声を聞き届け、足を運んでくださり誠にありがとうございます」



 恭しく礼をする胡散臭い笑顔のリズ様を見たイーグルは、盛大に顔を引き攣らせていた。



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