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十一話 勇者ユタカは神になる

 


 勇者でも騎士でもなく神ときましたか。

 ちょっとビックリしたけど、リズ様がやれと言うのなら悪いようにはならないだろう。



「なります!」

「そうか、何も考えてないな」

「はい! でもリズ様が俺と離れる選択肢を出すとは思えないので」



 俺はここにきて自分に自信がついていた。

 リズ様は好きじゃない相手へはちゃんと拒絶する。

 困りつつも本気で拒否られたことがない事実が俺を強気にさせた。


 少し呆気に取られた顔をしていたリズ様だったが、少しずつ笑いに変わっていく。



「くくく……それがわかっているなら良い」



 そう言いつつちゃんと説明してくれた。

 リズ様は全く神に戻る気はないが、地球を完全に放棄はさすがにしたくない。

 俺の世界でもあるし、それならいっそ俺に管理をさせたいという事らしい。



「どうやるんですか?」

「デュラムにあの世界での契約を教えて貰っただろう。神の力を解放しているうちに魔力共有の契約をする」



 契約書と魔力を交わすっていう。

 それって……。



「プロポーズですね!?」



 俺が目を輝かせていると、リズ様の眉間にどんどんしわが寄る。



「今更プロポーズもあるか。私は契約などなくても、お前がイーグルに勝った時点で気持ちは共にあったのだ。既に伴侶だと思っていたのは私だけだったようだな」



 ツンと顔を逸らしているリズ様の唇が少し前に出ている。

 そんな絵に描いたような拗ね方ある!?



「リズ様!」



 俺は多分、今までで一番の身体能力を発揮した。

 瞬時にリズ様に足を掛け、背中を支えつつ、仰向けに床に押し倒す。

 片手でグリをフランセーズに投げ、リズ様が抵抗する前に両手首を押さえ付けた。



「な……!?」



 戦闘でもここまでの動きをしたことがない。リズ様は組み敷かれて初めて状況を理解したみたいだ。



「そんな嬉しい事言われたら我慢できないです」

「ユタ……」



 リズ様の顎を掴んで、顔を近付け、ギリギリ唇が触れないくらいで止める。



「初めて会った時からずっと我慢してたんですよ。俺の愛が足りないと思われるのは心外です」



 リズ様の紫と赤が交互に揺れる瞳がやっぱり綺麗だ。

 そこに俺しか映っていないこの瞬間がとても幸福に感じる。



「こらこらこらこら!」



 デュラムが慌てたように俺をリズ様から引きはがす。

 別に抵抗はしてないけど羽交い締めにされてる。

 フランセーズは急いでリズ様の上体を支え起こしている。



「魔王、大丈夫?」

「あ、ああ……」



 全然大丈夫じゃなかったみたいで、リズ様の顔が見たこともないくらい赤い。

 リズ様と俺の目が合った。



「……ユタカ、人前ではやめろ」

「はい」



 人前じゃないならいいんだ。



「はぁ……とりあえずさっさと契約を終えてしまうぞ」



 そう言ったリズ様の手には羊皮紙みたいな紙がある。

 指先に魔力を集めて、自分の名前を書くだけでいいそうだ。



「魔力を交わす三日三晩の儀式は……」

「お前の腹を通ったり、光の剣が通ったり、完璧過ぎるくらいに交わせている」



 やっぱりそうですよね。

 少しだけ残念に思いながら名前を書く。

 二人とも書き終えると、紙が突然ビー玉くらいの大きさの球になった。

 球は二つあり、俺とリズ様の胸元に取り込まれてしまい、訳がわからなかった。



「これで私の神の力が使える。ユタカの思うように地球を守ってやれ」



 よく見ると俺からも金色の靄が出てる。強そう。



「いっそ、外からは見えなくしちゃいます?」

「なるほどな。確かに強固な守りを張るよりも、狙われない事が最も安全だ」



 神にとって世界は美術品だから隠すってしないらしいけど、俺には関係ない。

 防壁を一応用意はするけど、不可視機能に魔力の大半を使った。

 魔力のない世界の存在には見えるようにしておいたから、衛星写真に地球が写らない、なんてことはないはずだ。

 あとは魔力以外の手段では普通に入れる。ロケットとかUFOとかな。



「これで終わりました」

「うむ、上出来だ」



 良かった。無事に何もかも終わったみたいだ。

 俺は勇者の鎧を学ランに戻し、自分の席に座る。



「疲れました……これからどうするんですか?」

「折角だ、私はしばらく残る」



 そう言ったリズ様は私服になった。美し過ぎる事を除けば完璧に人間である。



「レジィの世界は大丈夫なんですか?」

「レジャンデールは今回の品評会を諦めたそうだ。元は親友である私に優勝すると約束をしていたから頑張っていたらしい。私を忘れてもその気持ちだけは残り続け、評価に執着していたが今はもういいと言っていた。私に直接世界を見せられただけでも十分だと」



 神側の事情も何やら複雑そうだが、問題ないならいいや。



「僕は帰るよ。やるべき事があるからね」

「俺も。自分の世界でやりたい事があるんだ」



 フランセーズとデュラムはあっさりと戻る事になった。



「本当にありがとな。フランセーズ、デュラム」

「別に永遠の別れって訳でもないんだし、地球のお土産期待してる」

「美味い食い物、沢山待ってるぜ」



 口々に言って、二人はグリを連れ、俺のお腹に入っていった。

 今更だけどこの移動手段どうにかならないの。



「さて、私はユタカの家へ行く」

「えぇ!?」

「お前は既に両親に私の事を言っているのだ。この機会に会っておきたい」



 少しずつ目覚める人が増えて賑やかになりだした世界だが、午後の授業とか受けてる場合じゃねぇ!

 俺は全速力で早退届けを職員室に取りに行った。



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