表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/102

五話  春野豊は新たなライバルと遭遇する

 


 よくわからないが光の剣を装備出来た。

 身体能力は上がっているし、前みたいに戦えるかもしれない。



「春野……スゲェ、お前ファンタジーだな」

「多分だけど俺、勇者だわ」



 そう俺が冗談っぽく笑うと、山里はえらくウケていた。

 ファンタジーが過ぎると逆に受け入れちゃうよな、わかる。



『多分じゃないだろ、ユタカ』



 聞き覚えのある声がしてキョロキョロしてしまう。

 山里が俺の腹を凝視している。またここかぁ。なんか光り出してるもんな。

 フランセーズに刺された所が更に温かくなっていて、その範囲も広がっている。



「お前、ヤバいもん産むんじゃないか?」

「多分だけど金髪のイケメンを産む気がする」



 そう言った瞬間、俺の腹から手が生えた。



「うわあああああ!!」

「やっぱり」



 山里の絶叫をよそに、ヌルンとあっさりフランセーズの全身が飛び出してきた。

 華麗に前転からの着地は見事だ。立ち上がる姿も優雅で、俺の腹から出てきたとは思えない。



「ふふ、初めましてユタカの御友人。僕はフランセーズ」

「……本当に金髪のイケメンだ」



 腰が抜けた山里はそう言うだけで精一杯みたいだった。驚かせてスマン。

 フランセーズは魔方陣の描かれた黒い手甲を俺に投げて渡す。



「流石にそのままじゃ目立つだろうって、魔王から」

「魔王様から!!」



 喜び勇んで装備して、いつもの黒騎士スタイルになる。フランセーズも同じく対の装備になった。



「それのが目立たねぇか?」

「俺ってわからなきゃいーんだよ」



 山里の的確なツッコミ。だが、全校生徒に俺がこれから戦うと知られるのは困る。顔が隠れるならこれが一番楽だ。



「都合良く皆の記憶が消えてくれればいいんだけど」



 俺がそう零すと、フランセーズが肩を竦めた。



「魔王が今、神と話し合い中。それが終われば何かしらの対策はされるんじゃないかな。まあ、僕が来たからには死人は一人も出さないから安心しなよ」



 それは助かるな。俺は遠慮なく戦闘に集中出来る訳だ。

 これから魔獣がどう襲って来るのかわからないし、戦闘要員はもう少し欲しい所だけど。



「デュラムは?」

「一緒に来ようとしたけど一人しか通れなかったみたい。後で合流できるんじゃないかな」

「それまで持ちこたえればいいって事だな」



 そう言って闇の魔剣も出現させ、両手に光と闇、それぞれの剣を握った。

 結構カッコ良くキメたつもりだったんだけど、魔剣の刀身がすんごく長くなってるんですけど。物干竿くらいはある。

 そのせいでめちゃくちゃ両手の剣の長さのバランスが悪い。

 後から聞いたが、魔剣は魔力で成長するから、俺の魔力大放出でそうなったらしい。



「春野、それ剣か? 槍投げした方がよくねー?」

「俺もそう思った」



 山里の突っ込みに同意すると、ちょうど良いタイミングで、今度は人面鷲のような魔獣がこちらに向かって飛んで来ていた。

 ほとんど壁がなくなってしまった窓際から離れ、教室の端から助走をつける。

 全身の筋肉を活性化させ、思い切り振りかぶって闇の魔剣を魔獣に向かって投げた。

 パンッという音がして、空中を飛んでいた3メートルありそうな巨体の中央に大きな穴が空いて、そのまま地面へ落下した。



「イエー! お見事!!」

「イエー」



 足腰が復活した山里が駆け寄って来たのでハイタッチをした。

 その後すぐに仕事を終えた魔剣は俺の手元に戻って来て、やっぱり便利だなと思った。

 安堵する暇もなく、フランセーズがすぐに状況を見て俺に指示を出す。



「ユタカ、魔獣の群れが向かって来ているみたいだ。僕は聖剣で全ての生物を守護する。君は魔獣を全て退治してくれ」

「わかった」



 本当に心強いなフランセーズは。

 そうだ、と思い出したようにフランセーズは軽く魔法のレクチャーをしてくれる。今の俺には魔法が使えるらしいのだが、基礎が無いのだ。



「君の場合は魔法を魔法だと思うより、やりたい事をそのまま思い浮かべた方がいいかもしれない」

「やりたいこと……」



 急に言われると結構悩むな。

 攻撃の魔法。実は俺、ゲームも漫画も詳しくないんだよな。たまに雑誌読んだり、話題に乗ってソシャゲした事があるくらいで。



「おい春野! 剣で、斬撃みたいなの飛ばそうぜ! 振りかぶった風圧を刃にして飛ばすイメージでさ」



 バットを素振りするような動きを見せる山里。

 なるほど、刃を飛ばすか。


 闇の魔剣を一旦消して、光の剣を構える。

 空を飛ぶ魔獣が二十体くらいが校庭まで来ていた。

 光の剣を高速でスイングすると、ザンッという音と共に、全ての魔獣が上半身と下半身で真っ二つになった。

 ドサドサと地面に死体がばらまかれる。視覚的に刺激が強いため、そこかしこで悲鳴が上がっている。

 やっぱ皆の記憶に残ると大変なトラウマになってしまうな。



「凄い……あんなにも一瞬で」



 フランセーズが感心している。山里の助言は恐ろしく効果的だった。本人は憎らしい程ドヤ顔になっている。



「おやおや、おかしいですね。この世界の人間は全くの無力だと聞いていたのに、何故勇者の力が発動できているのでしょう」



 その声で、あの斬撃をかわし、ここまで来た存在がいた事を知った。

 空中に立っている人間がいる。いや、角が三本あるから魔獣だ。

 白い肌に、所々、顔や首に紫色に変色した部分がある。

 長い銀の髪を三つ編みにした、小さめの丸眼鏡をかけた神経質そうな顔のおじ様といった風貌だ。



「勇者ユタカを無力なまま嬲り殺しにするより、やはり全力で殺し合う方が楽しいですものね。良しとしましょう」

「あんた、誰?」



 本気で誰だ。俺は全く知らないが、相手は俺を知っているみたいだ。

 その疑問にはフランセーズが答えてくれた。



「こいつは多分、魔王に倒された魔獣の親玉だ」

「ウフフフフ、そうです、私はグリストミルと申します」



 恭しく一礼し、顔を上げると、その表情は歪んでいた。笑いとも、怒りともつかない、口が裂けんばかりに大きく広がる。



「そうなのですよ、あの忌ま忌ましい魔王リスドォルに殺されましてねぇ。しかし私は再生する際にようやく思い出したのですよ、何故無意識に魔王を求めたのかを。奴は本当にどこまでも私を虚仮(こけ)にしてくれる……神であろうと、魔物になろうと、何故この私を否定するのですか!!! 私が、この私が選んでやったというのに!!!!」



 いかれてる。それが俺の素直な感想だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
web拍手 by FC2
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ