094(小暮総理大臣)
俺は焼き鮭、ご飯、味噌汁、サラダをかきこむ。
「伯父さんと和事兄ちゃんは居ないの?」
「それが遠藤力蔵さんの葬儀で大揉めなのよ」
「まさか喪主が血の繋がってない奴だからとか」
「圭市君、知ってたのね。遠藤力は養子でもない、遠藤家とは赤の他人だって」
「本人はまだ知らないようだけど、絶望するだろうな。遠藤財閥のカネと地位以外、何のアドバンテージもない奴だからね」
「何か手助け出来ないかしら」
「和事兄ちゃんに伝えさせるとか。同級生なんだし」
「そうね、それがいいかもしれないわね」
正直、遠藤のバカがどうなろうと知ったことではない。まだ点と点だが、いずれ線で結ばれるだろう。
「頂きました」
「もういいの?」
「腹いっぱいだよ。育ち盛りはもう過ぎた」
ピピピ。俺のウェアラブル端末にメールだ。差出人はミカ……。小暮総理と話が着いたかな?
俺は部屋に戻り、ミカのメール内容を確認する。
【パパが圭市先輩に直接会いたいって。今、地元の飯松市に居るから、私の家まで来て】
俺はすぐに返信する。
【分かった、高級住宅街だな?】
【遠藤力社長宅のはす向かいの白い三階建てです】
俺はフルバーニアンの装備をしてからGTRに乗り、飯松市の高級住宅街へ向かう。
ミカもまだ遠藤の秘密を知らないようだな。
俺は高級住宅街に着くと、さっぱりしていた。総理大臣が居るんだから、物々しいセキュリティポリスとかがいてもおかしくない。小暮総理は東京に戻ったかな?
俺は小暮家の住宅の前にGTRを縦列駐車する。
「圭市先輩!」
俺はディーゼルのバッグを肩に掛けてGTRを降りる。
「ミカ、仕事はどうした?」
「弥生先輩が辞めちゃうって言うから、午前中だけ引き継ぎをしてました」
「そうか、小暮総理はまだ居るか?」
「こっちです、入ってきて下さい」
俺はミカに案内されて、家に入る。中庭には枯山水があった。竹をメーンにした風情のあるものだ。ミカは部屋の前で止まる。執務室だろう。
「パパ、入るよ」
ミカが引き戸を開けると、桜党総裁の小暮総理大臣がデスクに肘を突き、高そうな椅子に座っていた。
「君か。ミカを許嫁にしてる男というのは」




