082(怪しいリング)
俺はヘッドマウントディスプレイを外し、専用スーツからデニム、Tシャツ、白いジャケットに着替える。
俺はふと、右手を見た。怪しい指輪が中指に着いてる。
いざというときは紫色の石を砕け……か。どれくらいの強度なんだろ? デコピンで石を小突いてみる。パキッ。ああ! 割れちゃった!
紫色の煙が部屋に充満する。
「ゲホッ! ゲホッ!」
窓を開けて換気をするが煙を吸ってしまった。なんかヤバそう、眼と呼吸器がヒリヒリする。――痛い! 胸が締め付けられる! 痛い! あのババア、毒を盛りやがったな!?
震える手でウェアラブル端末から救急車を呼ぼうとした時、スーっと体が軽くなる。毒ではない? 一時的なものか。まさか、いざというときって毒霧で対応しろってこと!?
俺はしっかりと換気をしてから、伯父さんの部屋に行き、ドアをノックする。
「伯父さん、入るよ」
「圭市君かい? 入りなさい」
俺は引き戸を開けて伯父さんの部屋に入る。
「圭市君。和事から聞いたよ、探偵事務所は明暗寺でやりなさい」
「本当にいいの? ってかもうシティで会社設立しちゃったけど」
「それでいい。いざとなれば…………ほれっ」
伯父さんは壁に掛かってる薙刀に目を遣る。
「闘うつもり!?」
「あくまでも、いざというときだよ」
「……ありがとう、伯父さん」
「ポーカー大会で大勝したみたいだけど、税金ガッポリ盗られたでしょ?」
「まあね。かなり痛い」
「佳子さんも見付けないとね」
「アメリカには居ない。次は日本津々浦々を探すよ。その次はヨーロッパだ」
「一昔前のように格安航空会社が当たり前で、自由に行き来する事が出来ればいいんだけどね…………」
「伯父さん、どうかした?」
「圭市君、寝てないだろう。時差ボケ? 白目が真っ赤に充血してるよ」
「機内で寝すぎたみたい」
本当は毒霧だけど。
「今日はお経をあげよう」
「遠藤力蔵社長の葬儀は?」
「今週の土曜日だよ。圭市君も行くかい?」
「世話になった人だけど、どうせ愚息が喪主をやるから行かない」




