039(A棟からの男)
飯松ウィステリア工業は俺を正式採用してくれた。ウォーライフのアバターの胸と背中に【飯松ウィステリア工業】とプリントされる。ちょっとダサいけど、戦闘に支障はない。俺のプロフィールを見ると、飯松ウィステリア工業のホームページに繋がるバナーが付いた。会社の宣伝をしないとな。
但し1つ懸念がある。ウォーライフの人気は下がりぎみだ。大幅に改変でもされたら、戦闘力を維持出来るか心配だ。
俺は着替えて、ウキウキしながら、多軸NC旋盤ラインに戻ると、渡辺さんと下平が居た。
「まっつぁん、プロゲーマーになったってホント?」
「ああ、一足先に正式採用だ」
「圭市、凄すぎるよ。探偵事務所は先伸ばしだな」
「ありがとうございます。母は必ず見付けますよ」
すると、見慣れない男性社員が来た。A棟の人かな? 機械のタッチパネルを操作してる。
「圭市、下平、あの人は津野さんだ。元々10年、多軸NC旋盤ラインに居た、大ベテランだよ」
俺はピンと来た。この人の左耳が潰れてる。力士だった? しかし、細身だ。マジの格闘家か?
津野という人は俺達の方へ来る。
「A棟から戻ってきました、津野です。宜しくお願いします」
随分と腰の低い人だ。流石は格闘家。どんな格闘技をしてたんだろう?
「松本圭市です。宜しくお願いします。津野さんは格闘家ですか?」
「ええ、昔ちょっとだけ総合格闘技をかじってました」
「下平明人です。津野さん、凄い人なんですね」
「いえいえ、大したことはありません」
津野さんは謙虚で腰が低い、俺と正反対だ。見習わなきゃな。
「圭市はどうする? 昼休みまで30分てところだ」
「手伝います」
「じゃあ、鋼材と製品箱詰めを頼む。津野さんは下平に基礎を教えてやって下さい」
俺は各機械のレールに材料を並べてから、製品をエアブローしてコンテナに積める。
キンコンカンコン。昼休みになった。俺は外の手洗い場でピンク色の粉石鹸を遣い、手を洗う。
俺は食券を買いに売店へ行くと、おばちゃん店員が居た。
「食券10枚ください」
「10枚ですね、3000円になります。支払いは給料天引き、現金、ウェアラブル端末引き落とし、どれにします?」
「端末でお願いします」
俺はレジ横の読み取り機に右手首をかざす。




