ヒロインNo.2
「なぎちマジカ...」
恋人関係ではなかったものの、あのセンパイと友達になる葉桜さんに、ひなさんは呆気を取られていた。
言っても屋上と校舎裏だから言ってることはギリわかったけど、表情までは上手く読み取れなかったから、多分俺含めてここの三人は苦渋の判断ではないかと思っているところもある。
でも全く、それにしても...
「あのセンパイなんなん?まじで」
俺の思っていることは、ぷんすかしているひなさんが口に出してくれた。
実はあのあと、友達を承諾してもらった彼は連絡先だけ交換して、では!と颯爽と帰っていった。
憎むに憎めないような存在ではあると思うが、彼女と友達になることを言えずにいるであろう男女生徒からすれば、マジでなんやねんあいつ状態である。
少なくとも、友達以上の関係である俺は妬くとかは無いんだけど、何か裏があるのでは?と疑問にも思っている節もあって。
「でもさー、なぎちが認めたのも事実だしぃ」
「それはそなんだけどー」
恐らく親友的な立ち位置にある二人は不満がダダ漏れているようだ。
謎多きセンパイなだけに、掴めないのがとても厄介だ。
「んでさー、この人は誰よ?」
円を作るようにいつの間にかなっていた訳だが、そろそろ聞きたくなった頃合いだったようで、ひなさんは倉科さんを見ながら俺に指を差した。
こちらとしても聞きたいのは山々で、なんか人の盗聴を三人でしていたら馴染んでしまっていた件の状態だったから本当にただただ初対面である俺のことをさっきーと呼ぶところから深く伺いたい所存。
まあ思ってても俺はそんなこと言わないと思うが、倉科さんは少し悩んでこう話し始める。
「彼は...私の、そのー...」
なんだか様子がおかしい。
万歩譲っても「友達です」で済ませればいいんじゃないのかなと聞かれている自分が思い始めている。
よく分からないが、ひなさんは「え、まさか...」みたいな顔してるし、当の倉科さんはなんか耳赤くなってる気がするし...なに?まじで。
そんな静寂が続いて数十秒。
デジャヴを感じさせるかのように階段をドタドタ登る音が聞こえる。
さっきより重くて、...怒ってるような、感じ。
俺がドアの方を向いて「誰か来たかも...」とぼそっと呟くと、二人は「あ、やべ」みたいな顔をする。
俺は誰が何をしにきたのか全く知らないし、千里眼なんて持ち合わせてないので、そこに突っ立っていると...
「さっきー!ほんとごめん!」
「え?」
倉科さんはバッといきなり俺の手をつかみドア裏の死角に駆け出した。
同時にひなさんも何か悪い状況を察知して、俺たちとは逆の方向に向かっていく。
そして丁度俺たちが身をかがめた直後...
「誰かいるのか!」
学年主任の体育科の教師が勢いよくドアを開け怒声を上げた。
ひぃ~、と耳を塞ぐ目の前の倉科さん。なんだろう、すごくかわいい。じゃなくて。
思い返してみれば葉桜さんが承諾したとき三人合わせて大きい声出してたな...
葉桜さんもしくは蒼宮センパイのファンが腹いせかなんかにやったんだろうか、いやそれは偏った思想かもしれない。
とにかく、本来出入り禁止のはずの屋上に人がいればまあそりゃあ先生来ますよね。
それをさっき瞬時に判断した2人は改めて周りが見えてるなと思うし、今目の前でしーっ、と人差し指を立てている彼女には感謝してもしきれない。
多分見つかったら高校生活が...これ以上は辞めておこう。
でも、もしかするとこの人たちは周りが見えてるんじゃなくて人のことをたくさん考えて行動しているのがオモテにでているのではないだろうか。
あの葉桜さんと親友という立ち位置にいるのも過去になにかあったかもわからないし。
そして少し落ち着いたかと思って外に歩き出そうとすると...
(待って!)
(?)
途端に彼女は俺の口を抑えて彼女の横の位置に回し込んだ。
当の俺も何が起きたか一瞬わからず、頭が混乱する。
見上げた上にあった彼女の顔は少し冷や汗をかいていた。
先生がきていたのだろうか...
でも待ってください。
今、俺の口を抑えているこの手は...
やっば。
俺の体温はみるみるうちに上昇する。
手の温度は俺とほぼ変わらない.....?
そして少しずつ力が抜けていくのを感じた。
「...ほんっとうにごめん」
「うん、先生がいたんだよね?」
「え、...うんまぁ、いたかも」
「...」
顔を少しそらし気味に彼女はいう。




