スーパーヒーローな彼
内緒の内緒の秘密なんだけどね。
実は、私の彼氏はスーパーヒーローなんだ、誰にも言えないけどね。
それと、今日は彼とのデートの約束の日なんだ。
ランチを一緒に食べた後に映画を観る約束約束、楽しみだな。
ポロン
スマホの通知音だ。
何だろうとスマホの画面を見ると、ニュース速報だった。
『〇△町のビルで火災。住人が取り残されている模様』
近くだ。
もしかして、彼が? 救出に?
続報が入った。
『謎の覆面スーパーヒーロージェントルマスク、お手柄。住人は彼によって無事に救助された』
そう、彼が名乗ったわけではないのだけど、いつの時からか、そう呼ばれるようになっていた。
でも、良かった。皆、救助されたんだ。
でもでも、仕方ないんだけどね。
デートの時間には間に合わない。
ピロピロ
スマホの着信音が鳴った。
「アヤ、ゴメン。ランチには間に合いそうにない。急な仕事が入ってさ。どうしても断れなかったんだ」
「仕事なら仕方ないわね。じゃあ、ランチはやめて、ディナーでどう?」
「それなら大丈夫だと思う」
「じゃあ、いつもの店は私が予約しておくね。19時でいいわね?」
「ああ、ありがとう。映画はどこかで埋め合わせするからさ」
「期待しておくわ」
「じゃあ、後で」
「今度は遅れないでね」
通話を終えた。
結局、ランチは一人で食べることになった。
ディナーの時間までは、まだまだ時間がある。
そうだ。彼に何かプレゼントをしよう。
彼は、普段は新聞社務めで、何かあった時は、取材があるからと言って、ヒーロー活動をしている。
今まで私以外に正体がバレないのが不思議なんだけど。
彼へのプレゼントを買って、まだ時間があるので、街をブラブラして時間を潰す。
町の電気屋さんの前を通りかかった時に、設置されたテレビにニュースが放送された。
『またまた火災発生、取り残されたのは、住人の飼い猫のミィちゃん』
またかと思った。彼なら多分助けに行くだろう。
だって、彼はスーパーヒーローだから。
そんなことを考えていたら、続報が入った。
『スーパーヒーロージェントルマスク、またまたお手柄。無事に猫ちゃんを救う』
そっか。猫ちゃんは無事に助けられたんだ。良かった。ホッとした。
予約した店で時間を見ると、約束の19時をちょっと過ぎていた。
仕方ないよね。だって、彼はスーパーヒーローだから。
カランコロン
店のドアの鈴が鳴った。
彼だ。
よく見ると、髪は乱れ、顔には煤が薄っすらついている。
きっと急いで飛んで来たのだろう。
「アヤ、遅れてゴメン。それと、洗面所で綺麗にしてくるから、もうちょっと待って」
「うん、大丈夫。気にしないで。お仕事お疲れ様」
「じゃあ、行って来る」
「うん、待ってるから」
彼は洗面所のあるトイレに消えた。
何分経っただろうか。
さっぱりした顔の彼、髪も綺麗に整えられている。
開口一番。
「アヤ、いつも遅れて本当にゴメン。映画もだけど、どこかで埋め合わせするからさ」
「ううん、いいの、いいのよ。だって、ヒーローは遅れて来るものでしょう?」
「えっ!?」
「例えよ、気にしないで」
「そうか?」
「そうよ。それより、お腹ペコペコよ」
「俺もだ」
「いただきましょう」
料理が運ばれて来たので、暫くは二人、料理を楽しんだ。
「そういや、アヤ、君は俺の…」
「知ってるような。知らないような。でも、知ってても誰にも言うつもりはないわ」
「いつかさ、俺のことを話さないといけない日が来ると思うんだ。だから、それまで待ってくれる?」
「勿論よ。ユウタがが話した…」
全てを言う前に止められた。
「俺たち二人の将来についても話さないとな」
「そっかぁ、考えてくれてたんだ」
「当たり前だろう」
「さすが、ヒーロー…口が滑ったわ」
「まあ、それはそれでもいっか」
「どうかしら。ただ、なるべく時間は守ってくれると嬉しいかな」
「だって、ヒーローは遅れてくるものだろう?」
「そうだったわね」
今は二人だけの秘密。
将来にそれがどうなるかはわからないが、お互いを想う気持ちは同じだから。
この関係を大切に大切に育てていこう。
私の愛しいヒーロー。
スーパーヒーローな彼




