表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お弁当温めますか? ~Happy Stories~ ショートショート集  作者: 夢宇希宇


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/41

視線の先の君は今はもう

 大学受験を控えた休み前の高校最後の夏。

 教室の前の席に座る彼女の頭をぼんやりと眺めていた。

 ただ、何となくで、彼女が急に振り返ってびっくりした。


「マツイさん、どうしたの?授業中よ」教壇の教師に注意されて、彼女は困った顔をした。


「いや、あの…何か視線を感じたので」


 俺のせいか? いや、その前に視線に気づくものなのかと、反射的につっ込んでしまった。


「お前はエスパーとか超能力者か!」と。


「ササキ君まで、二人ともいちゃつくなら授業が終わってからにしなさい」


 注意された。


「はい」


「いや、そんなつもりはありません」そう言い返すのが精一杯で、周りからはクスクスと冷やかすような笑い声が聞こえた。


「何だ、お前たち付き合ってるのか? 熱々だな」そう言ったのはタナカで「タナカ君もいい加減にしなさい」


 奴も教師にそう注意されていた。



 それからどれだけ経ったのか、そんなに経っていないのか。

 彼女は地元の大学に進学し、俺は東京の大学に進学し、そのまま東京の企業に就職していたので、もちろんだが彼女との接点はなかった。

 そんな中、ドラマや映画のような奇跡の再会をするとは。それは俺だけではなく、彼女自身も予想していなかったことだ。

 会社の同僚に誘われ、嫌々ながら参加したコンパで、そこに彼女が出席していた。


「お、…お前はマツイか?」


 高校の時より、かなり大人びた彼女だった。


「ササキ? え~偶然だね」


 俺たちを見た同僚は少し驚いた顔をした。

 彼女は転勤で東京に来ることになったらしいのは、後で聞いた。


「何だ? 何々?」

「え~二人とも知り合い?」


 周りからの声が鬱陶しく感じた。

 だが、俺と彼女が二人きりで会うことになったり、下の名前で呼び合う仲になるのには、そんなに時間は必要とはしなかった。


「マキ、次の休みはどうする?」

「どうしようかな。テツヤはどこか行きたいとことかあるの?」


 そんな彼女は今はもう…。

 あの頃の彼女は今はもう…。


「もう、テツヤ。何、耽ってるのよ。私、今料理で手がはなせないから、ユキのおしめを替えてあげて。早くしてね」


 ユキとは俺と彼女の子どもで、昨年に生まれた我が子だ。


「わかってるよ。ねえ? ユキ、ママは恐いね~」

「バカなこと言ってないで急いで」


「はいはい、ユキちゃんはいつも可愛いね~」


 手際よく、ユキのおしめを替えた。

 もう慣れたものである。


「本当にもう」

「なあ、マキ」


「うん? どうしたの?」

「俺たちさ」


「何よ」

「愛してるよ」


「もう、バカね。私も愛してるわ」


 そんな彼女は今はもう…。

 あの頃の彼女は今はもう…。


 母親になり、俺の大切な人になっていた。



視線の先の君は今はもう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ