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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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動かぬ領地、動き出す周囲

「……王都で不穏な動き、か」


機構隊長は、ババア――

世界商品登録機構・総責任者アグライア=ホルンベルグから届いた指示書を読み終え、小さく息を吐いた。


王都では、確かに水面下で何かが蠢いているらしい。

だが――


「こっちは、まだ静かすぎる」


この領地では、目立った動きは何もない。

商人の往来も普段通り。

領民の生活も、むしろ安定し始めている。


「……嵐の前の静けさ、ってやつか?」


そう呟きながら、隊長は地図に視線を落とした。


■ エドラン領の本気


地図の東側。

エドラン領。


「向こうが、本気で取引に動き出したか」


この話は、まだこの領地の領主も、例のちびっ子――メイヤも知らない。

完全に、水面下の話だ。


エドラン領は、早々に動いた。

鉛筆の製造技術を取り入れ、独自生産を開始。

しかも、かなりの利益を出しているという。


「判断が早い……」


王都へのルートは遠回りになる。

だが――


「変な通行税を取らん」


これが大きい。


結果、商隊はこぞってエドラン領経由を選び、現在の主流ルートは、完全にこの領地→エドラン領→王都、だ。


「……強化型荷馬車が効いてるな」


距離は長い。だが、速度と積載量が違う。


旧型荷馬車を短距離で何度も往復するより、

強化型で一気に走った方が、結果として日数が変わらない。


「物流が……変わり始めてる」


しかも――


「エドラン領主は、王族派」


この一点が、何よりも重要だった。


■ 北の問題児・ガリオン領


「……となると」


機構隊長は、北側の領地に指を置いた。


ガリオン領。


「そろそろ、動く頃だろうな」


この領地は、通行税で食っている。

それも、かなり強気の設定だ。


内政?

産業?

改善?


「……ほぼ、してねぇ」


楽して、あぐらをかいて、“通るだけの連中から金を取る”ことで成り立ってきた領地。


だが、今――

人も物も、そこを通らなくなり始めている。


「そりゃ焦るわな」


しかも、ガリオン領主は――


「反王族派」


王都で動き始めた連中と、思想的にも相性がいい。


「……茶々、入れてくるだろ」


通行税の引き上げ。

難癖。

検問強化。

最悪、嫌がらせレベルの小競り合い。


「少しは内政に力を入れろってーの……」


隊長は、苦々しく吐き捨てた。



■ ダメ元の一手


「……さて」


機構隊長は、地図の“ここ”を指で叩いた。


この領地と、ガリオン領が接する領境。


「まだ何も起きてない今なら……」


ダメ元、ではある。


だが――

強化しておいて、損はない。


「領境の警備、少し厚くするか」


あくまで、“警戒訓練”の名目で。

あくまで、“偶発的事態への備え”。


「問題が起きてからじゃ、遅いからな」


ババアの言葉が、脳裏をよぎる。


――不穏分子は、必ず自滅する。


その前段階を、見逃すな。


「……ちびっ子は」


隊長はふっと笑った。


「今頃、休みだの学校だの、遊び道具だの考えてる頃だろ」


本人は気づいていない。

だが――


この領地は、もう“注目される側”になっている。


「守る価値があるってことだ」


機構隊長は指示書を畳み、立ち上がった。


静かな今だからこそ、準備を進める。

嵐は、必ず来る。

ダメ元で近衛隊長連れて、領主とちびっ子に話に行くか。


そしてその時――

どの領地が、生き残るか。


その答えは、もう少しで見えてくる。

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