交渉の扉
三人の男爵は、揃ってセリアの元へ向かっていた。その足取りは重いが――迷いは無い。
その姿を、偶然メイヤが見かける。
「……あれ」
足を止める。三人の空気。
張り詰めた、独特の緊張。
「……ただ事じゃないわね」
小さく呟く。
来たか。直感だった。
やがて三人は、セリアの前に立つ。
誰も、すぐには口を開かない。
その“重さ”を感じ取ったのか――
セリアは、いつも通りの軽さで言った。
「……あら」
小さく肩をすくめる。
「ずいぶん重苦しい雰囲気ね」
一拍。
「まあ――」
視線が三人をなぞる。
「王政から、心が離れつつあるって顔かしら?」
「……その通りだ」
木材の男爵が、静かに答えた。
沈黙だが――もう隠す必要はない。
「我々三名は」
女男爵が一歩前に出る。
「この領地と――」
言葉を選びながらも、はっきりと。
「協定、もしくは同盟を結びたい」
空気が、わずかに変わる。
「……なるほどね」
セリアはあっさりと頷いた。
「まあ、あの王政じゃあね」
軽く息を吐く。
「今だに梨の礫だし」
否定も、驚きも無い。
まるで――最初から分かっていたかのように。
「いいわ」
セリアは微笑む。
「受ける」
即答だった。三人の表情が、わずかに動く。
「ただし」
一拍。
「条件は詰めるわよ」
視線が鋭くなる。
「まずは――」
軽く手を広げる。
「お互いの条件の擦り合わせね」
「……当然だな」
木材の男爵が頷く。
「数日、かかるわ」
セリアは続ける。
「焦る話じゃないもの」
そして、少しだけ笑う。
「のんびり――話しましょう」
その言葉とは裏腹に、ここで始まるのは――一つの時代を動かす交渉だった。




