突然告げられた“郊外実習”
王都での生活は、まさに夢のようだった。
市場に並ぶ珍しい品々。
学園図書館の果てしない蔵書。
王都料理の奥深い味。
そして何より――
「見たことのない世界」が、次から次へと目の前に広がる。
メイヤもリディアも、毎朝起きるたびに胸がふわふわしていた。
そんなある日。
教室の扉が、勢いよく開いた。
「はいはーい!注目ーーっ!」
パンパカパーーーーーン!!
と、自前の効果音をつけながら入室してきたのは、よりによってせれだった。
(この人、こういう時だけテンション高い……)
嫌な予感しかしない二人。
せれは胸を張り、宣言した。
「メイヤ、リディア!あなた達、郊外実習という名目で領地に戻りまーす!!」
「………………え?」
二人の声が完全にそろった。
セレステは指を立て、くるっと回転しながら続ける。
教師は言う
「いやーめでたいねっ!学園長からも承認がおりましたぁ!!安全!健全!教育的観点から見ても問題なしっ!」
「め、めでたくないよ!!」
「まだ見たいところいっぱいあったのに……!」
抗議する姉妹をよそに、セレステは爽やかに笑った。
(あー、これは絶対“めでたくない理由”が裏にあるやつだ……)
と、姉妹は薄々理解していたが、セレステの勢いに押され何も言えない。
セレステは机に手をつき、小声で。
「理由は……まあ“保護”よ。詳しいことは言えないけど、王都は少しばかり騒がしくなるからね」
二人は顔を見合わせる。
やっぱりそうか、と。
——————————
メイヤはほんの少し、肩を落とした。
「人材確保……まだ全然できてないのに……」
それを聞いたセレステは、ポンとメイヤの頭に手を置いた。
「安心しなさい。実習募集をかけるわ。王都の生徒からもね。」
「えっ?」
「費用は全部“学校持ち”。希望者にはみっちり現地訓練をさせるから……何人来るかはわからないけど、かなり有能なのが揃うと思うわよ?」
メイヤの目がぱちぱちと瞬き、やがてゆっくり開いた。
「ほ、本当に……?」
「本当よ。学園にとっても、現地での長期実習は良い経験になるからね」
その言葉を聞いた瞬間――
リディアがポンっと手を叩いた。
「じゃあ、準備しなきゃだね!帰ったら忙しくなるよ、メイヤ!」
メイヤは少しだけ考え、それから大きく、深く、うなずいた。
「……うん!戻ろう。領地が待ってるもんね!」
リディアはくるりと踵を返しながら、にんまり笑った。
「じゃあ決まり!荷物まとめておきなさいよー?出発は急よ!」
そして去り際に、
小さく、しかし確かな声で呟いた。
「――守るためよ。あんた達をね」
誰にも聞こえない声で。




