耐える冬から、遊ぶ冬へ
氷室を覗き込み、メイヤは小さく息を吐いた。
……かなり溜まってきたわね!
天井近くまで積み上げられた雪。
その光景に、自然と脳裏をよぎる。
――警備隊の犠牲の上に、だけど。
もちろん誰も口には出さない。
だが、あの雪を踏み固め、運び、何度も転び、埋まり、
翌日には筋肉痛でうめいていた姿を、メイヤは覚えている。
ありがとう、だよ……ほんとに!
雪まつりは、お母様――セリアの一声で、
一週間の開催が決まった。
当初は「冬を耐える為の時間」だった季節が、
気付けば「冬を楽しむ時間」へと変わっていた。
それは、悪くない変化だとメイヤは思う。
スキーも、最初は恐る恐るだった人達が、
今では普通に滑れるようになってきている。
転んで、笑って、また立ち上がって。
雪まみれになりながらも、皆楽しそうだ。
冬って……こんなだったっけ?と思えるほど!
これまでの冬は、ただ寒さをやり過ごすだけの季節だった。
遊びなど、ほとんど無かった。
けれど今は違う。
他領から来た人々も、雪像を眺め、かまくらに入り、夜の灯りに足を止めていた。
笑い声が、あちこちから聞こえる。
……成功、ね!
メイヤは、少しだけ胸を張った。
この冬は、ただ耐えるだけの冬じゃない。
――ちゃんと、楽しい冬になっている。
メイヤは腕を組み、雪まつり会場を見渡しながら首を傾げた。
他に……冬と言えば?
頭の中で、前世の記憶を引っ張り出す。
スキー、雪像プラスお祭り――
ここまでは、もうやった。
……湖が近ければな〜!
凍った湖面。そこを滑る人影。
スケート、とか……
氷に穴を開けて、糸を垂らす光景も浮かぶ。
ワカサギ釣り……的な物も、面白いと思うんだけど〜!
小さな魚を次々と釣り上げて、その場で揚げたり焼いたりして――
……絶対、受ける!
だが、すぐに現実が顔を出す。
この領都から、湖までは遠い。
輸送、警備、凍結状況の確認。
考えれば考えるほど、課題は多い。
「うーむ……」
思わず声が漏れた。
楽しそうな事ほど、準備と安全確認が必要になる。
それを分かってしまう辺り、自分もすっかり“領地側の人間”だな、とメイヤは苦笑する。
でも……出来ない、とは思わない。
“今すぐ”じゃなくても、“いつか”なら。
春までに調べておこうかな!
そう決めると、メイヤの視線は再び雪まつりの賑わいへと戻った。
冬は、まだ始まったばかりだ。




