試験当日、そして思わぬ異議申し立て
翌朝。
王都の宿で目覚めたメイヤとリディアは、胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
今日はついに――学園試験の日。
「いよいよだね、リディア」
「うん。……でも少しだけ、緊張してきた」
ミュネがふたりの髪を整えながら微笑む。
「お嬢様方は、これまで通りにしていれば大丈夫ですよ。胸を張って行ってらっしゃいませ」
■午前:学科試験
王都学園の大講堂には、地方から来た貴族子女、準貴族、商家出身者、平民などが数百名集められ、緊張の空気が漂う。
内容は――
・読み書き計算
・領地管理の基礎
・税や流通の基本知識
・歴史と地理
・生活安全(武具や火の危険理解)
いわば、貴族として最低限必要な“基礎教養”だ。
メイヤは淡々と解いていく。詰め込みではなく、“領地で実務として使っていた知識”だから迷いがない。
リディアもまた、集中して問題を読み進める。
◆◆◆
■昼食:3人の小さな息抜き
試験帰りに学園外の食堂へ。
ロウガ隊が教えてくれた、学生御用達の庶民的な食堂だ。
「この煮込み……美味しい!」
「パンがふわふわですっ」
「これで銀貨1枚とは、王都は競争が激しいですねぇ」
緊張もほぐれ、2人は笑顔のまま午後へ向かう。
■午後:実技試験
実技といっても派手なものではない。
・模擬木剣を使った基礎体術(模擬戦)
・模擬槍を使った基礎体術(模擬戦)
・弓を使った的撃ち
上記の内、一つ以上必ず選択。複数可。
・基礎体力試験
・簡単な怪我の対処法
・野営の基礎実地
「領地で教わった内容が……こんな所で役立つなんて」
「森での外作業や、シラナリ穀の畑で鍛えられたおかげだね!」
リディアは体術の動きがしなやかで、教師が何度も頷いていた。
◆◆◆
■夜:ほのぼの夕食
試験を終えた2人は、宿の食堂でゆっくり夕食を取った。
「これで終わったんだね……」
「うん、明後日の発表が楽しみだよ!」
「落ち着かない2日間になりそうですけどねぇ……ふふふ」
緊張がほぐれたのか、メイヤは途中でうとうとしてミュネに支えられたりと、穏やかな時間が流れた。
◆◆◆
■三日後:合格発表
再び大講堂に受験者が集められる。
最初に貼り出されたのは――学科試験の得点。
「メイヤ・アルトリウス――満点」
周囲がざわつく。
「満点なんて……何年ぶりだ?」
「いや、“初”じゃなかったか?」
メイヤ本人はぽかんとしていた。
リディアも平均95点という超高得点で名前が載っている。
続いて実技。
リディア――満点。
メイヤ――上位数名に入る高評価。
「お、お姉ちゃん! すごいよ!」
「メイヤこそ!」
2人で手を取り合い、喜び合う。
教師の説明が続く。
「学科・実技とも基準点を大きく上回ったため、両名には“即時卒業資格”が付与される」
会場がどよめいた。
即時卒業資格とは、“入学してすぐにでも卒業扱いになれるほどの能力”がある者に限り与えられる特別称号だ。
しかし、称号授与直後――
「異議申し立てがあります!!」
鋭い男の声が講堂に響いた。
ざわっ……
会場が揺れる。
教師たちがざわつき、学園長が壇上に現れる。
「っ……セレステさん!?」
「なんでここに……!」
あの セレステ が立っていた。
凛とした姿勢で、学園長。
メイヤとリディアは驚愕して固まった。
「異議申し立ての内容は……学園長室で説明する。メイヤ・アルトリウス、リディア・アルトリウス、来なさい」
学園長が静かに告げる。
2人はごくりと息をのみ――
不安に包まれながら、学園長室へ向かうことになった。
その背中を、周囲の受験者たちがざわめきの中で見つめていた。




