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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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世界商品登録の衝撃と、王都到着

エドラン領主への挨拶は、驚くほど順調に進んだ。


「これは……噂の“鉛筆”と“ゴアゴア紙”ですか!?巷で騒いでおったのは知ってましたが、実物を見るのは初めてでしてな!おお……書き味が滑らかだ……!」


領主は目を輝かせ、即座に追加購入を申し出てきた。


商人ロウガも得意満面で腕を組む。


「メイヤ様、評判は上々でっせ! 王都でも間違いなく売れまっせ!」


軽い立ち寄りのつもりが、気づけば歓迎宴まで開かれ、一行は和やかな空気のまま、王都へと向かった。


◆◆◆


一方そのころ――

メイヤたちを見送った領主館は、久しぶりに静かになっていた。


「……さて、この書類を見ながら水田開発を進めるか」


アルトリウスはメイヤが残した大量のメモや設計図を読みあげる。


肥料の最終発酵チェック、田の水流管理、

村ごとの作付け計画……。


それはどれも、これまで領地を苦しめてきた

“金の工面”ではなく――


未来の発展のための“予算配分”。


「ふ……良いものだな、こういう忙しさは」


「領主様、笑顔が増えましたね」


ガルドも思わず微笑む。


だが、その穏やかな空気は――

突然の悲鳴じみた声によって破られた。


「りっ、領主様ぁぁぁ!! 大変でっせぇぇぇ!!」


ロウガ……ではなく、ロウガ商会の代理人の男が真っ青な顔で飛び込んでくる。


「ど、どうした!?」


「しょ、商品登録されました!!鉛筆とゴアゴア紙……それとクロスボウ!!」


「……なに?」


ガルドの眉がぴくりと動く。


それ自体は驚くことではなかった。

申請したのだから当然だ。


問題は――


代理人が震えながら続けた言葉だった。


「で、ですが……注文が……!世界中から……殺到しておりまして……!!在庫は……! 生産は……!!」


「はぁ!?」


アルトリウスが椅子から滑り落ちた。


代理人の説明は続く。


*世界商品登録機構は、大都市ごとに支部を持つ

*“登録完了”の情報は、機構所属の早馬で一斉伝達

*その早馬は国境審査フリーパス・通行税無料なので距離による差はあるが比較的早く情報が広がる

*止められるのは道に立って居る妊婦ぐらいという冗談まである

*その早馬が登録完了を伝えた直後から商人たちが“買わせろ!”と問い合わせ殺到


「こ、このままでは……大商会どころか国規模で、買い付けが押し寄せます……!!」


アルトリウスの顔が紙のように白くなった。


「在庫は!? 生産は!? 我が領はまだ準備が――!」


「領主様、落ち着いてください」


ガルドが静かに一歩前に出る。


その手には――メイヤのメモ束。


「……ありました」


「な、何が!?」


「鉛筆大量生産、ゴアゴア紙大量生産の……“計画書”です」


「そ、そんなものまで用意していたのかあの子は……!」


ガルドは内容を読み上げる。


「水車を使った砕解作業の自動化。紙すき工程の分業化。流れ作業の組み立て場の建築計画……」


アルトリウスは天を仰ぎ、震えた声でつぶやいた。


「……メイヤ……お前は……どこまで先を……」


「領主様。至急、木工師、鍛冶師、職人たちを集めます。私が指揮いたしますので、ご安心を」


ガルドの心強い宣言に、アルトリウスは机に突っ伏した。


「……助かった……心臓が止まるかと思った……」


代理人も涙目でうなずく。


「メイヤ様……あのお方は本当に……救世主や……」


◆◆◆


その頃、当の本人であるメイヤは――


「わぁ! 大きい! これが王都!!?」


「すごい……人がいっぱい……!」


「お嬢様方、離れないでくださいね!」


王都の巨大な城壁を見上げ、無邪気に歓声をあげていた。


商隊の荷馬車が門をくぐる。


石畳に変わり、活気ある商人、行き交う馬車、露店の匂い。


世界が一気に広がった。


メイヤとリディアは目を輝かせる。


これから――

学園試験という、新しい舞台が始まるのだ。


その陰で領主家が大騒ぎしていることなど、

当の2人はまだ知る由もなかった。

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