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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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クロスボウの衝撃と世界商品登録

セレステはクロスボウの試作三号機を眺めながら、ふと深い思索に沈んだ。


(……子供が扱える段階で、この威力。もし、大人用に調整された本格仕様が量産されれば――戦い方そのものが変わるわ)


戦場の常識を覆す危険すらある。


メイヤとリディアは純粋に“試験用の武器”として喜んでいるが、子供の発明にしてはあまりに影響が大きすぎる。


セレステは静かに決断した。


「……アルトリウス様に、早急に報告を。」


彼女は木工師から試作一号機と二号機を回収済みだ。

もちろん木工師には厳重に口止めをしている。


クロスボウが勝手に広まってはいけない。

今はまだ、この領地の手の中にあるべきものだ。


◆◆◆


領主執務室――。


「セレステ、急にどうした?」


アルトリウスが書類から顔を上げると、セレステは無言で机に三つの奇妙な物体を並べた。


「……これは?」


「メイヤ様が作った“クロスボウ”という新型の弓具です。」


「弓……? どう見ても弓には見えんが……」


セレステはクロスボウの仕組みを丁寧に説明する。


引き金。

ストック。

レールを走る矢。

弦を強い力で引き、保持する構造。


そして――

「誰でも簡単に扱える」という恐るべき特徴。


アルトリウスは半信半疑の顔で試作一号機を受け取り、窓の外の木へ向けた。


「こう、引き金を……?」


「はい。お気をつけて。」


――カシュッ!


矢は軽い音を立てて放たれ、庭の大木に突き刺さった。


ドンッ!


「……なっ!?」


アルトリウスの顔が固まる。


「これが……子供用?」


「ええ。大人用にすれば、さらに射程も威力も跳ね上がります。」


アルトリウスはしばらく矢の刺さった木を呆然と見つめた。


弓兵の技量は関係なくなる。

訓練されていなくても、兵士が戦力となる。


戦場の常識を覆す、まさに“兵器”。


(メイヤ……お前は……何を作ってしまったのだ……)


しかし、同時に彼の胸に浮かんだのは、誇らしさでもあった。


まだ六歳の娘が、領地の未来どころか国の在り方すら動かす発明をしたのだ。


セレステが言う。


「アルトリウス様。この武器……放置すればいずれ模倣され、勝手に広まる可能性があります。」


「……それはまずいな。」


「ですので、“世界商品登録機構”で正式に登録すべきかと。」


世界商品登録――

新商品・新技術を国際的に保護するための仕組みだ。


登録すれば、無断での模倣生産は違法となる。

使用許可も領主家がコントロールできる。


アルトリウスは大きくうなずいた。


「……確かに、これは登録が必要だ。すぐ手続きを――」


アルトリウスの表情が突然固まった。


「……いや、待て。待て待て待て……!!」


「どうされました?」


「鉛筆とゴアゴア紙……登録していない……!」


セレステは静かに目を閉じた。


「ですよね。」


「“ですよね”じゃない!!今まで何をしていたんだ私はぁぁぁ!!」


鉛筆とゴアゴア紙はメイヤの功績。

領地の黒字転換の大きな柱。


にもかかわらず――

登録を完全に忘れていたのだ。


「メイヤの功績を守るためにも、速やかに登録を行います。クロスボウ含め、三つまとめて申請しましょう。」


「そ、そうだな……! すぐに書類を用意しろ! ガルド!!」


「はっ!」


執事ガルドが全力で走り去っていく。


アルトリウスは額を押さえ、深く深くため息をついた。


(うう……メイヤの功績を守るどころか、危うく流出させるところだった……)


セレステは肩をすくめて微笑んだ。


「ふふ……しかし、あの子、本当に面白い。あの姉妹、学園に来たら――ふふ、退屈しないわね」


アルトリウスは苦笑した。


「その“ふふ”が怖いのだが……」


こうして、クロスボウ・鉛筆・ゴアゴア紙の三商品は領主家の正式な財産として登録されることになる。


メイヤの発明が、また世界を少し動かした瞬間だった。

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