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【完結】神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~   作者: 川原 源明
第7章 動き出す友の病治療

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第92話 逆子?

 サウススペルン治癒院の中に入り、広いロビーに圧倒されていると、白い服を着たエルフの女性が前方から駆け寄ってきた。エルフの女性には水の子が付いていた。


 彼女もまた錬金科の卒業生なのだろう。


「あっ、イリーナ先生! 至急第1分娩室に来て貰えますか!?」


「ぇ、はい!」


 イリーナはそう返事すると、エルフの女性と共に走り去っていった。


『行ってもたね』


「うん……」


 これからどうすればいいのだろうか……?


 ロビーのベンチに腰掛けてイリーナを待っていると——。


『逆子か』


『そのようですね』


 グレンとアクアが何か話していた。初めて聞く単語が出てきた。逆子って何?


「逆子って?」


『本来赤ちゃんは頭から出てくるんやけど、足から出てくる子のことを言うねん』


『赤ちゃんのほうは首が引っかかり、出産しにくい状態になったりするんですよ』


『様々な要因が重なって、子の方は死ぬ可能性が高いんだ』


「そうなんだ」


 ふと、本来の出口から出るのが難しいなら、お腹を切って出すのはダメなんだろうか?


「ねね、お腹を切って取り出したらダメなの?」


『あかんやろ……』


『そうですね。ダッドマッシュルームにしてもカブリトにしても、子に与える影響が未知数なので使うのはおすすめできませんね』


『まぁ、母体の方が痛みに耐えきるなら有りなんだろうがな……。今回は母体の骨盤も狭くてな……』


「そっか……」


 可能性はありそうなんだけどな……。


「第一分娩室ってどこにあるの?」


『こっちだ』


 グレンが先導してくれたので後についていく。


 分娩室の前にはベンチがあり、旦那と思われるエルフの男性が座っていた。


 男性は落ち着きなく立ち上がってはうろうろし、またベンチに座っては貧乏揺すりしていた。


『子のほうは絶望的だな……』


『そうですね……』


 グレンとアクアの話を聞いていて、何もできない自分がもどかしい。


 切って出口を広げたりすれば良いじゃん、なんて思っていると、分娩室からイリーナと先ほどのエルフの女性が出てきて、男性の元へ寄っていった。


「ノアさん、大変申し上げにくいのですが……」


「子を諦めろってことですか……?」


 男性は何を言われるのか察していたのだろうか?


「はい。このままですと奥様の命にも関わってきます……」


「そんな! やっと出来た子なのに!」


 ガーネットの時にミントとアクアが言っていた。エルフは長寿種だから子どもが出来にくいと。


 他人事だからだろうか?


 奥さんの命は代えがたいし、子どもはまた作れば良いじゃん、なんて思ってしまった。


「ですが……」


「あのっ!」


 助けられる可能性があるのならと思い、思わず話を割ってしまった。


「あ、ラミナさんごめんなさい」


 イリーナは今、私がここに居ることに気づいたようだった。


「あの……、出口が狭いなら広げたり、他の所から出すことは出来ないんですか!?」


『『『『「「「ぇ」」」』』』


 その場に居た人・精霊達が驚いていた。


『やる気なのですか……?』


『下手したら両方とも死んでまうで』


 それでも、両方が助かる可能性があるなら!


『僕はラミナを支持するよ~』


『まぁ、母子共に助かる可能性があるのは、それだけだからな……』


「お願いだ! 妻と子を助けてくれ!」


 エルフの男性がイリーナに詰め寄り、懇願していた。


「ラミナさん、それはお腹を切るって事ですよね……?」


「「ぇ」」


 今度は、二人のエルフが驚いていた。


「はい」


「お母さんの方は既に体力的にも限界が来ています。ダッドマッシュルームを使うと子どもにどのような影響が起きるか分からないので勧められないのです」


「体力ならスタミナポーションでどうにかなりませんか。ダッドマッシュルームにしてもカブリトも精霊達から勧められないと聞いています」


 私はそう言いながら、カバンから3本のスタミナポーションを取り出した。


「そうですか、母親が痛みに耐えきるなら、両者を助けられるって事ですね?」


 イリーナの表情が、今までに見られないくらい真剣だった。


「はい」


「聞いての通りです。彼女なら奥様もお子さんも救える可能性がありますが、奥様のお腹を切ることになります。どうされますか?」


 イリーナが男性に向かって確認をしていた。


「お腹を切る……。妻が良いというなら……。俺は2人とも助かってほしい……」


 男性には先ほどの威勢がなかった。おそらくお腹を切るという選択の重みに気づいたのだろう。


「マリベル、奥様の方にも確認を」


「ぇ、お腹を切って子を取り出す事ですか?」


「えぇ、彼女ならそれくらいの腕前があるのを知っています」


「分かりました。確認してきます!」


 イリーナの横にいたエルフの女性がそう言うと、慌てたように分娩室に戻っていった。


「今はスタミナポーションが近くにないので、1本お借りします。奥様の了解が取れたときに直ぐに動けるようにしてください」


「はい」


 イリーナにスタミナポーションを1本渡した。


「ありがとうございます」


『練習していませんが大丈夫ですか……?』


『せやなぁ、ぶっつけ本番やん』


 二人の言うことは尤もだが、体の構造を精霊たちから教わっていたからか、どうすればいいかがなんとなく分かる。


「サポートお願いね」


『オッケ~』『えぇ』『あぁ』『まかせて~』


 精霊達の返事が返ってくると同時に、先ほど分娩室に入っていったエルフの女性が出てきた。


「先生、奥様の方もお願いしますと……」


「分かりました。ラミナさん、いきましょうか」


「はい」


「お願いします……二人を……」


 イリーナとエルフの女性の後に続いて、分娩室に入った。


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