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第90話 サウススペルンへ

ヴィッシュと共に錬金科の職員室に戻ってきた。


「そういえば、治癒院ってどんな所なんですか?」


 サウススペルンに行く前に疑問に思っていたことをヴィッシュに聞いてみた。


「治癒院は、病気やケガで苦しむ人たちが訪れる場ですね。特に出産前の女性が多く利用されています」


 出産前の女性?


「なんでですか?」


「そうですね、出産時は子どもの成長具合などによって母子共に命を落とすこともありますし、子どもの方が命を落とす確率が結構高いんですよ。特に子どもの五人に一人は命を落としますからね。これでもかなり改善された方なんですよ」


「へぇ……」


 私も運良く生き延びた側なんだろうか。


「帝都にはないんですか?」


「帝都にもありますが、他の都市に比べて利用率が低いですね」


「あれ? そうなんですか?」


「えぇ、帝都では出産に関しては産婆や出来る医師がいますし、対応できる体制が整っていますからね」


 治癒院には医師がいないの?


「治癒院には医師はいないんですか?」


「いるところもありますが、基本的にはいないと思っていただいて結構ですよ」


 医師がいないとなると、誰が病人や怪我人の対応をしているのだろうか?


「え、じゃあ誰がやっているんですか?」


「主に錬金科の卒業生ですね。下手な医師よりもよほど役に立っていると思いますよ」


「へぇ……」


 医師の存在意義とは一体……。


「治癒院での仕事は、主に訪れた患者さんの病気やケガを診断し、適切な薬を処方することです。そして、先ほどお話ししたように、出産の手助けも行っています」


「へぇ……」


 どんな病気やケガで苦しんでいる人がいるのか、実際に見学すればわかるのだろうか?


「そういえば、医師ってどうやってなるんですかね?」


「ん~、主に自称ですね。もちろん一族で代々医師を継いでいる方もいますし、師に認められて名乗る方もいます。ですが、医師を名乗るために明確な条件があるわけではないんです」


「へぇ……」


 自称って……。じゃあ錬金科の卒業生たちはなんと名乗っているんだろう? 薬師?


「卒業生はなんて名乗っているんですか?」


「治癒師や薬師と名乗っている方が多いですね。先ほどお話に出てきた治癒院で働いている方は、みな治癒師と名乗っていますよ」


「なるほど……。なんか医師を名乗る人とぶつかりそうですね……」


「あぁ、それなら昔から衝突していますよ。でも、治癒院の子たちはしっかり結果を出しています。そういう意味では、医師のいない町もけっこう多いんですよ」


 医師より治癒師を頼るようになった結果、医師と名乗る人たちが追い詰められているということだろうか……。


 トラブルに巻き込まれませんように……。


 そんなことを思っていると、職員室の扉が開き、イリーナが入ってきた。


「すいません、お待たせしました」


 あまり待たされた感じはしなかった。


「大丈夫です」


「そっか、それじゃあ行きましょうか」


「はい」


 イリーナと共に、職員室を後にしようとしたとき――。


「行ってらっしゃい。ラミナ君に救える命はたくさんあるはずですよ。その目で見て、感じてきてください」


「え?」


 思わず振り返ってヴィッシュを見た。


「本来は、錬金科の一年時に行うことですが、君は特別です」


 治癒院に行くことが、私にとって何かプラスになるということだろうか?


「戻ってくるのはいつでも構いません。クロエ君と学長には、私から伝えておきます」


「はぁ……」


 なんだか、火の日には帰ってくるつもりでいたけれど、なかなか帰れない状況になるのかもしれない……。


「ささ、馬車の時間がありますよ。行きますよ」


「あっ、はい」


 イリーナに手を引かれるようにして、職員室を後にした。


 その後は何事もなく、船と馬車を乗り継いで、昼前にはサウススペルンへ到着した。


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