第89話 依頼
ライラが気絶した後、イリーナがライラを介抱していた。
「ミント片付けなよ?」
また見られて気絶されても困るので片付けてもらう。
『しゃーないなぁ……』
渋々と言った感じで一本ずつ元の位置に戻していくミントを見ていると、最後は左腕一本でぴょんぴょん飛びながら移動して元の位置に戻していた。
片付け終わった頃にようやくライラが目を覚ました。
「ライラ、大丈夫?」
「あれ? ここは……」
「ライラの家ですよ」
「ん……、夢だったかな……」
「夢?」
「うん、そこら辺にある古くなった義肢が集まって動き回っていたんだよね……」
それは夢じゃないと思いつつ、イリーナの対応を見ていた。
「気のせいじゃないですかね。実際にそんなことが起きたら私たちも見ていますし、ね、ヴィッシュ先生」
「そうですね。疲れているんじゃないですか?」
無かった事にするんだ。
「かなぁ……? 最近そんなに依頼受けてなかったんだけどなぁ……」
「それで、ライラ。ヴィッシュ先生とラミナちゃんからの依頼は聞きました?」
「あっ、うん、聞いたよ。呼吸補助の魔道具がほしいって」
私が義眼を触っているときにでも聞いたのだろうか?
「受けてもらえるんです?」
「イリーナも関わっているの?」
二人のやりとりを見ていると、先生と生徒というよりは同い年の同級生のようなやりとりに思えた。もしかして同級生なのかな?
「ん、私も関わっていると言えば関わっているんですかね?」
「ん? 呼吸ができない人が研究所に来たとか?」
「いえ、違いますよ」
「ラミナちゃんのお友達が魔素硬化症になっているので、その子を助けるためですね」
「魔素硬化症って治せるの?」
「そうですね。その手段が確立してきていますね」
「へぇ、あれってどうすることもできない病気だと思っていたけど」
ライラがそう考えているってことは、魔素硬化症を発症する人はそこそこいるのだろうか?
「えぇ、私もそう思っていたんですけどね。そのために呼吸をサポートする道具が必要なんです」
「そっか、とりあえず、ヴィッシュ先生から子供で片方の肺って聞いているし、ある程度構想はできているから、三日ほど時間をくれれば」
三日くらいでできるんだ。魔道具自体作ったりしたことがないけど、多分早い気がする。
「週明けくらいですかね。分かりました、お願いします」
「まかせてっ。満足できる仕上がりにしてみせるよ」
イリーナとライラの間で話が進んでいく。
「あの、ライラさん……」
「うん?」
「お代とかは……」
「あぁ、いいよ。代わりにどのように使うのか、実際に見せてもらえないかな?」
それくらいで良いのだろうか?
「それでいいなら……あっ、あと大人と同じくらいの大きさの木製の人形を一体作ってもらうことは可能ですか?」
『おっ、ええん?』
ミントの反応が早い。
「うん、それくらいは構わないけど、何に使うの?」
「精霊さんの依り代に?」
ミントのゴーレム用にと思っている。
「そう。使わなくなった義肢使っても良い?」
そこら辺に置かれている物を使うって事だろう。個人的には問題ないと思う。
「うん、それはもちろんです」
「んじゃ、呼吸サポートの道具と一緒に週明けで大丈夫かな?」
「大丈夫です」
『やった!』
ミントがとてもうれしそうにしている。
「あの、代金は……?」
「そうだね~、五千ウルでいいかな?」
相場とかが分からないけど、問題なさそうな金額かな?
「大丈夫です。あと、来週の火の日のお昼くらいには取りに来ます」
「うん、それまでに仕上げておくよ」
「お願いします」
火の日が楽しみだ。
「話がまとまったようですね。ライラ君、研究所の備品の修理をお願いできますか?」
「いつもの感じでいいですか?」
「構いません」
「分かりました。こっちは仕上がり次第持って行きますね」
「えぇ、お願いします」
「それじゃ、私はサウススペルンに行く準備して職員室に向かいますね」
「えぇ、ラミナ君も準備が終わったら職員室に来てください」
何か準備することあったかな? 元々キラベルに行くための準備は済ませてある。
「私のほうは準備できているので準備は大丈夫です」
「それじゃ、私も急いで職員室に向かいますね」
イリーナがそう言うと、直ぐにライラ宅を出て行った。
「そうですか。それでは私と一緒に職員室に向かいましょうか」
「はい」
その後、ライラ宅を後にして錬金科の職員室に向かった。
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