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【完結】神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~   作者: 川原 源明
第6章 平和な学園生活

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第70話 アクアの歌声

 翌日、午前中の授業を終え、昨日と同様にプリムたちがいる場所に向かった。

 昨日と同じ場所に着くと、ロックを除くメンバーが、昨日と同じように座っていた。

「いらっしゃい」

「ミーちゃん、ラミちゃん、いらっしゃい~」

「ん」

 先輩たちと挨拶を交わし、昨日と同じ場所に腰を下ろす。今日もまん丸のリクエストで海鮮丼を食べ始めた。

「海鮮丼、気に入ったの~?」

「ん~、まん丸が今日も食べたいってことで」

「なるなる~。昨日アクアちゃんを見てて思ったんだけど……」

 アクア? なんで?

「アクアがどうしたんですか?」

「あのさ、アクアちゃんって歌、得意だったりするのかな?」

 今まで一緒にいたけど、歌どころか鼻歌すら聞いたことがなかった。でも、どうなんだろう?

『もちろん得意ですよ』

「え、そうなんだ。得意みたいですよ」

「やっぱり~。良かったら、聞かせてもらえたりしないかな?」

 やっぱり? 何か思い当たることでもあったのかな。

『いいですけど、今ですか?』

「良いみたいですけど、今でいいのか?って」

「うん、良かったら聞きたい」

 食堂で歌わせても問題ないだろうか。

「ここで歌わせて大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

 プリムがそう言うのなら、問題ないんだろう。

「じゃあアクア、どうする?」

『いいですよ。魔素、もらいますね』

 そう言ってアクアは、私からごっそりと魔素を吸い取り、可視化した。

「ふふふ、歌うのは久しぶりですね」

「アクアちゃん、いらっしゃい」

「それでは皆様、よろしくお願いします」

 アクアはそう言って、プリムとミアンにぺこりと頭を下げ、ミラとハンゾーのほうにも丁寧にお辞儀した。

 少し発声練習をすると、目を閉じて大きく深呼吸し、ゆっくりと歌い始めた。

「ラ~ラ~ラ~♪」

 その歌は、聞いたことのない言語で始まった。けれど、歌声が響いた瞬間、食堂の空気ががらりと変わった。

 意味は分からない。でも、胸が締めつけられるほどの寂しさや切なさ──帰りたくても帰れない故郷や、会いたくても会えない家族への想いが痛いほど伝わってきて、自然と涙がこぼれた。

『良い歌だよな』

 グレンがぼそりとつぶやいた。

「うん……」

『アクアの歌は、魔素と想いがこもってんねんで』

「そうなんだ……」

 想いは確かに伝わってきた。魔素がこもっているということは、もはや魔法のようなものなんだろうか。

 歌魔法と言われても、きっと信じてしまうくらいに、美しく、心を打つ歌だった。

 そう思いながら聞いていると、第1節が終わり、第2節へと入っていった。今度は雰囲気が一転し、勇気や元気を与えてくれるような明るいメロディへと変わった。

 第1節は、ホームシックになりそうな切ない歌。第2節は、一人でも頑張ろうと思えるような力強い歌だった。

 やがて2節目が終わる。

「ふふふ、ご清聴ありがとうございました」

 アクアはそう言って、全方向に丁寧にお辞儀した。

 その直後、食堂内に大歓声が湧き上がった。

 びっくりして後ろを振り返ると、私たちの机のまわりに、たくさんの人が集まっていた。

「「「「「アンコール! アンコール! アンコール!」」」」」

 食堂のあちこちから、アンコールの声が飛んでいた。

「ふふふ、それではラストの曲ですよ」

 アクアは、こうして大勢の前で歌うことが、まるで天職であるかのように見えた。

「では、皆さんが午後の授業を頑張れるように──」

 そう言って、アクアはまた深く息を吸い込み、再び歌い始めた。

 今度の曲は、ノリノリのアップテンポな楽曲だった。

 アクアの歌声が軽快に跳ねるたび、机を囲んだ誰かがリズムに乗って手拍子を始める。肩を揺らす生徒、足でテンポを刻む子もいる。

 気がつけば、食堂全体がアクアの歌と一体になっていた。

 やがて歌が終わると、またもや大歓声が響き渡った。

「ふふふ、それでは皆さん、良い昼休みを……」

 そう一言残し、アクアは可視化を解いた。

『久々に歌えて楽しかったですが、疲れましたね』

「おつかれさま」

 アクアはぐったりとした様子で、私の左肩にふわりと停まり、そっと目を閉じた。

 小さな気配が一つ、静かに余韻のように残っていた。


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