第65話 火と水の無双
ダンジョンの入り口と思われる場所に到着した。
入り口の両脇の壁には、青白い炎を灯すたいまつが飾られていた。
「ここからは、どこから魔物が襲ってくるか分からないからな」
「どうしようか、ハンゾー前で私後ろかな?」
「いや、自分が後ろだろう」
「じゃあ、私が前かな?」
「そうなるな」
『ラミナが先頭をやればいい』
先頭って……真っ先に襲われるんじゃ?
『安心しろ、俺らが魔物を処理するからな。それにまん丸が道案内する』
グレンがそう言うなら大丈夫なのかな。
「私が先頭を歩きます」
「ぇ?」
「大丈夫なのか?」
「まん丸が道案内してくれるみたいで……」
そのまん丸はまだ寝ているのか、姿が見当たらなかった。
「分かった。とりあえず1層で様子見て難しそうならミラに頼む」
「そうだね……」
許可は出たけど、本当に大丈夫かな?
そう思いながら、私はダンジョンに足を踏み入れた。
中に入ると、周囲の風景は一変し、お城の廊下のような雰囲気に変わっていた。
「なんか……今までとは全然違う空間……」
「そうだよ~、10層ごとに風景が変わるんだよ~」
ミラと話していると、通路の奥で火の手が上がった。
『うっし! 一番槍は俺だ! 先に行くぜ!』
『では、私も行きますね』
そう言うと、グレンとアクアがそれぞれ別方向に飛び去っていった。
「……今の火って……」
「うん……グレンがやった」
「……ねぇ、ハンゾー、もしかして私たち……」
「言うな、自分も同じことを思ったところだ……」
ミントの姿しか見えていなかったが、気づけばまん丸がふわふわと前を飛び始めていた。
「まん丸、そっちに行くの?」
『うん、こっちだよ~』
「こっちみたいです」
まん丸の後を追ってダンジョン内を進んでいくと、赤い光が前方から後方に向かって猛スピードで飛んでいった。
「ん? グレン?」
『ちゃうで、火の子や』
「ぇ? 子を使ってるの?」
『せやで。もうちょいしたら見えてくるで』
「何が……?」
と思った瞬間、何かを察した。
壁には焦げた跡があり、近くには白い粉が散らばっていた。
「これは……精霊が?」
『せやで』
「そうみたいです」
「そうか……この粉は魔石か?」
『せや。魔石の魔素を吸ったから砕けたんや』
ミラとハンゾーの問いに、ミントが答えてくれた。
なるほど……魔物を倒して出た魔石から魔素を吸収して、子を生み出してたってことか。
「そうだって」
「そうか」
さらに進んでいくと、火と水の精霊たちが忙しそうにあちこち飛び回っていた。
「黒焦げの跡、結構あちこちにあるね」
残されたのは砕けた魔石だけ。たぶん水の子たちの仕業だ。
「砕けた魔石しか残っていないな」
「だねぇ~」
ふたりの会話を聞きながら進んでいくと、まん丸が地面に降りて何かをし始めた。
その次の瞬間、まん丸の頭上を矢が飛び出し、壁に刺さって落ちた。
「ねぇラミちゃん、もしかして精霊さん、罠解除もしてる?」
あれが罠だったんだ……と思いながら、
「みたいです」
「ハンゾー……」
「言うな……」
私たちはまん丸の後をついて行くだけだった。
しばらく進むと、下へと続く階段の前に、グレン、アクア、そして二人の子供たちが待っていた。
2人の子達がえらい数になっていた。10とか20じゃなく、水も火もどちらも100くらい居るんじゃないかと思うくらいになっていた。
「おそかったな」
「あっ、グレン君とアクアちゃん!」
「こんばんは。道中は私たちが掃除するので、安心して進んでください」
魔素補給ができるからか、可視化したんだろうなぁ。心なしか、ふたりともいつもより一回り大きくなってる気がした。
「2人ともありがと~」
ミラがいつもの明るい感じで、グレンとアクアにお礼を言っていた。
「気にするな。俺らは俺らで楽しんでるだけやからな」
「ですよ。私たちは好きに遊んでるだけなので。さぁ、急ぎましょう」
精霊たちと一緒に2層に降りると、1層同様、降りた瞬間グレン隊、アクア隊が一斉に散開していった。
「一瞬で行っちゃったね……」
ミラの言うとおり、降りた瞬間にはもう皆が見えない速さで散っていた。
再びまん丸先導のもと進み、10層まで降りてきた。
10層に降りてくる頃には、アクアとグレンは私と同じくらいの身長になってて、周囲の子たちはミント曰く、すべて上位精霊になってるとか……。
「本当に歩いてるだけだね……」
「ペースを上げられるか?」
『いいよ~』
「大丈夫みたいです」
「そうか、なら駆け足で行くか」
『まん丸、魔石落ちていたらそっちがつこうてや』
『ありがと~』
10層を歩いていると、ぽつぽつ魔石が落ちていた。
「魔石が放置されてるね~」
「ラミナ、何かわかるか?」
『アクアとグレンが十分なくらい魔素ため込んでるから、まん丸とうちにってことや』
「あぁ、さっきのやり取りがあったのはそのためか、まん丸とミント用の魔石みたいですね」
「なるなる~」
まん丸が落ちてる魔石に触れた瞬間、魔石が砕け散った。
触れただけで砕けるんだなぁ……なんて思いながら、駆け足でどんどん進んでいった。
進んでいくと、すごく大きな部屋があり、その奥には大きな扉があった。その扉の前で、アクアとグレンが待っていた。
「やっと来たな。進もうぜ」
やる気満々なグレン。
「ボスだな。ホブゴブリンだったか」
「だねぇ」
「では、いくか」
そう言いながらハンゾーが扉を開けると、中で大きな火柱が上がり、次の瞬間には大きな魔石を含むいろいろな物が床に落ちていた。
「さすが精霊さん……」
「出番がないな」
そう言いつつ、皆でボスの部屋に入り、落ちていた魔石はまん丸が吸収し、ボスが持っていた短剣などを拾い集めた。
「そういえば、ラミナがいれば年度末のサバイバル学習は余裕だろうな」
「年度末のサバイバル学習?」
「1年の最後のサバイバル学習はここなんだよ~、10層までの攻略」
「あれ? そうなんですか?」
偶数月の1~2週目にサバイバル学習があるのは知ってたけど、場所までは書かれてなかった気がする。
「2年次以降は、帝国各地のダンジョン10層までの攻略。どこも癖があるんだけどね~」
「へぇ……」
たぶん、精霊さんたちがなんとかしてくれると思ってる……。
というか、この調子ならダンジョン最深部まで潜れるじゃ!?
その後も順調に進んで、途中で攻略中のパーティを追い越しながら、危なげなく60層までやって来た。
このころには、ミントもまん丸も含めて皆、普通の大人の人たちと同じくらいの身長になっていた。
「ボス部屋の手前にあるセーフティエリアまで行くだけだね」
「そうだな」
せわしなく動き回る水と火の子たちをよそに、まん丸のあとについて行くと、大きな扉のある部屋にたどり着いた。
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