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第56話 精霊達の刀生成

 放課後の時間が近づくなり、帝都北部に広がる海岸に向かった。


 早めに来たつもりなのに、ハンゾーがすでに待っていた。


「待たせてすいません」


「いや、いい。午後は見なかったが、どこに行っていたんだ?」


 怒られるのかな?

 フリーって言われているし、大丈夫だよね?


「寮に戻ってポーション作りをしていました」


「そうか。実技にはあまり興味ないのか?」


「あっ、いえ。午前中の授業を見ていて、ハンゾー先輩の動きに興味を持ちました」


「ほぅ、身につけたいのか?」


 教えてもらえる?


「出来たら、教えてもらっても良いですか?」


「かまわないぞ」


 簡単に教えてもらえるとは思っていなかった。


「ありがとうございます!」


「いや、いい。卒業までだが、その間教えよう。それより、刀を頼む」


「あっ、はい」


 まん丸が近くをチェックするように飛んでいた。


『この辺で良いかなー?』


 まん丸はそう言うと、砂浜に竈と、上に筒状の穴が開いたもう一つの竈のようなものを作り、自分自身を砂で包んだ。


「ゴーレム!」


 警戒心MAXで身構えるハンゾーを見て、急いで真実を伝えた。


「違います。精霊さんです」


「それが地の精霊なのか」


 まん丸はこのやりとりをスルーして手作業を続けていた。


 その足元には、黒い砂が集まっていた。


「砂鉄か?」


『そうだよー。このあたりは砂鉄が多く含まれているんだー』


 しばらくすると、黒い砂だったものが真っ赤な液体に変わっていくのがわかった。


「こっちはどうするの?」


『こっちはねー。魂が宿ってるから脇差に作り直すんだー』


「魂?脇差って何?」


「先ほどの刀より、短い刀のことを言うんだが……魂というのは?」


 ハンゾーが説明してくれた。


『ラミナはお婆さんから、物は大事にしなさいって教わってるやろ?』


「うん。物には魂が宿るからって……え? もしかして?」


『えぇ、そのもしかしてです。長く大事にされた物には、お婆さんが言ったように魂が宿るんです』


『うちらはピクシーって呼んどんねん』


「へぇ、見えるようになるの?」


『物によっては見えますけど、どうなんでしょうかねぇ』


 ピクシーってどんな子なのか見てみたいな、なんて思っていると、ハンゾーが声をかけてきた。


「刀に魂が宿っていたのか?」


「そうみたいですよ」


「そうか……神になっていたのか」


「え?」


 突然神とか言われて訳がわからなかった。


『倭国では八百万の神といって、ありとあらゆる物に神様がいると思われてるんや』


 精霊信仰に近い考え方な気がした。


「そうなんだ」


『せやで。だから彼らはな、ご飯を食べるときにも“いただきます”って言うんや』


「いただきます?」


 村でも使っていたけど、理由は詳しく聞いたことないかも。


『そうです。命をいただきますとか、作ってくれた方々に感謝の意を表すんです』


「へぇ」


 そういった意味があったんだ。


 倭国に興味がわいた。ハンゾーの方を見ていると、まん丸が作っている物に興味津々のようでじーっと見ていた。


『グレン、こっち消して〜』


『ほいよ』


 そう言うと、グレンは砂鉄を入れた方の竈の火を消していた。


『アクア〜』


『はいはい、冷やすんですよね』


『うん〜』


 ふと思った。ミントはなにもしてなくない?


「ミントはなにするの?」


『多分やけど、脇差用の鞘とかちゃう?』


「あぁ、なるほど」


『そうだよ〜。柄の方も作っといて〜』


『ほいほい。ラミナ、鞄からエルダートレント出してくれん?』


 鞄からエルダートレントを砂浜に出した。出したエルダートレントは倒木したように砂浜に横たわっていた。


 エルダートレントを見ると、どう見ても何かの木に見えたが、触ってみるとツルツルしていて、とてもじゃないが木の触り心地じゃなかった。


「これ、木じゃないよね?」


『木やで。ただなぁ、魔素硬化症になったもんの末路や』


「魔物もなるの?」


『なるで。こいつは魔素溜まりにおったんや。せやから死んでも魔石化が進んで、全身が魔石化したんや』


「へぇ……」


 人も魔素溜まりにいたら魔石人間ができるのかな?


「で、これをどうするの?」


 そう聞くと、ミントは出したエルダートレントの上に止まった。


『こうするんや』


 そう言うと、ミントは幹の上をただ歩いただけだったが、1.5mほどの湾曲した棒状の物を削り出していた。


「何したの?」


『普通に加工しただけやで』


 普通に?

 どう見ても普通じゃない気がした。


「で、どうするの?」


『ん? うちのお仕事はこれだけや』


「え?」


 先ほど切り出された棒状の物は、途中で真っ二つになっていて、短い方には穴が開いていた。


 そばに置いてある折れた刀が納められていた鞘は黒いのに、ミントが作った鞘は木の色そのままだった。


「これでいいの?」


『ええんちゃう?』


 “ええんちゃう?”って……。


 まん丸の方も、砂鉄で作った鉄の塊をグレンとアクアと共に協力して叩いて伸ばしたり、刃紋をつけたり、研いだりしていた。


 そして最後に、折れた刀に着けていた柄を付け直し、鞘に納めた。


『これでおしまい〜』


 まん丸が一振り目の刀をハンゾーに渡していた。


「おぉ、かたじけない」


 まん丸ゴーレムから刀を受け取ると、ハンゾーはすぐに腰に挿して、抜刀したり納刀したりしていた。


『見事な居合いやな』


『ですね』


 気づけば、ミントの近くでアクアもハンゾーの技を見ていた。


「抜いた瞬間が分からなかった……」


『それが居合いという技なんですよ』


『アクア〜、まだ終わってないよ〜』


『はいはい〜』


 ミントの近くに居たアクアが、まん丸達の元に戻っていった。


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