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【完結】神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~   作者: 川原 源明
第5章 火の大精霊を求めて

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第49話 キラベルへ

 翌朝――。


 目を覚ますと、見慣れない土色の天井が視界に飛び込んできた。


「あれ……? ここって……」


 寝ぼけた頭で周囲を見渡していると、声がかかる。


『お、起きたか。おっす』


 グレンの軽い挨拶に、昨夜の記憶が蘇る。――そうだ、ここはキラベル丘陵。まん丸が作ってくれた臨時の小屋で一晩を過ごしたのだった。


『ラミナ、おはよ~』


『おはようございます』


『おはよん~』


「みんな、おはよ~」


 四人の精霊たちからそれぞれ挨拶が返ってきて、自然と笑みがこぼれる。


『今日はどうするん~?』


 ミントがふわふわと浮かびながら問いかけてくる。


『ラミナ、冒険者登録してないのか?』


「うん、まだやってないかな」


『ならやっとくと良い、さっきのオーク1人で解体するのはきついだろ?冒険者登録しておけばギルドに解体依頼できるぞ』


『そうですね。今後も私たちと一緒に狩ることが増えるなら、ギルドに依頼した方が負担も減るでしょう』


 たしかに……昨日の解体は正直かなり疲れた。あれをあと二体やるのはちょっと無理がある。


『ラミナ~、お金に余裕あるなら靴も買い替えたら~? けっこうボロボロだよ~?』


 まん丸に言われて足元を見ると、靴の底がかなりすり減っていた。厚みがなくなり、擦り切れているのがよく分かる。


『そりゃあれだけ走ればそうなりますよね』


『せやな、もうちょっと丈夫なもんを買えば?』


『どんだけ走ったんだ……?』


「帝都を出てから麓の村まで」


『なるほどな。安もんなら、それくらいで限界くるさ』


 うーん……。村を出るとき、おばあちゃんが買ってくれた靴だけど、あの時は結構高かったと思うんだけどな……。


「そっか。じゃあ、キラベルで靴を買って、冒険者登録して、それから帝都に戻って解体依頼を出す、って流れでいいかな?」


『それでええと思うで』


 予定がまとまり、私は立ち上がって軽く伸びをした。


「よし、それじゃあ、キラベルに行こうか」


『ここ、出たら潰しちゃうね~』


「えっ、いいの?」


『オークの拠点になったら町の人に迷惑かけるやろ?』


「なるほど……」


 あらためて外を見れば、確かにここからキラベルの町がよく見える。精霊たちの配慮には本当に頭が下がる。


 私はカバンに入れられる物をすべてしまい、小屋を後にした。


 小屋を出た瞬間、形を保っていた力がふっと抜け、建物は「ぐしゃっ」と潰れて土の山に戻った。


 ――まるで幻のようだった。


「よし、じゃあキラベルに行こ~」


『あぁ』


『いこ~』


『はい』


『せやな~』


 私は、朝靄に包まれた丘の斜面をゆっくりと下り、キラベルの町へと向かった。


 近づくにつれ、キラベルの町を囲む城壁が思った以上に高くそびえているのが分かった。


「城壁……高くない?」


 思わず漏らした私の声に、すぐアクアが応じた。


『ここは常にオークに襲われる危険と隣り合わせですからね』


「そんなに頻繁に襲われてるの?」


 驚いて尋ねると、今度はミントが補足する。


『せやで。近くにオークの集落があるからなぁ。あいつらも食べもん目当てに人を襲うんや』


「そうなんだ……」


 常に戦いの気配が漂う町。そんなところに、これから入っていくのかと思うと少し緊張した。


「……オークを根絶やしにすることってできないの?」


 ふと浮かんだ疑問を口にすると、アクアが首を横に振った。


『それは不可能に近いですね。集落の数は一つではありません。十や二十どころではない規模で存在しています。そして、オークは繁殖力が非常に高いんです』


 さらに、グレンも言葉をつなぐ。


『そういうことだ。帝国の騎士団を全てぶつけたとしても、全滅させるのは無理なんだよ』


「……そんなに手強いんだ」


 私は呟いた。思い出すのは、6月に予定されているサバイバル学習。


「もしかして、あのサバイバル学習って……」


『せや、オーク討伐や!』


 ミントが即答する。その言葉に少し身が引き締まった。


「あれ? リタの時って、オーク殲滅したんじゃなかったの?」


 リタと精霊たちがいれば、全て灰に変えてしまいそうな印象だったけど……。


『したんだよ~。でもね~、オークが生息しているのはここだけじゃないんだ~』


 まん丸が少し申し訳なさそうに言う。


「殲滅しても、また別のところから来るってこと?」


『そう言う事だ、キラベル火山とその周辺は魔素が濃いんだよ、だから空白が出来れば魔族や魔物が寄って来るってわけだ』


 そうか。火山だからグレンがいたわけじゃなく、地脈の影響があったからなんだ。


「スペルン平原の魔物たちも、遺跡の魔素が目当てだったの?」


『そうだよ~。あそこら辺は、ボクの子どもたちが時々掃除してたんだよ~』


「へぇ……」


 そんな会話を交わしながら歩いているうちに、キラベルの町の入口が見えてきた。入口には、槍を構えた兵士が二人、警備についていた。


「ん? 嬢ちゃん、丘の方から来たけど……もしかして、小屋を建ててた子かい?」


 ひとりの兵士が声をかけてきた。


「あっ、そうです」


「その歳で小屋を建てられるとは……地魔法の使い手か」


 どう答えるべきか迷ってしまい、少し言葉を濁す。


「えっと、まあ……そんな感じです」


「そうか。じゃあ、身分を証明するものを見せてもらってもいいかい?」


「はい」


 私はマジックバッグから学生証を取り出し、彼に手渡した。


「へぇ~、アカデミーの一年生か。しかもSクラスとは……」


「丘の上に小屋を建てたのって、ダメだったりしましたか?」


 少し不安になって聞いてみると、兵士は笑って首を振った。


「いや、構わないさ。オーク討伐に向かう冒険者が、あの辺りにテントを張ったり、小屋を建てることは珍しくないんだよ」


「町がすぐ近くにあるのに?」


「ああ、丘の頂上に向かう手間を考えるとね。戦闘後にすぐ引ける位置だから、あそこを野営地にするのさ」


 なるほど。撤退も視野に入れた位置取りということか。確かに合理的だ。


「そうなんですね。ありがとうございます」


「うん、問題ない。通っていいよ」


 学生証を返され、私は深く頭を下げた。


「ありがとうございました」


 そのまま門をくぐると、そこにはハーヴァーとそう変わらない、素朴で穏やかな町並みが広がっていた。


「面白い」「続きが気になる」「応援する!」と思っていただけたら、


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