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神様と呼ばれた精霊医 ~その癒しは奇跡か、祝福か~ 【原作完結済】  作者: 川原 源明
第5章 火の大精霊を求めて

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第46話 精霊達が知る歴史

 森を抜けて平原地帯へ出たとき、ふと不思議なことに気がついた。


 ――そういえば、ミントやアクアは「自分の子どもたちがいる場所なら、状況がわかる」って言ってたっけ。


 でも、火の精霊って普段あまり見かけない。なのに、どうしてグレンはオークの位置がわかったんだろう?


「ねえ、グレン」


『ん? なんだ?』


「オークの場所、どうやってわかったの? 火の精霊って、あまり見かけないから……」


『ああ、そのことか。オークは火を使うんだよ。だから火の精霊たちが、奴らの気配を教えてくれるってわけさ』


 ――オークも火を使うんだ。ってことは、魔法も使えるってこと……?


「オークって、魔法も使えるの?」


『使えるぞ。それに魔法だけじゃない。スキルも持ってる』


「えっ、スキルって……人だけじゃなくて?」


『ああ。スキルを授かるのは人種だけってわけじゃねぇ。魔物も魔族も、条件さえ満たせばもらえる。もっとも、大半の魔物は“種族スキル”ばかりだがな。魔族になると、人と変わらんスキルも手に入る』


「えぇ……じゃあ、オークって結構手強い相手なの?」


『はっ、そんなことも知らんのか。魔族は頭が回る分、厄介なんだよ。手強いに決まってる』


 ……知らなかった。


「ねぇ、そもそも魔族と魔物って、何が違うの?」


『お、そこに疑問を持つか。簡単に言えば、人型の魔物――オークやゴブリンなんかを“魔族”って呼ぶんだ』


「そうなんだ……初めて知ったかも」


『おいおい、リタのカバン持ってたってことは、アカデミーに通ってんじゃねぇのか?』


「うん。今年から入学したばかり」


『じゃあ、知らなくても仕方ねぇか。そのうち授業で教わるだろうよ』


「うん」


『そういやアクアたちから聞いてるかわからんが、“人種”と“魔族”の違い、ちゃんと知ってるか?』


「えっと……言葉が通じるかどうか、とか?」


『まあ、それもひとつだがな。実は、身体の構造も脳の構造も、ほとんど同じなんだ。唯一の違い――それは、“魔石を生まれつき持っているかどうか”だ』


「魔石……? それだけ?」


『それだけさ。逆に言えば、それ以外に違いはないってこった』


「へぇ、何か理由があるの?」


『ああ。まん丸が一緒ってことは、スペルン遺跡には行ったんだろ?』


「うん、行ったよ」


『あのスペルン王朝ができるより前の話だが――昔はな、魔物なんてものはいなかった。ただの動物だけだったんだよ』


「えっ、ほんとに?」


『ああ。でもな、その頃の世界は人間同士の争いが絶えなかった。そんな世の中に、怒りと憎しみを募らせた者たちがいてな……そこで創造神メネシスが考えたんだ。“人同士の争いをなくすには、共通の敵を作ればいい”ってな。――そうして生まれたのが、魔物と魔族だ』


「……そんな理由だったんだ」


『そして同じ時期に“魔素”がこの世界に発生した。それがきっかけで、スキルだけじゃなく、誰もが“魔法”も扱えるようになったんだ。――俺たち精霊が、こうして姿を持つようになったのもその頃だな』


「え……昔は精霊にも“姿”がなかったの?」


『ああ、ただの存在だった。それが“見える形”になったのは、魔素の誕生以降の話やな』


『せやなぁ……。魔物と魔族が現れたことで、争いはかなり減ったのも確かやけど……今でも完全になくなったわけやないしなぁ』


『だな。魔族は魔族で縄張り争いをするし、人種も人種で争い続けてる。昔と変わっちゃいねぇよ』


『……せやな』


「……そっか」 


 ……精霊たちは優しいけど、本当のところはどう思ってるんだろう。


 少し怖くなった。


 もしかして、欲深くて醜い生き物……とか、思ってたりして。


『おっ、捕らえたみたいやで』


『まあ、この辺りなら見晴らしもいいし、この場所でええやろ』


 ミントとグレンが言うとおり、周囲を見渡せば、ここは丘の頂上付近だった。高台だけあって、見晴らしも風通しもよく、確かに何かをするにはちょうどいい場所だ。


 ふと視線を遠くに向けると、アクアとまん丸の淡い光が森の縁からこちらへと近づいてきているのが見えた。そしてそのすぐそばには、氷漬けになったオークが三体――。

 ゆっくりと、しかし確実に、こちらへ滑るように移動してきている。


「え……? なんで登ってくるの? 今ここ、坂の上だよね?」


 どう見ても、私は丘の頂上付近にいる。なのに氷漬けのオークたちが、まるで斜面を逆らうように、するすると上ってきていた。


『まん丸が地面を操作してるんやろな』


「え、そういうこと!? ……でも魔素は大丈夫なのかな?」


『平気だろ。ラミナが分け与えてるんじゃねぇのか?』


「……それって、わかるの?」


『そのくらいはな。アクアに至っては、魔素の上限ギリギリまで詰め込んでるし。ま、水属性ってのもあって、ラミナの魔素とは相性がいいってのもあるけどな。ミントもまん丸も、それに近い量を蓄えてるからな』

「そんなに溜め込んでるの……!?」


 正直、そこまでとは思っていなかった。私は彼らに供給してるだけで、具体的な量なんて気にしたこともなかった。


『せやで。うちなんか、一回貰えれば、残りがほとんど無くてもMAXまで一気に回復できるからな』


「……じゃあ、上限超えた分って、どうしてるの?」


『その分は、下位とか中位の子を新しく生み出すんや』


「えっ……精霊って、そんなふうに量産できるの?」


 完全に予想外の展開だった。まん丸の魔素に余裕があるなら、別に問題ないとは思うけど……なんとなく量産って響きに引っかかりを覚えた。


「……で、ここで解体するのかな?」


『たぶん、そうやろ? そのまま肉を焼いてやろうか?』


「……終わったらお願いしてもいい?」


『任せとけ』


 軽く請け負ってくれるグレンの声に、私は小さく笑みを浮かべた。


 そうして、アクアとまん丸――そして実験体でもあり食材でもあるオークたちが、こちらに到着するのを静かに待った。


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