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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第十七章 帝国崩壊の序曲

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日誌 第二百十六日目

ついさっき報告書と一緒に用意された写真を見て僕はため息を吐き出した。

「まいったね…こりゃ…」

報告書と写真は、帝国の重要拠点の一つである港町ミストーリア近辺を警戒している潜水艦伊-21から送られてきたものだ。

もっとも、途中潜水母艦などを経由して送られたから二、三日は経っていると思う。

しかし、それでも重要な情報には変わりはない。

僕の様子に、心配そうな顔をした新見中将が聞いてくる。

「どうされたんですか?」

僕は今読み終えたばかりの報告書と写真を新見中将に手渡した。

新見中将の横に座っていた山本大将も少し身体を傾けると覗き込む。

そして段々と読み進めていくうちに新見中将がため息を吐き出した。

「なんですか…これは…」

一緒に見ていた山本大将は、珍しく何も言わず考え込んでいる様子だ。

「恐らくだが、その最初の写真の艦艇は、ドイッチュラント級装甲艦、次がアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦、後はZ級駆逐艦だと思う」

僕はそう答えつつ、制作室に積んである模型を思い出していた。

そのうちに作ろうと思って以前買い込んでいたやつだし、それにあわせて資料なんかも買いこんでいたから間違いないだろう。

それに新型の写真機で撮られた写真は、以前のものに比べてかなり性能が上がっているらしく、高高度での撮影でもかなり細かなところまで見える。

「こういったことに関しては我々はよくわかりませんし長官が言われるのなら間違いないのでしょうな…」

新見中将が報告書と写真を山本大将に渡しながら言う。

「まぁ、間違っていないとは思うけど、製造部門にも写真を回して予想スペックを算出しておいてくれ。それとこっちからもある程度のスペックを調べて提出しておく」

「はい。わかりました」

そう言って新見中将は頷いた後、ちらりと写真を見て言葉を続けた。

「しかし、ここまで性能が上がっているとは思いもしませんでしたな」

「ああ。僕も驚いているよ」

そう答えつつ、僕も写真の方に目を向けた。

写真だけではない。

先の戦いのあと、電探を初め、通信情報関係の強化の為、技術の統合と最適化を行ったのだ。

その理由としては、日本海軍本来のものよりも通信や情報関係の技術は、アメリカやイギリスの技術の方が高い為だ。

僕がアメリカの軍艦やイギリスの軍艦を模型を使って実物化させた恩恵で、今のマシナガ地区の工業技術は以前の日本の技術だけの状態から、それにプラスしてアメリカ、イギリスなどの技術などを取り込むことに成功している。

その結果、形状的には日本帝国海軍の使っている日本式の装備ではあるが、日本帝国海軍が諸外国に比べて弱い分野もより高性能な機材を製作し運用する事が可能となった。

また、写真や電探、通信だけではなく、エンジンなどの機関に関しても向上が認められている。

実際に航空隊の稼働率が上がったし、整備環境も向上したという話も来ている。

恐らくだが、同時期のアメリカやイギリスの使っていたものよりも若干ではあるが性能は高いと思う。

まぁ、各国のいいとこ取りみたいなもんだからなぁ…、今のフソウ連合の技術体系って…。

だが、そんなアドバンテージがあったとしても油断は出来ない。

それは帝国だ。

現にわずかな期間で、装甲艦、重巡洋艦、駆逐艦が十隻戦力化されている。

どういう原理か知らないが、恐らく普通のやり方ではないだろう。

もしかしたら、僕に近い存在がいるのかもしれない。

その辺は、情報不足のためはっきりとしたことはいえないが、十分に気を付けなければならないな…。

だが、前回の戦いでわかった事もある。

その大きな違いは、フソウ連合と違い、帝国は技術を取り込んでいる感じは受けないことだ。

あくまでも、その艦艇という現物のみ存在するといった感じしかしない。

もし、フソウ連合と似たように作り出すことで技術を取り込んでいるのなら、前の戦いとの時に電探などの装備をうまく活用しただろう。

しかし、それはなかった。

報告書を見る限りでは、あくまでも動かして攻撃できるといった感じであったし、本来の性能を出し切っておらずにその上ダメージコントロールもお粗末な様子だった。

つまり使いこなせていない感が強かったのだ。

その点だけは、助かったと思う。

やはり、兵器の性能というのは使う人によってその差が大きくもなるし、小さくもなるということだから…。

だが、問題点もある。

この調子で、どんどん増産されて数で圧倒されるとかなり苦しくなるのは事実だ。

性能差も数の前ではどうしようもない時があるからなぁ。

やはりもっと情報を集めなければならないか…。

僕がそんな事を思っていると、山本大将が目を再度通したであろう報告書をおいて聞いてくる。

「長官、やはりこいつらは、我々の使用する艦艇と性能的には互角と思ったほうがいいですかな?」

やはり実働隊を率いるものとしては気になったのだろう。

それに、相手をしっかりと知る事は、勝利には必要不可欠な部分でもあるからだ。

「まぁ、詳しいスペックは僕の持ってるデータと製造部門の予想スペックとの検討で出されるが、まぁ、間違いなく同程度だと考えていた方がいいだろうね」

「なるほど…。それとこちらの今後の新造艦の予定と修理の方は今のところ変更はないいのですな?」

「ああ。今月中には、修理艦艇はゼロになる予定だ」

「改修の方は?」

実は、技術統合と最適化にあわせて修理中の艦艇を中心に、艦艇の全体的な性能向上の改修が行われている。

もっとも、情報関係の電探や通信機器の性能向上がメインとなっているため、大規模な改修ではないが、それでもある程度の時間はかかる。

「修理とあわせてやっているから恐らく同じくらいの時期になると思う。後、新造艦だが、当面は支援艦艇と外洋艦隊の物が中心になる」

「了解しました」

山本大将はそう言って黙り込むと腕を組み考え込む。

恐らく、艦隊編成や艦艇運用の事を考えているのだろう。

多分、二、三日後には提案書か報告書が届く事だろうな。

実に頼もしい限りだ。

そして、山本大将が黙り込むと新見中将がこっちを伺うように聞いてくる。

「この情報、王国には伝えるのですか?」

その言葉に僕は頷く。

「恐らく、この戦力と対峙するのは、僕らよりも王国だろうからね。もちろん伝えるさ。ある程度のスペックを記載してね」

「しかし…あまりにも簡単に渡すのは…」

心配そうな顔の新見中将に、僕は安心させるように笑って言う。

「もちろん、無料じゃないさ。帝国の情報をより引き出したいから、それと交換といったところかな。あと、共和国にもそれらしく匂わせて、欲しがったら帝国の情報との交換を持ちかけるつもりだよ。恐らく、王国よりも深い情報を持っているはずだからね」

僕の言葉に、少しほっとした表情を見せる新見中将。

まぁ、彼から見たら、今までの行動やら何やらを鑑みれば甘ちゃんだと思われても仕方ないのかもしれないが、僕だってやるときはやるってところを見せておく必要がある。

「そうですか。それなら納得しました」

新見中将はそう言って頷いたが、その後に続けた僕の言葉に驚きの表情になる。

「あと、この情報、帝国海軍にも渡してもいいと思っているよ。確か近々帝国海軍の使者と会う予定だからね」

慌てて何か言おうとする新見中将。

それとは逆に、思考を中断して僕らの会話を聞いていたであろう山本大将は落ち着いてニヤリと笑った。

「だから、交渉のカードとして使おうと思っているだけだよ。タダで渡すわけないだろう?」

僕の言葉に、新見中将は少し恨めしそうな表情をして言う。

「いや、長官は、変なところで太っ腹ですからな…」

隣で山本大将がニヤニヤして頷いている。

「それは心外だな。まるで僕が見栄を張るだけの何も考えていない人みたいじゃないか」

「いや、そこまでは言ってませんが…」

困ったような新見中将の言葉に、山本大将が腹を抱えて笑い出す。

「なぁに、我らが長官も少しは腹芸を覚えて腹黒くなったという事でいいじゃないか」

笑いつつそういう山本大将に、僕は言い返す。

「それはそれで納得できないんだが…」

「なにをおっしゃる。多分、川見当たりは、私と同じ意見でしょうな」

その言葉に、僕は苦笑するしかない。

「ああ、川見大佐にはこの前似たような事を言われたよ…」

僕のその言葉に、山本大将はますます腹を抱えて笑ったのだった。

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