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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
外伝3 戦艦 大和改はもっと打っ放したい

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戦艦 大和改はもっと打っ放したい  その2

標的用の艦艇の生産を行うという僕の説明を聞き、二人は黙り込んだ。

「確かに大型ドックは余裕がある。しかし、ただ標的だけにする為にわざわざ艦艇を用意する必要があるか?それよりも新造艦を作った方がいいと思うんだが…」

まず最初にそう口を開いたのはドッグ責任者の藤堂少佐だ。

「いや、いつも常時というわけではないんですよ。ただ、たまには実物に近いものを使う事で軍の士気も上がるし、訓練のやる気も違ってくるんじゃないかと思いまして…」

僕の言葉に、目を細めて探るように藤堂少佐が聞いてくる。

「長官の事だ。実はそれだけではないんだろう?」

その目には僕が何を言い出すかワクワクして待っているかのような輝きがあった。

いつも裏があるわけじゃないんだけどね。

だけど、今回に関しては訓練以外に目的がある。

だから、それを素直に認める事にした。

「わかりますか?」

「ああ。なんとなくだけどな」

どんなところでわかるんだろうか。

今度聞いてみるか…。

そんな事を思いつつ、考えている事を説明する。

「今のところ、我々と同程度の戦力を持つ艦艇は、帝国のビスマルクやシャルンホルストなんかだけです。ですが、それらの艦艇があるという事は、我々と同程度の艦艇も他にあると考えるべきでしょう。ですから、我々と同じ程度の艦艇を標的にすることで、同程度の敵艦艇の対処方法や戦い方の研究といった戦術面、あと破壊部分の分析や砲撃されて沈むまでの状況などから装甲や砲撃に関する軍事技術の研究をしたいと思いまして…」

「なるほどな。そういう狙いもあるということか…。確かに鹵獲した敵艦艇はそう言った点では物足りなかったからな」

「ええ。せっかくですから徹底的に活用すべきじゃないかなと思いまして…」

僕の言葉に、藤堂少佐はニタリと笑う。

「いいだろう。お前さんの計画に乗ろうじゃないか。俺らは何をすればいい?」

「そうですね。艦艇はこっちで完成させますから、総合的な点検なんかをお願いしていいですか?」

「任せろ。それで艦艇の方は完全な状態で?」

「まぁ、今夜から製作に入りますからはっきりとはいえませんけど、一応ある程度までは艤装予定です。計画としては、今のところ戦艦クラス二隻、重巡洋艦一隻、駆逐艦三隻の予定で、明日から順にドッグの方に設置していきます」

「わかった。こっちはこっちで手配をしておこう」

藤堂少佐はそう言って頷くと持参した手帳に何か書きとめている。

おそらく、今聞いた内容の記入や日程の確認をしているのだろう。

藤堂少佐とのやり取りを面白そうに聞いていた三島さんが、今度は口を開く。

「それで私に聞きたいのは、魔力の確認かな?」

「ええ。それと付喪神の件です。確か、同じものが作られたとしても付喪神が付くのは一つだけでしたよね?」

「ああ。だから、同じ艦艇を君が作っても付喪神は憑依しない」

「それを聞いて安心しました。以前、付喪神は一人だけという話を聞いていましたけど、客船から航空母艦になった場合は、別々に付喪神が付いたのでちょっと気になってしまって…」

「ああ。春日丸と大鷹の件かな…」

「ええ。その件です」

特設航空母艦大鷹は、新田丸級貨客船三番船春日丸を建造中に空母へ改造した経緯がある。

その為、新田丸と大鷹は同一艦とも言える。

だから、同時にこの世界では、どちらかだけに付喪神が憑依すると思っていた。

しかし、実際に作ってみた結果、両方に付喪神が憑依する結果となった。

もちろん、両方憑依してくれてこっちとしてはありがたかったが、その事がずっと気になっていた。

だから、三島さんに調べておいて欲しいと頼んだのだ。

少し考え込むような態度をした後、三島さんが「私の推測で、恐らくなんだけど…」と前置きをして口を開く。

「恐らくだけど、あの艦の場合は、客船として関わった人達の思いと航空母艦として関わった人達の思いが大きく違う為じゃないかと思っているの。実際、年式の違いや改造程度では新しく付喪神が憑依する事はなかったしね」

「なるほど…。付喪神はそれに関わった人達の思いが形になったものという話でしたからね」

僕が感心してそう言うと、横で話しを聞いていた藤堂少佐も頷いている。

彼は造船という事に関わる以上、よりわかり納得できるのだろう。

「それと、もう一つ理由があると思うのよね」

三島さんはそう言い出した後、少し苦笑しつつ言葉を続けた。

「名前が大きく関わっているんじゃないかと思う」

「名前ですか?」

「ええ。名前よ。名前はそのものを示す最もわかりやすい記号だからね。そして、そのものの本質を現すものでもある」

「『名は体を表す』ってことですね」

「その通りだ。だからこそ、はっきりと別れたんだと思う。それが私の推測だ」

三島さんの話に、僕は少し考え込む。

確かに納得できる話だ。

そして、魔法のすべてがわかっているわけではないものの、なんとなくだがこの世界の魔法の法則にもあっていると思う。

だが、名前だけでは駄目なのもなんとなくだがわかる。

要は、その物を示す名前と、それに関わった人々の思いという中身が繋がった時に初めて付喪神が憑依できるという条件が揃うのだろう。

もちろん、僕が作ったという条件も含まれるが…。

「ありがとうございました。実に納得できる答えをいただきました」

僕がそう言うと、三島さんは苦笑した。

「いやいや、これが正解かどうかはまだはっきりとわからないんだけどね」

「ですが、まったくわからない状態よりも、ある程度でもわかった方がズレがあまり生まれないから助かりますよ」

「そう言ってくれるとこっちとしてもうれしいかな」

三島さんはそう言って東郷大尉が用意してくれた紅茶をすする。

そして、思い出したように言った。

「そうそう、魔力の件だけど、全然大丈夫だよ。今のところは普通の消費量より、生産される魔力の方が高いからね」

「ですが、最初の僕の世界と繋げて、ジオラマを実体化したときはかなりの魔力を消費したと聞きましたけど…」

「まぁね。貯めていた百年近い分を一気に使ったからなぁ…。もっとも、それでもまだ貯められている魔力には余裕があるし、少しずつだが生産と消費の差の分だけ増え続けている。もっとも、君が来る前の以前と同じような量の魔力を貯めようと思ったら、今度は数百年以上はかかるだろうな…」

その言葉に、藤堂少佐は苦笑する。

「まぁ、いろいろうちも使わせてもらっていますからなぁ。以前のようにとはいかないですな」

実際、現時点での艦艇の修理や部品交換、造船に関しての資材は、魔力によって作り出されたものを使っている。

だからこそ、消費しているとわかるのだろう。

もちろん、それだけではない。

燃料や各基地や港建設の資材なんかも魔力によって補充されてる分から出されている。

これは早めに魔力に頼らないで供給できる体制を作り上げる必要があるな。

まずは、イタオウ地区の工業化を進めなければならないし、他国との貿易を推し進めるだけではなく、その貿易に関しての安全性なんかも考慮しないと駄目だな。

やる事は相変わらず山積みだなぁ…。

思わずそんなことまで思っていると、ニヤニヤした顔で僕を覗き込むように見ている三島さんと藤堂少佐が目の前にいる。

「あ、すみません。少し考え事をしていました」

僕が思わずそう言うと、藤堂少佐は立ち上がる。

「それじゃ、後は何もないようなら俺は仕事に戻りますぜ、大将」

「ああ。すまないな。仕事が忙しいところを集まってくれてありがとう」

「なぁに、大将と俺の仲じゃないですか。水臭い事はいいなさんな。それじゃ、詳しい予定はまた連絡くださいよ」

「ああ。わかった。よろしく頼みます」

手を振りつつ、飄々とした態度で藤堂少佐は退出した。

相変わらずだな。

そんな事を思っていると、紅茶を飲み終わったのだろう。

ティーカップを置いて、三島さんも立ち上がる。

「もう行くんですか?」

「ええ。この後、シュウホン島の方に行かないと駄目だからね」

「定期に行われる本会議ですか?」

「そうそう」

「なら、僕が…」

僕が立ち上がりかけるのを優しく諭すように三島さんは押し戻す。

「通常業務の政治関係の事は私に任せなさい。あなたは軍と外交の責任者としていろいろ考えておく事があるんじゃないかな」

どうやら、魔力依存の体制からの脱却として外国との貿易とかを考えている事は彼女には筒抜けのようだ。

「わかりました。そうさせていただきます」

「うん。わかればよろしい…」

そう言った後、三島さんがニタリといやらしい笑みを浮かべる。

なんか嫌な予感が…。

「そうそう、さっきの『もう行くんですか?』っていう台詞は、東郷ちゃんに言ってあげなさい。彼女喜ぶわよ」

そう言ってケラケラと笑いつつ、ドアに向かう三島さん。

やっぱりかーっ。

なんかそう言われそうな気がしたんだよね。

そう思いつつ、僕は苦笑しつつ言い返した。

「そんなんだと仕事になりませんから」

足を止めて驚いた表情で僕を見た後、三島さんは納得したというような表情になって言い返す。

「仕事にならないんじゃ困るわね。フソウ連合の未来としては特に…」

「だから、そうならないように、仕事とプライベートはきちんと振り分けていこうと思っています」

言う言わないとは答えない。

要は、仕事では言わないけど、プライベートでは言うかもしれないということだ。

それがわかったのだろう。

ますます楽しそうに三島さんは笑った。

「本当に、あんたは今まで会った男の中で飛びっきりに変わってて面白い男だわ」

僕はその言葉に笑って答えた。

「褒め言葉と思っておきます」

すると一瞬、きょとんとした顔をした後、ますます楽しそうに笑う三島さん。

「そうしなさい。そうしなさい」

そう言って三島さんは実に満足げに退出していった。

おかげさまで連載一年突破となりました。

本当にありがとうございます。

つきましては、外伝で読みたいキャラクター(付喪神もOK)のリクエストを募集します。

詳しくは活動報告の『連載一周年企画』のところを読み、ご記入くださいませ。

参加お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] この作品を連載の最後まで読んでいないのでなんとも言えませんが、宇宙戦艦とか超時空要塞とかモビルスーツとか 実現できそうな設定になってますよね?w それとは別にジェット機やイージス艦も出てくる…
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