↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
外伝3 戦艦 大和改はもっと打っ放したい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/930

戦艦 大和改はもっと打っ放したい  その1

今回の外伝はブックマーク300突破記念で読みたい艦艇付喪神のリクエストを募集した時に応募があったものです。

第二回目は「きんぼー」さん希望の大和改のお話です。

また、似たようなリクエスト募集はやりたいと思いますので、その時も皆様よろしくお願いいたします。

それは、帝国と共和国との侵攻を何とか打ち破り、その後始末も落ち着きかけたとある日の午後だった。

昼食を済ませ、少し眠気と戦いながらいつも通りに書類処理をしているとなにやら部屋の前が騒がしい。

はっきりと言葉は聞き取れないが、どうも言い争う感じの様子だ。

思わず気になって、仕事を中断してインターホンのボタンを押す。

「どうしたんだい?」

そう言いかけた撲の耳に入ってきたのは、怒鳴るような男の声だった。

「長官に会わせてくれっ」

「それは出来ませんっ。約束もない上に、緊急事態ではないのでしょう?なら、請願書をきちんと書いて対応するのが筋ってものでしょう。まったく、いい加減になさいっ」

必死にそう答えて対応しているのは東郷大尉だ。

まぁ、正論だよなぁ。

しかし、なんか似たようなことが以前あったなぁ。

確かあの時は最上だったっけ…。

そんな事を思いつつ、僕は再度インターホンのボタンを押してマイクに大き目の声で言う。

「構わないよ。大尉」

「ですがっ」

「ちょうど一呼吸入れようと思ったんだ。陳情か何かだろう?」

「ええ…。まぁ…」

「なら話だけでも聞こうかな」

僕がそう言ったときだった。

「さすが長官だっ。話がわかるっ。ほれ見てみろ」

そんな声が入ってくる。

ああ、今の声でわかった。

相手は大和改か…。

大和改は、戦艦大和よりもより強力な戦艦を生み出す為に日本海軍が計画したマル5計画で立案された大和型戦艦の改造計画で生まれるはずだった戦艦である。

艦のサイズこそ大和とほぼ変わらないものの、主砲は、四十五口径(または五十口径)四十六cm砲三連装三基、或いは四十五口径五十一cm連装砲三基、高角砲も四十口径12.7cm高角砲を駆逐艦秋月型で使われた最新式の六十口径10cm高角砲連装十基に変更され、火力、防空能力をより向上させている。

もし実際に完成したとすれば、まさに大和型をはるかに超えた戦艦となっただろう。

だが、現実は非情である。

戦いの主力は、空母を主体とする航空戦力のぶつかり合いへと移り変わり、今まで海戦の主役であった戦艦は空母の護衛と上陸支援といった脇役へと押しやられてしまう。

そして、計画は中止され、その計画に関わった人々の夢と思いだけが残り、そして幻の大和型改造艦艇として歴史に記される事となる。

だから、本来なら生まれるはずもなく日の目を見る事のなかった存在。

しかし、この世界は違う。

憑代となる模型とそれに関わった人々の思いが形になるのだ。

だからこそ、今、彼はここにいる。

戦艦大和改の付喪神として…。

しぶしぶ長官室に通すと、大和改を僕の前に案内した東郷大尉は僕の方を恨めしそうに見た後、お茶を用意する為に一旦長官室から退出した。

その後姿を苦笑して見送った後、僕は視線を大和改に移す。

ニヤニヤして僕を見ている大和改。

「な、何か?」

僕がそう聞き返すと、ますますニヤニヤしつつ大和改は口を開いた。

「いや、長官があのきつい性格の秘書官に惚れているって噂は本当だったんだなと思ってな」

いきなりの言葉に僕はパクパクと口を動かすが言葉にならない。

多分、赤面しているんだろう。

顔が熱い。

そんな僕の反応が面白かったんだろう。

大和改は豪快に笑いつつ、説明するかのように言う。

「ほれ、その対応が答えだって事ですぜ。しかしよぉ…」

今度は少し苦笑した表情になる。

「あの性格だからなぁ…。ありゃ、長官、尻に敷かれますぜ」

そこまで言われて、僕はやっと言葉を発した。

「余計なお世話だっ!」

その言葉に驚いた表情になった大和改だが、すぐにケラケラと笑い出す。

「いやはや、ベタ惚れですな、長官」

くそっ…。

ますます面白がってる感じだ。

話を切り替えよう。

「まずは座りたまえ」

ソファを薦め、僕はさっさと座り込む。

大和改も躊躇なく向かい側に座った。

「それで…話というのは?」

僕がそう聞くと、大和改が真面目な表情になる。

「いや…、長官と秘書官の関係を…」

言い終わらないうちに僕はドアを指差し叫んでいた。


「カエレ!!」


僕の言葉に、慌てたように言葉を続ける大和改。

「じ、冗談ですって…。そんな照れ隠しに怒らなくても…」

「冗談が過ぎると本当に退出してもらうからな」

ぎろりと睨んでそう言うと大和改がシュンとした顔をする。

「すんません…」

「わかればよろしい。それで今日の用件は何だ?」

僕がそう言うのと長官室のドアが開いたのは同時だった。

トレイにお茶の用意をして東郷大尉が入ってきたのだ。

そして、そっちに視線をちらりと送った瞬間だった。

僕にずいっと迫るように身体を浮かせて大和改が叫ぶように言う。


「長官、やらせてください」


その予想外の言葉に、視線が大和改に戻り、思わず引いてしまう。

それはそうだろう。

むさ苦しい男から顔を近づけられそう言われて迫られたのだ。

同性趣味のない僕としては鳥肌モノである。

そして、それと同時にがちゃんとガラスの割れる音が響く。

視線を音の発信源に向けると、唖然として立ち尽くす東郷大尉。

トレイは傾き、用意したであろうティセットは床に落ちてしまっていた。

その音に、大和改も驚いたのだろう。

視線を東郷大尉に向けて唖然としている。

「ふ…」

「ふ?」

「不潔ですっ」

思わず涙を浮かべて走り去ろうとする東郷大尉。

僕は思わず後を追って走り出し、長官室を出ですぐになんとか手を握って捕まえる。

もう必死だった。

「ご、誤解だっ、東郷さんっ」

「何が誤解ですかっ。あんなにはっきりと言われるなんてっ」

「だから、あれは大和改が勝手に言った事なんだっ。僕にはそんな趣味はないっ」

「本当ですか?」

「本当だっ」

「でも…アイリッシュ殿下と抱き合っていたし…」

「あれはスキンシップだ。彼とは友情しかない。信じてくれ」

「でも…アリシアさんとも…いい感じだったし…」

「彼女とも友情は感じているけど、それ以上はない」

「本当ですか?」

「本当だっ。それに僕が好きなのは君だけだ」

思わず口から出た言葉に、東郷大尉は真っ赤になった。

多分、僕も真っ赤だろう。

互いに言葉を失い、ただ見つめあう。

それだけだった。

しかし、それだけではあったが互いの心が通じ合ったような感覚が当たりを包み込む。

だが、そんな一時もすぐに吹き飛んでしまった。

恐らく様子を見に来たであろう雰囲気を読まない大和改の言葉に…。

「痴話喧嘩は済みましたか?」

その言葉に、僕と東郷大尉は二人して言い返していた。

「お前が言うな」と…。


こうして色々あったが、大和改にはたっぷりと僕と東郷大尉の二人で説教し、東郷大尉が入れなおしてくれた紅茶を飲みつつ僕は聞く。

「で?用事って何?」

言い方が少し投げやりなのは、まぁ、仕方ない。

火をつけてかき回した大和改の自業自得である。

まぁ、反省はしているみたいだし良しとすべきだろう。

もっとも、東郷大尉はまだ怒っているのか、大和改を見る視線は厳しい。

ぎろりという擬音がぴったりな感じだ。

まぁ、それはいいとして、少し大人しくなった感じで大和改は口を開いた。

「はぁ…。長官、どうにかなりませんか?」

「だから何がだ?」

「砲撃訓練です…」

「砲撃訓練?」

「はい。もっとやりたいんです。砲撃訓練を…」

ああ、さっきの「やらせてくれ」とは砲撃訓練の事か…。

なんか納得した。

どうやら東郷大尉も納得したのだろう。

少しほっとした感じで、大和改を見る視線の厳しさも少し和らいだような感じだ。

「十分しているだろう。鹵獲艦を使っての砲撃訓練だってこの前やったじゃないか」

僕の言葉に、大和改は頷くも口を開く。

「確かに、長官の言われるとおり、訓練はきちんとやらせてもらっていますし、この前の鹵獲艦艇を使った砲撃訓練は実に有意義ものでした」

「なら…」

「ですが…物足りないんですよ」

必死な表情でそう訴える大和改。

それに釣られるように僕は聞き返す。

「何が物足りないんだ?」

「いくら重戦艦や戦艦といっても、我が軍の規格で言えば軽巡洋艦クラスよりも少し大きい程度です。俺としては、戦艦と…本当の戦艦とやってみたいんです」

その言葉に、僕は少し考え込む。

確かに先の海戦で、僕はテルピッツに対して大和改をぶつける気だった。

大和改もそれをある意味楽しみにしていたに違いない。

しかしだ。

実際に作戦が始まってしまったら、敵の策によりテルピッツに大和改をぶつける事はできなかった。

それどころか、航空隊の食べ残しの後始末をしただけだ。

まさに、僕の世界の歴史どおりに戦艦は航空機の脇役となってしまい悔しい思いをしたのだろう。

同情の余地はある…。

だから、僕は考え込み、そして頭に浮かんだ考えを言う。

「戦艦同士の砲撃戦は無理だが、戦艦相手への砲撃なら出来ると思うぞ」

僕の言葉と同時に僕の後ろでたって控えていた東郷大尉が慌てて口を開く。

「長官っ、それは甘すぎです」

「そうかな?」

「そうですよ。一人一人の要望を聞いて対応していたら組織は成り立ちません」

「確かにそうだが、なるべく要望を叶えたいんだ。国のために戦う人達に出来る限りの事はしておきたい」

僕の言葉に、東郷大尉がため息を吐き出す。

その表情に浮かぶのは、諦めだけではなくいろんなものが混じった複雑なものだった。

「仕方ないですね…」

「ごめん。迷惑をかけるよ」

僕の言葉に東郷大尉は苦笑を浮かべる。

「私の仕事は、あなたを支える事ですから迷惑だなんて思っていません。でも、無理はなさらないでください」

「ありがとう…」

僕は東郷大尉に礼を言うと、視線を大和改に向ける。

「それでだ、再度聞くぞ。戦艦同士の砲撃戦は無理だが、戦艦相手への砲撃なら出来ると思うんだが、それでいいか?」

僕の声に、大和改は大きく頷き返事を返した。

「それでお願いしますぜ、長官」

その表情に浮かぶのは、嬉々とした喜びの感情だ。

うんうん。言ってよかったかな。

もっとも、ちょっと手間はかかるけどね。

まぁ、実験を兼ねてやってみるか…。

そんな大和改を見ながら、僕は三島さんとドック管理責任者の藤堂少佐に手が空いたら長官室に寄ってもらう手配を東郷大尉に命じたのだった。

おかげさまで連載一年突破となりました。

本当にありがとうございます。

つきましては、外伝で読みたいキャラクター(付喪神もOK)のリクエストを募集します。

詳しくは活動報告の『連載一周年企画』のところを読み、ご記入くださいませ。

参加お待ちしております。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。