Another View 毛利重就2
明和6年4月15日 江戸 長州藩上屋敷
3月月末に再び黒き異形の船が現れた。今回は周防灘に面した台場に接近した上、こちらの威嚇射撃をおちょくるように動き、そして追跡した小早を砲撃で沈められたという。また、馬関海峡に設置した複数の台場は相手にせず速度を上げて通過した。
2月に越後屋から聞いた品川沖にいる黒船を早馬で偵察に出掛けさせたが、その黒船は定期的に品川に出入りしていたが、最近の情報では一隻残らず出払ったという。国元からの情報では3隻の艦隊行動で所属は明らかでなかったと言うが、品川沖にいた例の黒船も3隻・・・そしてそれには葵の御紋と沢瀉紋が翻っていた。
おそらくは品川にいた黒船が正体なのだろう。だが、幕府所属であるという確かな証拠もないまま訴え出ても相手にされないであろうし、そもそも、こちらは幕府の許可なしに山口城を建設している。また、台場の普請と大筒の量産も許可を得ていない。
仮に品川のアレが幕府所属であり、周防灘と馬関海峡に現れたとすると、その目的は我が長州藩への圧力もしくは威力偵察と言ったところだろう。
山口城の建設と藩庁移転がバレたとしても、萩もしくは山口の破却と何らかのお咎め程度で済むだろうが、越後屋との製鉄所の建設だけは守り抜かねばならぬ。また、越後屋にすら黙っておる大嶺の石炭採掘も守り抜かねば・・・。反射炉と石炭を守り抜ければ、仮に長門一国に減封されたとしても蘇ることが出来る。越後屋を切り捨ててもだ。
「誰かある。」
「殿、およびでしょうか?」
「国元に急使を。大嶺への人の出入りを今以上に厳しくせよ。大嶺から厚狭までの鉄道建設を急がせよ。」
「はっ。では、すぐに発します。」
「うむ。」
これで大嶺の秘密は暫く保持できるであろう。問題は如何に長門一国を守り抜くかだ。




