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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
御庭番、有坂民部

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旦那のやること考えることはお見通し

明和6年3月12日夕 江戸 新橋 有坂民部邸


厄介なことを押し付けられた。


また結奈に怒られる。


どうしよう・・・。


そうだ、黙って江戸の源ちゃん家に行こう。置き手紙だけして、暫く出張するって・・・。


「旦那様?」


見つかった・・・。置き手紙書く間もなく結奈が現れた・・・。どうしよう。


「しっ、暫く・・・出張する!体を労れよ!じゃあ!」


ガシッ


「なっ、何かな?放してくれないか、急ぎなんだ。」


「どこに行くのかしら?」


「ちょっ・・・秩父だよ。うん、ほら、川越藩のみんなのところを様子見に・・・。」


ヤバい・・・。


「そう、長州に行くのね?そうなんでしょう?」


「やっやだなぁ~そんなことあるわけ無いじゃん・・・。」


「おだまり。」


「・・・。」


勘が良すぎるぞ、この嫁。


「で、ど・こ・に・い・く・の?」


「はい、長州です。」


もう、無理だ。うん、最初から無理だとわかってたけれど・・・。


「へぇ、長州ね?で、何をしに?」


「御庭番の真似事を・・・少々・・・。」


「ねぇ、旦那様?貴方、忍者ごっこする歳かしら?それとも、私を馬鹿にしているのかしら?」


完全にキレていらっしゃる・・・。宥めないと・・・。


「結奈さん?怒ると・・・カラダニヨクナイヨ・・・。」


「そうね、じゃあ、断っていらっしゃい。そしたら機嫌を治すことを検討しても良いわ。」


「断ってきても、検討するだけ?」


「そうね、旦那様が二度とこんな巫山戯たことしないって約束するなら考えても良いわ。」


「カンガエルダケデスカ・・・。」


今日は完全にキレていらっしゃる。どうしたら良いのかわからん。こんな結奈初めて見たよ。どうしよう。


「田沼様ってばホント、次から次へと・・・。」


「いえ、今回は上様が・・・。」


「ねぇ、旦那様?私、先日、自重してって言ったばかりよ?なんでこんな事になってるの?」


「はい、ごめんなさい。許してください。」


「謝罪は要らないわ。どうしてこうなったのか、答えてほしいのだけれど?」


あーもーどーするよ。


「3日に結奈と話した内容を10日に呼び出された時に老中たちの前で話したのだけれどね、それで、御庭番が戻り次第、長州藩に詰問使を送って釈明と事後策を要求することになったのだよ。」


「へぇ。それで?」


「で、井伊大老が詰問使として行くという話になったのだけれど・・・。送るべき御庭番が何故か私になってしまったみたい・・・。」


「そう。」


「勿論、拒否ったよ?押し切られたけれど・・・。」


「はぁ・・・。なんで旦那様はそう面倒事を・・・。私がどれだけ心配するかわかってるでしょう?いい加減にしてちょうだい。」


だろうね・・・。私もいい加減にしてくれと思うよ。鉄道建設は個人的な趣味の領域でヒャッハーするからいいけど、これは別問題だ・・・。


「危ない橋は渡らない。約束する。」


「行かない訳にはいかないものね。長州には上陸するの?」


「なんで船で行くって気付いたの?」


「旦那様のことだから、蒸気船使って沿岸の調査をするのでしょう?内陸を調査するなら小倉に上陸して下関経由で潜入するつもりじゃないのかしら?」


「ご名答。そのつもり。ただ、上陸は厳しいと思う。だから、小倉か博多の商人を使うつもり。砲台程度なら海上からで十分だしね。鉄道路線の把握と製鉄所の把握が出来れば良いと思っている。恐らく、製鉄所は日本海側だろうね。須佐とかあの辺りでたたら製鉄やってたはずだし。ってことは砂鉄がその辺で採れる。あとは石炭を運んでもバレにくいということを考えるとやっぱり日本海側・・・。」


「萩城城内に製鉄所を造ってるとか考えられるんじゃないかしら?」


確かに、萩城の構造からしたら船で運び込むことが出来る。


「結奈、それは十分に考えられるよ。主要都市を調べてそこになければ、萩を疑うべきだろうね。よし、短期間で最低限の調査ならこれで十分だ。」


「私は旦那様が無茶をしないように旦那様の方針と考えから最適なアドバイスをしただけよ。」


「ありがとう。無茶をしない。無理もしない。死にたくないからね。」


「それじゃ、私は出立の準備をしてくるわ。田沼様のお屋敷に方針を伝えに行ってきなさいな。」


「わかった。じゃあ、ちょっと出掛けてくるよ。」


なんだかんだで、結局は助けてくれるんだな。土産を何か買って来てやろう。

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