御庭番
明和6年3月12日 江戸城
大老、老中、側用人と幕閣が揃った緊急会議から2日、たった2日しか経ってない、正確に言えば48時間も経ってないのにまた登城命令が来た・・・。今度は側用人の呼び出しである。
幕閣どもは私が江戸定府を良いことに使い走りにするつもりらしい。こっちはオッサンどもの無理難題をクリアしないといけないというのに、忘れてるんじゃなかろうか・・・。
今度は一体何を押し付けるつもりなのか・・・。
まったく困ったものだ。
「有坂民部、罷り越しました。」
「おぉ、民部か。」
おぉ、じゃねぇーよ。
「上様がそなたをお呼びでな。」
「上様が?私を?」
なんてことだ・・・。想像よりも斜め上だ。
「あの、主殿様?旗本の身である私が年賀でもない今、上様にして拝謁しても良いのですか?」
確かに旗本は御目見以上であるから拝謁できるのだけれども、年賀の挨拶とかの行事の時くらいなもんだったはず。まさか、将軍の御座所である奥へ入ることなど出来ようはずがないし・・・。
「うむ。出来るぞ?ただし、特定条件下であればな。」
嫌な予感がしてきた・・・。これ、絶対碌でも無いことに巻き込まれるアレだ。そんなフラグが立った気がしてならない。そんなフラグは圧し折るに限る。
「お断り申し上げまする。これ以上面倒事は抱えとうありませぬ。鉄道奉行の職務だけでも両手から零れ落ちそうですのに、これ以上は無理でございます。」
「上様のご意向でもか?」
「お断り申し上げまする。例え、ここに上様が居られて、上意を賜ってもお断り致します。」
どうだ、断ってやったぞ。
「余が伏して願ってもか?どうじゃ民部?」
うわぁ、出てきたよ・・・。そうだと思っていたさ。あぁ、来るだろうと、そこに居るだろうと思ってたさ。でも、現実なんて見たくねぇんだよ。
「上様、上様が何をお考えか存じませぬが、先に申しました通り、私は抱えております職務に邁進致します故、どうか御寛恕の程。」
「ならぬ。民部、そなた以外に適任者は居らぬ。のう、主殿。」
「左様でございますな。民部でないと務まりませぬ。」
「嫌でございます。大方、お庭番の真似事をせよと仰せなのでございましょう?それも、長州へ行けと・・・。そうでございますね?そうでなければ、私が呼び出されるわけがございませぬ。」
「主殿よ、そなた、役目を申したかの?」
「いいえ、申しておりませぬ。ただ、呼び出しただけでございます。」
うわぁ、マジでこのオッサンども長州のど真ん中に送り込む気だ・・・。勘弁してくれ。
「嫌でございます。長州のなど行きたくありませぬ。」
「民部よ、聞き分けのないことを言うでない。上様が呆れておるぞ。」
「嫌でございます。お断り申し上げます。御庭番にお任せになられたらよろしいではありませんか。諜報活動は彼らが適任でございます。私は左様な能力持ち合わせておりませぬ。」
「民部、駄々を捏ねるでない。」
「改めて申し渡す。民部、そなたを御庭番に任命し、長州へ下向せよ。長州の動きと目的を探るのだ。」
なんか、上様、異様に押しが強いんだけど・・・。
「上様、私が務めます鉄道奉行の職とその役目は如何なさるおつもりでございましょうか?」
「それは今まで通りじゃ。励めよ。」
鬼だ。鬼畜だ。なにこの幕府・・・謀反起こしちゃうぞ。
「長州に寝返ったらどうなるかわかっておろうな?のう民部。余と主殿の期待を裏切るなよ?」
わかったよ、わかりましたよ。なんとかしますよ。
「今回限りでございます。御庭番の真似事などこれっきりございます。」
「良かろう。民部、下がって良いぞ。戻って参ったら主殿に直接報告してやるが良い。」
「失礼致します。」
はぁ・・・。なんてことだ・・・。なんなのだ、なんなのだ・・・。
私のリアル版鉄道会社経営ゲームを邪魔されるなんて・・・。




