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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
幕閣への道

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Another View 三井高清3

明和6年1月6日 江戸 日本橋 越後屋


先の汚職疑獄でっち上げのために協力してくれた大店が集まって貰った。


「今日はお集まりいただきかたじけなく・・・。」


「越後屋さんにして下手を打たれましたな。」


「そっくりそのまま備蓄米義捐米にされるとは思いませんでしたな。」


一夜明けると高札が江戸市中に立ち並び、その上、一部の大店は身銭を切って追加献金と現物納付をする始末。まさか斯様な手を打たれるとは・・・。


「ですが、我らは越後屋さんから頂いた資金で名を売ることが出来ました故、此度の一件、痛手はありませぬ。感謝いたしたいくらいでございます。」


「左様、今まで儲けを得ることばかり優先しておりました故、いつぞのような打ち壊しなどに遭っておりましたが、儲けのいくらかを還元するというのは悪いことではないやも知れませぬな。」


「有坂民部様には教えられてばかりでございますなぁ。」


大店衆までもが彼に味方するとは・・・。いや、味方しているのではなく、影響されているというべきだろう。


「先頃出来ました馬車鉄道、これが来月新橋からここ日本橋まで開通するそうですが、いやぁ、物流の変化というものに驚きが隠せませぬ。品川湊で荷揚げされ、新橋まで品物があっという間に届くのですからなぁ。これが日本橋まで開通しましたら今まで以上に大きく商いが出来るというもの。」


「いやいや、これからは店に蔵を建てずに品川に蔵屋敷を作り、必要な分だけ馬車鉄道で取り寄せれば良いのですよ。さすれば今まで以上に多種多様な品物を扱えまする。」


「聞くところによると、大手門前と日本橋をつなぐそうでございまして、さすれば、御城へ伺うときも便利となりましょう。」


「御城よりも浅草や両国へ線路を延ばしていただきたいものですな。さすれば、より多くの人が日本橋へ訪れまする。」


「左様ですなぁ。さすれば、今以上に人が集まる、モノも売れる。結構ではございませぬか。」


いかん、このままでは、彼ら大店衆が自らの意志で身銭を切って鉄道建設費用を献金しかねない。そのようなことになれば、有坂民部様だけでなく大店衆すべてが等しく競争相手となる・・・。


「皆の衆、有坂民部様をたたえ、鉄道を望まれるのは結構でございますが、その費用たるやご存知か?各方が抱える大名貸と同程度の費用がかかるのでございますぞ?幕府は我らを頼みに財政を支えております。ならば、その費用を負担するのは誰であるか明白。安易に有坂民部様に肩入れされるのは身の破滅を招きまするぞ。」


よし、さすがに負担の大きさに彼らはたじろいでおる。それで良いのだ。安易に肩入れされては困る。いずれ必要にはなるだろうが、今はまだ有坂民部様の台頭を許すわけにはいかぬ。


「各方、ゆめゆめ先程の件、お忘れなきよう。」

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