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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
幕閣への道

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Another View 三井高清2

明和6年1月1日 江戸 日本橋 越後屋


有坂様が幕臣に取り立てられるという話を聞いた時、これは好機だと考えた。彼はいずれ三井家にとって大きな障害になる。ならば、この機会を逃さず、失脚していただこう。少なくとも我々、商人にとっては後ろ盾とも言える田沼様も道連れになる可能性があるが、あのお方ならば復権されるのも早いだろう。政敵となりうる人物が現状幕閣には居ない。また、三奉行なども比較的田沼派とも言えるだけに影響は少ないだろう。


有坂様が財閥という組織を立ち上げた結果、我々の分析よりも効率よく資金が動き、また、傘下の企業体という組織がそれぞれの役割を果たしている。これは我らが出し抜くには分が悪い。しかし、その最上層で指揮を取っていた人間が幕府という役所仕事を背負い込んだことで、些か効率が悪くなっている様に最近は見える。


備後福山の製鉄所も軌道に乗ってきたけれど、彼の指揮する相良の製鉄所には及ばない。そもそも、彼が運用する船は我々が雇っている廻船問屋の千石船などと明らかに違う代物で、速度が違いすぎる。まして、荷役の仕方も全く異なる。これでは太刀打ちが出来ない。しかも、それを彼は解禁する気がない。もっとも、彼らが自分たちが使う分をまだ十分に揃えていないから他所に回す余裕が無いとも言えるが・・・。


彼のやることを見ていると、我々の考えの及ばないことをやってくれる。相良にある造船所もまた異なるものである。それも乾船渠なるもので同時に複数の船を建造している。そこに資材を蒸気機関車なる鉄の車で製鉄所から次々に運んでいる。


斯様な相手に資金力が上回っているからと言って簡単に勝てるわけではないが、製鉄所を手に入れた我らも同じように造船所を併設すれば彼ら同様に圧倒的な競争力を有することが出来るのではないだろうか。


最近では新橋と品川に馬車鉄道を開通させ、品川で降ろした荷物を次々に馬車鉄道で新橋へ運び込んでいる。相良で実用化したそれを江戸に持ち込んだということだそうだが、お陰で新橋と品川の間で籠引きは廃業に追い込まれ、大八車での輸送よりも効率が良いから江戸の流通には大きな変化をもたらしている。


彼にこれ以上好き勝手をさせてはならない。だからこそ、江戸の大店に献金をさせて失脚を画策したのだ。


松の内だけで1万両も献金という名の賄賂があっては幕府としても解任しなければならないだろう。悪いが表舞台から消えてもらう。

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