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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
鈍感と無自覚な人には言葉の詰将棋

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年貢の納め時

明和5年6月10日 遠江相良 相良城下 有坂邸


出雲松江から海路、蒸気船観光丸で帰朝。出迎えたのは許嫁(仮)である結奈。いつ帰るとか知らせていないのに、相良港の岸壁で出迎えるとか、こいつエスパーか?まぁ、中身は転生者だが・・・。


一体、何があったのであろうか。まぁ、考えても仕方ないよな。あいつが待ち構えている時は大抵の場合、不可避のイベントが待っている・・・。そう、現代でも、明和でも・・・。


なんか、満面の笑みで、岸壁に降りてくるの待ってるんだけど・・・。嫌な予感しかしない・・・。何企んでるんだ?


「おかえりなさい、旦那様。」


この旦那様呼ばわり、あの一件以来、継続する気らしい。個人的には外堀も内堀も埋められている気がして嫌なんだが・・・。まだ結婚する気なんてないし。そう、正月の一件でなんとか許嫁(仮)ということにすることでお茶を濁しているのに・・・。


「ただいま、結奈・・・。えと、その旦那様呼ばわり、やめない?」


「なんで?」


「いや、なんで?って、こっちのセリフだよ。その許婚にはなったが、結婚する気なんてまだないよ?」


あれ?よく考えたら、自分の言葉で将来的な結婚を認めてるじゃん・・・。言葉の詰将棋だ。そう、正月のアレとて、結奈の言葉の詰将棋で許婚という形になったんだ。しかも、同棲もいつの間にか認めさせられていたし・・・。


「これ、読んで(ニッコリ)」


なんか、この書状ヤバいオーラ放っているんだけど・・・。


「拒否して良い?」


「駄目よ。読んで。今すぐ。で、江戸の殿様に返事出して頂戴。」


うわぁ、やっぱ、あのオッサン絡みか・・・しかも結奈はこの書状の中身を知っている。共犯関係じゃねぇか・・・。


「宛:有坂総一郎 発:田沼意次」

「結奈から話は聞いておる。引き伸ばし工作もこれまでだ。いい加減諦めろ。」

「7月には江戸の藩邸で祝言上げるから、その支度もして江戸まで出て来い。」

「追伸、祝言終わったら、そのまま江戸住まいだから夜露死苦。」


・・・、あのオッサン、最近用件だけサクッと書いて寄越すけど、こっちの都合とか気にしなくなってきたな・・・。


「取り敢えずだ、結奈?」


「なにかしら?」


「あのオッサンに何書いて寄越した?」


「いつまでも時間稼ぎして往生際が悪いって(ニッコリ)」


こっコイツが元凶じゃねぇか。何やらかしてるんだ。しかも、7月に祝言だぁ?有無言わさない電撃戦かよ。


「なぁ、一つ聞いていいか?」


「いいわよ?」


「今日、この時間に、私が、ここに戻るって、なんでわかった?」


「なんでって、旦那様の頭はホント残念ね・・・。今の時代に海に煙が上がれば旦那様関係と相場が決まってるじゃない?旦那様の今のお気に入りのオモチャはその観光丸じゃない?」


「・・・、もういい。」


なんか、もう、何もかもが結奈の手の内にあるような気がして疲れた。


「そんな顔しなくてもいいじゃない。私のことキ・ラ・イ?」


「はぁ~、嫌ってると思うのかい?」


「そんな筈ないじゃない?私が旦那様に嫌われるわけないもの。貴方はいつも核心から遠ざかろうとするけれどね。」


ヤバい、この調子で結奈と話していると例の言葉の詰将棋だ・・・。


「・・・、ここで話していても仕方ないし、帰宅しようか。」


「ふぅ・・・、やっぱり核心には近づこうとしないのね。たまには踏み込んで欲しいものだけれど・・・、それとも、鈍いだけかしら?でも、それが貴方だものね。まぁ、いいわ。帰りましょう。」

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