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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
陰謀渦巻く西国道中

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不昧公

明和5年3月25日 出雲松江 松江城


私は、あれから観光丸での優雅なクルージング・・・すみません、船酔いしました・・・の後、出雲沖へ至り、美保関を経由して松江に到着した。


目的は松江藩の田沼派への勧誘である。そして佐陀川開削事業を前倒しさせることである。佐陀川は、この後の時代である天明5年(1785年)に計画立案、宍道湖から日本海までを結ぶ人工河川として開削され、2年後に完成するのであるが、私はコレを現代のそれよりも大規模に開削させ、日本海から松江城下まで直接アクセスできるようにしてやろうと企んでいる。


出雲国の主要港湾は、美保関、宇龍浦、安来湊である。美保関は島根半島の先っちょで不便であるし、宇龍浦は日御碕神社と出雲(杵築)大社の玄関であるが、峠越えが必要、安来湊は中海に面した良港で出雲鉄の主要積出港であるが、藩庁のある松江とは離れている。この3つの港湾ともに松江から八里程度離れている。要するに経済の中心地が主要インフラである港湾から離れていることで、現代にもその悪影響が色濃く残っているのである。仮に、直接乗り入れ出来るような港湾があったならば、新潟のような発展もあり得ただろう・・・。


とまぁ、そういうわけで、資源があるのに活かすことが出来ない状況になりつつある松江藩に恩を売る形で、自分たちに都合よく、不昧公の藩政改革を利用することを思いついたのである。


「そちが、田沼が可愛がっておるという有坂か。表をあげよ。」


「有り難き幸せ。主、田沼意次より、不昧公松平治郷様へ書状をお持ち致しました。」


「大儀である。」


まさか、自分が歴史上の大人物とこうやって面会することになるとは思いもしなかったが、今後も、こういったお歴々に会うこともあるだろう・・・。結奈はなんて言うだろうな?


「ふむ、田沼はそちらに便宜を図ってほしいと言ってきておるが、そちらは何を望む?この松江藩、また近隣の津山藩を含む越前系松平家は、幕府より目をつけられておる。そちらも知っておろう?まして、幕府は大名同士が付き合い、席を囲むような真似を容認しておらぬぞ?」


「不昧公が幕府の疑念や不興を買わぬように腐心されておられることは存じております。」


「ならば、余の答えは、聞かずともわかるであろう?のう?有坂よ。」


まぁ、そういう答えが来るだろうとは思っていたけれどね・・・。そのための佐陀川開削の提案だ。


「では、不昧公にこちらから利益を提供させていただきたく・・・。この松江城下は、度々大橋川の水害で被っているかと存じますが、それは大橋川、天神川の排水能力が足りぬ故と愚考致します。」


「うむ。そうであるな。故に、代々頭を抱えておる。」


「であるならば、新たな排水路を開削すべきであろうかと。そのお役目、我らが請け負いまする。勿論、費用の負担も我らにお任せくださいませ。」


パナマ運河方式で実質租借地にして、利用料を継続して得ればいずれ元は取れるだろうさ。


「そちらが負担するのは大いに結構だが、見返りは何を望む?タダでくれるわけではなかろう?」


「開削した後、運河として利用致します。その際に舟運が期待できます故、その通行料を我らに一定額いただければ・・・。そして、我が相良藩の商社群に非課税措置を願いたく。勿論、その際には新田開発などで松江藩には貢献させていただけると確信いたしております。」


「ならば、その献策、まずは運河開削と新田開発を成してみせよ。話はそれからじゃ。」


「有り難き仰せ。この有坂、尽力致しまする。」

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