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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
それぞれの思惑

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有坂邸での夫婦謀議

明和5年1月20日夜 有坂邸


「正座!」


何故か、私は結奈に床の間で正座させられている。彼女の不興を買うような真似をした記憶はない。うん、私は何も悪くない。


「なんで、正座させられているか、理解できていないようだね?」


「心当たりが全くない。」


そう、やましいことなんて何一つない。浮気なんぞしていないし、そもそも、モテるわけでもない。というか、そんな暇もない。仮にモテていたならここに結奈はいない。


「はぁ~。」


「なんで溜息ついてるのかな?」


「ねぇ、旦那様?私が、旦那様が帰宅したときに、旦那様になんて言ったか覚えてるかしら?」


なんか、よくわからんが、旦那様連呼し始めた、普段はこんなこと言わないのに・・・。益々わけがわからない。


「私、旦那様に、相談してくれたら話を聞くって言ったわよね?」


「あぁ、なんかそんなことを言われた記憶があるね・・・。」


そんなことが逆鱗に触れたのか?こいつ、こんなキレやすかったっけ?きっとアレの日だったんだな。面倒なことだ。


「よくないこと考えてる顔だね。」


「ソンナコトハナイ。」


触らぬ神に祟りなしだ。


「で、相談してくれないの?内容は相談できないことだったのかしら?」


「相談ってもなぁ・・・。」


「浮気とか側室とかそういう話なのかしら?」


「いやいや、そんな話ではないよ。」


うん、なんかヤバい方向に話がいきそうだ。たまに結奈の考えていることがわからない。こいつは私にぞっこんとかそんなこと無かっただろうし。


「じゃあ、話せるよね?」


「わかりました、話します。なので、正座しんどいので胡座をかかせください。」


結奈が怖いので何故か敬語になってしまった。


「よろしい。」


「まだ、頭の中整理できているわけじゃないから、考えもまとまってないよ?」


「そうでしょうね。旦那様の表情見ていればわかるよ。」


どうやら今日は旦那様で通すらしい。律儀なんだか、嫌味なんだか、よくわからん・・・。


「江戸の殿様から書状が届いた。三井がこっちに来るから、一緒に福山まで出張れって。」


その後、執務室で考えていたこと、それぞれの思惑やメリットデメリットなどを結奈に話した。捕捉で三井三池と三井の備中利権、住友の状況なども説明した。そしたら、こんなことを言いやがった・・・。


「要するに、旦那様が、旦那様の都合で、旦那様の思うようにやったら、殿様が殿様の都合で殿様の好きなようにそれに乗っかった。そしたら、歴史が想像以上に動いてしまって、手を付けられない。」


「そうだね。」


「で、ゆいえもん、なんとかしてー。ってことだね?」


「そうだね。」


「なんて言って欲しい?」


「なんて言うつもりなんだい?」


「馬鹿。」


「ストレートで無駄のない爽快な言葉の刃だね・・・。」


「自業自得じゃん。そこまでやらかしてるとか、こっちの方が想定外だよ。相良の明治村状態だけかと思ってたら、100年も歴史をブーストさせるとか、何やってんのよ。」


「田沼意次と組んだのが失敗だった。」


「違うわよ、旦那様の頭が失敗だったのよ。」


酷くないかそれ・・・。まぁ、だが、結奈の言ってることが本質的には正解だろう。


「で、対応策なんだけれど・・・。」


「そうね、今のままでは動き出した歴史の歯車は止まらない。これは旦那様も理解できている。そうよね?」


「そうだね。だから、三井や住友のこれ以上の拡大を防がないと明和が明治になりかねない。」


「そうしたのは、旦那様だけれどね。それで、明治~昭和の財閥の均衡は三菱という存在があってはじめて成り立つわけだから、結局、三菱相当の存在が必要なのも同意するわ。」


「だけど、そんな存在は今のところ存在しない。」


「存在していない?違うよ。存在していないものが、既に存在しているじゃない?」


「どこにそんなものがあるんだい?」


「旦那様の率いる盃会相良5社。重工業、製鉄、金属加工と一通り揃っているじゃない?それに、蒸気船が実用化出来れば、日本郵船に相当する海運企業も出来るじゃない?そして、金融は相良の両替商などを再編すれば良いわけじゃない?」


「確かに、基礎としては揃ってるね。でも、三井・越後屋ほどの資本はないよ?現状でも、資金繰りが結構限界に近づいているし・・・。相良の両替商連中もこれ以上はカネを出せないと言ってるし。さすがに鉄道があんなにカネ食うと思わなかった。」


「でも、旦那様の方針が正しかった・・・いえ、歴史を学んだチートを使えば簡単なことなのだけれど、インフラ強化したお陰で、相良はこのあたりの一大交易拠点になりつつあるわけじゃない?」


「そうだね、このあたりの東海道沿線から貨物が相良港に流入している。そのお陰で相良港の取扱量は増えているし、荷役手数料でボロ儲けだ。」


「だったら、現行の体制を利用して海運で儲けるのが資本蓄積の早道よ。どうせ、旦那様のことだから、蒸気船にもクレーンもどきを搭載してこの時代の原始的な港湾設備でも効率化出来るように企んでるんでしょう?」


「ご明察。クレーンもどきを全国に造れれば各地の港湾機能は強化できるけれど、それでは三井とかに出し抜かれるからね。」


「それじゃあ、方針は決まったじゃない?歴史が加速していくのは現状では止められない。なら、基本、こっちが手を打てるようになるまで受け身でいくしかないわ。優先すべきは歴史じゃなく、対三井・住友の方策。それに大坂の商人達も流れに乗るでしょうから、それへの牽制も必要ね。」


「歴史は後回しで良いのか?」


「誰のせいよ?」


「・・・、わかった。結奈の言う通りにしよう。実際、それくらいしか出来ることないしな。」


「少しは自重してちょうだい。」


「できるだけ、前向きに、善処することを、検討いたします。」


「だめだこいつ、はやくなんとかしないと・・・。」

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